第6話 カフェのバイトさんと「あの人」#6
何故だろ何かあったのだろと桜ちゃんの話に適当に相づちしているうちも思いだしてしまう「あの人」のこと。桜ちゃんの話は永遠に終わらなさそうだった。でも今日の明美の気持的にはなんとなくありがたいことだった。「今日今朝の出来事がバレずに済む」なら、この上のないことだ。普段よりデカい桜ちゃんのしゃべり声を聞きながら今日のバイトもそろそろ終わろうとする。スマホに表示された時刻をちらっと見て無意識的に安堵のため息をついてしまう。
「あ、やっと今日のバイト終わった」
「本当今日は忙しかったね」
「今日はとくにヤバくない。こんな寒いのに次から次と入ってくるのみてびっくりしたわ」
「冷えてくるし何かあったかいの飲みたくなから、寒ささしのぎで来てたかな」
「なら、そもそも外出しねぇっつの」
「桜ちゃん、怒ってる」
「それはそうよ。今日マジしんどかったもん」
「わたしも、しんどかったわ」
「でしょ。明日も今日みたい忙しくなるとわたしマジ死んじゃう」
バイトあがりに更衣室で私服に着替ながら何気なくする雑談が一日を終える最高の時間だ。普段ならそう思っていた、けれど今日は違った。このままうちへ帰ってもどうにもならない気がした。このままじゃ気が重い、重すぎるのだ。
それでつい普段とは違う行動をしてみようと心を決めた明美だった。
まず着替を終えて普段どおりに店を桜ちゃんと一緒に出た。それで普段なら店を出てすぐ明美と同じ方向へ歩いていくはずの方向とは違う方向へ足を運ぶ明美だった。
「あれ、明美ちゃん。そっちじゃないよ。」
「あ、そうだ。言い忘れた、わたし今日はこっち行く。ごめん」
「なにか買いものとか行く。100均とか」
「まあね」
「またそれか彼氏のお使いみたいな」
「まあね」
「そっか。じゃわたしこっち行くね。今日もおつかれ」
「うん。おつかれ。さよなら」
桜ちゃんは明美の話を疑う様子もなくあっさりと理解していたように見えた。本来二人は、バイトが終わって同じ方向へ15分ぐらい歩いていく、そこでまた別れて各々一人でじぶんの住んでいる場所に直帰する。しかし今日は違った。
明美は普段なら一緒に歩いていく方向を、一人で薄暗い闇の中へ消えていく桜ちゃんの後ろ姿をこっそり盗み見していた。それで一つのことを考えていた。明美はこのような桜ちゃんの性格、またはキャラとも言えるものが好きだった。高校生の時からずっとこんな性格の桜ちゃんは、悪くいえば自分勝手、良くいえばピュア。人の言うことをなんの疑いもなくそのまま受け入れようとするとこが桜ちゃんの長所ともいえた。その桜ちゃんの性格でいまはほんとうに助かったと思ってしまう明美だった。
バイトがあがりに更衣室で私服に着替えてる時、一つ思いついたことがあった。「今日はバイトが終わると直帰せず、寄り道したい」と。心が落ち着つてない今のままかえっても、もし彼氏が早く帰っていたらどうにもならないし、また彼氏と口論したり喧嘩してしたりしまうかもしれないからだ。それは避けたかったのだ。それでバイトの店出たとき半分は無意識的に普段とは違う方向へ歩きだした明美だった。今晩はどうしても直帰したくなかったからだ。今晩だけどうしても普段とは違う、予想だにしない、予定してない違う行動をとりたかった。何故なら今朝彼氏との間で起きたこともそうだったからだ。幸にその明美の気持が桜ちゃんにはバレてないみたい。桜ちゃんが暗闇の中を歩いて消えていくのを確認してから「よかった。」とつぶやきながら安堵のため息をついてまう明美、今日で2回目だった。そして目的の方向へ向かって歩きながら色々考えた。今朝のできごとや今後すべきことなど、今後どうしたらいいのか。ほんとうに彼氏と別れてしまうのか。付き合いはじめのころの優しいカレが、何故付き合って1年を過ぎたとたん、違う人のように一変してしまたのかなどをだ。
「ほんとにいやだ。」と人生はじめての嫌みを漏らしてしまった明美だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます