第36話 OLさんと「あの人」#21
目の前の男に見惚れてしまい、つい目が合ってしまったことと目の前の男が好きになってしまいやばいと思った真奈津はそれでも久しぶりに誰か事を「好き」と思うのは久しぶりと思った。それのせいか男と目が合っても目を反らさずじっと目を合わせてしまった。それでこう思った。「この瞬間が永遠になってほしい」「この人と一緒に永遠にこうしていたい」と。元々運命的な出逢いに弱くて憧れていた真奈津は、その癖とも言える運命的な出逢いへの拘りが、再びも再発しようとする。自分では気づいてないものの今の確実だった。
真奈津が「あの人」と目を合わせてあまり時間が経ってないか自分ではわからないが結構長く感じていた真奈津は、自ら目の前の男の目を合わせていると自覚した瞬間、パッと我に返った。目の前の男も自分の目を見ながら少し笑みを浮かべていた。その笑みの意味は分からないけど真奈津が大丈夫だとして安心してそれでもし緊張や怖さを感じるのを和らげるためにわざわざ見せるかのようだった。本当にそうかは知らないけど真奈津にはそう思われてそう思いたかった。その思った真奈津はその思いがバレるのでないかと思っていきなり恥ずかしくなり慌て出してしまった。
それで座り込んでいる場所から慌てて起き上がろうとしたことを早く起きあがろうとしたせいか、ピンと目眩がしそうになった。自分の力だけでは起き上がれなかった。それを見ていた「あの人」は自分の手を差し伸べてきた。真奈津の右手を取り起き上がるのを手伝おうとした。これもまた不思議なことにその自然な動作で真奈津は思わず自分の方から「あの人」の手を握り返してしまった。「あの人」に自分が差し伸べた右手が握り返される感覚があった。
その手は柔らかくて男しとては綺麗な手のように見えた。その手をみてまた一度こう思ってしまうほどだった。「この手に手を握られてデートしてみたい」と。一瞬のことだったけどそう思う自分に自覚した。それでテンパり出した真奈津は、早く起き上がり、自分の力でちゃんと立てるようになってから「あの人」に渡されようとした自分のスマホやら私物やらを確認もせず、全部手に取りトイレの方へ逃げるように走って行ってしまった。
逃げる際に「ありがとうございます。後は自分でしますから」と言ったつもりで礼を言っておいた。けれど、それが「あの人」にちゃんと届いたかは分からない。まだ痛みが残っている左足のせいで走って逃げるのが精一杯なような気がした。さっき倒れた場所の近くにある女性トイレに逃げて入った真奈津はまず、鏡を見て自分の顔を確認した。頬には少し赤みを帯びていて汗もかいてるようにも見えた。それで次にさっきの怪我した左足の膝を確認してみた。少し擦れて血は出ていたものの深い傷ではなかったし少し時間が経てば治りそうだった。そう思って少し安堵した。それで真奈津は、傷についている血や泥なをもう一度拭こうとして自分のポーチからティッシュを取りだそうとしたとき、右手で握り締めていた自分のスマホとハンカチらしき物に気づいた。
さっきまではそれが何なのかよく分からなかったものが、今は明らかにハンカチに見えた。しかもダサい柄のデザインだった。このハンカチにはさっきの手当てのとき拭かれた自分の血がついていた。これをもう一度使うのは何か気が進まなくてティッシュに包んでおいてポーチに入れて普通のティッシュで傷口の血を拭いてから絆創膏も貼っておいた。自分で足足の膝の傷の手当てを終わらせた真奈津は、一度手や脚や制服も確認してみた。さっき転んだとき手や脚も床についてしまったし正座の姿で床に座る状態だったし確かに下半身のあっちこっちが汚れているはずだと思ったからだ。それで汚れを一通り雪いた後、一応予定通りに学食に行くことにした。その前に少し「あの人」のことが気になってすぐにはトイレから出ないでいた。「もし待っていたらどうしよ」と心配だった。普段ならこんな時に男は誰も待っているはず。前の彼氏もそうだった覚えがある。それでも出ないわけにはいかないしむしろ待ってもらったほうが少し楽になるかも知れないから勇気をもってトイレから出た。
しかし「あの人」の姿は見えない。普通に待っていて「大丈夫ですか」など声を掛けられたり「ありがとうございます。お礼したいです」と言ったりすれば簡単なのを、できなくなるのに少しガッカリした。けれど、そう思いながらも早く「あの人」がはいったと思われる場所へ行くことにした。足早に食堂に入った。それでまずさっきの男の人がいるかを確認してみた。それで確実に「あの人」がご飯をたべているのが見えて、真奈津も席を取っておいて列に並んでご飯を取り、ご飯を食べ始めた。真奈津はご飯を食べながらさっき「あの人」と目が合ったとき思った「好き」という気持の正体を知りたくなった。あのときのあの感覚は間違いない。誰かを「好きになる」というのははじめてではない。しかし問題なのは、付き合う前に真奈津の方から、自分から「好きになった」ということだ。実は真奈津は前の彼氏はもちろん、その前の彼氏のことも自分から好きになったことは一度もなかった。今までの恋愛パターン普通に告白されて会うようになり、何となく付き合い始め、好きという気持が出来て、それが深くなり本当の好き同士になる。そういった感じで好きになるというのができるものだと信じていた。それが今日は違った。今まで経験したのと違う「好きの形」。もしかしてこれがいわゆる「恋」というものなのか。自分から先に好きになり「あの人」に会ってほしい、付き合ってほしい、それは無理ならせめて連絡先でも交換して一回でも会ってみたいなど。今の真奈津は「あの人」に対しての自分の感情がいったい何なのか知りたくもなった。けれど、ただ一度助けられたことで知らない人を信じていいとは思えない。それでも一回でも自分の感情を試してみたい気持も同時に存在していた。
さっき「あの人」が私の膝の血を拭いているとき、「あの人」は確か自分の両膝を床について拭いてくれた。それを再び思い出して思った。「あれは普通にはできないこと」と思ったから、どうしてもお礼をするべきだと考えている。助けてくれたことや汚れた服のことに関してちゃんと礼を言っておきたかった。そのついでに「あの人」への自分感情も確かめることができればそれに越したことはないとも思ってみた。そうとして一度でもいいから「あの人」と知り合って連絡先も交換してやり取りみたくないワケでもなかったのだ。けれも本当にそうしていいのか分からなかったから「あの人」の様子を遠くから見るだけだった。その時、ふと「あの人」の顔を見てどこか見覚えのある人のような気がして不思議に思った。
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