第30話 OLさんと「あの人」#15

今日もランチは学食だ。と言っても毎日行くわけでもない。元々食が細い真奈津は、時には昼御飯は食べず、近くのコンビニで簡単に食べられるものやミネラルウォーターなどを買って好きなベンチに座りゆっくりお昼の時間を過ごすのが趣味となった。しかしここ最近、普段よりはよく行くようになった。


OLにもなって大学の学食を利用するのはあまりにも様にならないことだと思う人が多いかも知れない。けれども、真奈津には自分のことを他人とは違うと思っていたし、別に社会的に地位やメンツをこだわらないようにしているからか、OLが学食でご飯を食べることになんの恥ずかしさも感じていなかった。それで今日のお昼休みの時間も会社の人とは違う方向へと足を運んだ。入社してそうそう、同じ部署のOL仲間たちにお洒落なブランチレストランに誘われたこともあったけど、2、3回行ってみて「さすがに自分には相応しくない」「自分には普通のご飯が一番だ。今の地味で普通な自分みたいに」などあまり行かなくなった。一人でゆっくりお昼の時間を過ごすのが一番だと思っていた。


今日も大学の正門を潜り抜けて慣れた味の味わい、早く食事を済ませて、気に入ったペンチを狙って座った。少しでも余裕なお昼の時間を心配なく、ぼんやりつぶしている。それが毎日の楽しみであり、こだわりであり、今の真奈津の唯一の趣味みないなことになった。暖かい日に当たり残りのお昼の時間をなんの心配なくつぶすのが一番好きだ。音楽を聞いたり、通りすがりの人々をこっそりみたり、ただぼうっとしていたりなど、少しでも自由な時間を過ごしたい願望で毎日こうしようと頑張っている。この唯一の趣味を誰にも邪魔されてほしくなかった。しかし今日はそれを、大学の親友のミカちゃんに邪魔されようとした。他の人なら少しいやに思ったかも知れないけど、久しぶりに、珍しくこんな時間に電話をかけてくるミカちゃんのことを不思議に思いながら電話に出ようとする。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る