第16話 OLさんと「あの人」#1

「あ、昼ごはんの時間だ。そろそろ行くか」「ご飯に行ってきまーす」と真奈津は毎日正午12時になる5分前にランチに行く。今の会社はいつもこれを守ってくれる会社だといううわさを入社する前から知っていて「絶対この会社で仕事したい」と高校生の時から決めていた。それでその夢ほどではない夢が叶って毎日幸せな日々を送っている真奈津だった。


真奈津は勉強もそこそこで生まれ育ちの地元の大学を卒業し、地元に支社がある企業に入った。真奈津みたいに地元出身で地元で働きたい人は稀ではないけれど、真奈津には特別なことだった。「世の中はいくら頑張っても限界がある」と子供のころから真奈津は思っていた。だ。それが経済的であれ、個人的の理由であれ、定められた運命みたいなのを越えようとしても越えられないものがあると気づいていた。そう考えさせた一番の原因は真奈津の両親だった。


真奈津の両親は経済的に余裕がある仕事に就いている。それのお陰で真奈津も経済的に心配なく育った。卒業した大学も偏差値が悪くなかったし、さいわいに真奈津両親は他のいわゆるできる親みたいに勉強に厳しく言わなかった。それで真奈津も勉強にこだわらなっかたから、今の自由な生活を手にいれたとも言えた。今のよのなかは勉強だけで食っていけてないのが現実だとニュースを観る度に思うし自分の考えが間違ってないと思っている。


もちろんこう思っている真奈津のことを悪く思う人がいるかも知れない。「いい家に生まれ、いい親に出会ったから成り立つ生活」とか思われても仕方がない。べつに自分は特別に違う人生を送っているのか生きているつもりもないし、普通に暮していたと信じている。

行きたい会社に入り、仕事しながらコツコツお金を貯めて、たまにする贅沢、それ以外に望むことはない。そんな欲張らない日々ずっと送りたいだけだ。


それで今の自分が成り立つのフォローしてくれてる親にも感謝の気持はある、ただ真奈津自分からは言えてないだけのことだ。


また、それとはべつに自分の親にどうしても理解できないのがある、夫婦関係や結婚に関してだ。真奈津の両親は父は父で、母は母で別々行動するのが好きな人だった。もともとはそうだったかもしれない。けれど真奈津が幼いころからみた両親はずっとそうだったし、時々喧嘩するところも見てきた。普段観ている中が良いかわからない両親のことが喧嘩をするときは物凄い血相になる。それをずっとみてきて疑問に思ってしまう「うちの親は仲がいいのか悪いのかどっちなんだろう」と。恋愛関係のカップルや結婚した夫婦同士で喧嘩をするってことは仲がいいからそれともその分信頼してるからするものだなど、なんとなくどっかのテレビ番組で聞いた覚えがある。とにかくそんな自分の親の喧嘩ぶりを十数年見てきてからこそ、「将来結婚とかは絶対したくない」と決心してしまったのだ。あんなに喧嘩して夫婦仲悪くなったりするとなんのために結婚したのか、と結婚する意味あるかと真奈津はずっとそう思ってきたのだ。


もちろんぜんぜん結婚とかしないとは思っていただけではなかった。昔一度あった。それが元彼のことだった。しかし、人生は望み通りにはならないと元彼と別れるときをもう一度気づいて「やっぱりわたしは結婚に縁がない」と思って、しないように心をきめたのだ。


その真奈津の前に「あの人」が現れるまでは。


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