第19話 OLさんと「あの人」#4

真奈津は調子に乗っていた。親友のミカちゃんとはじめていく居酒屋。

友だちの中で誕生日が一番遅い親友のミカちゃん。ミカちゃんはみんなでお酒に行きたい気持でいっぱいだった。それを我慢して我慢して正式に20歳になるのを待ち焦がれていた。真奈津も同じ気持だった。


大好きなミカちゃんと飲みに行ける日を待ち続けいた。もちろん、ミカちゃんとぜんぜんお酒を飲んでなかったわけではない。ときどき、真奈津や他の友だちがビールなどを買って、ミカちゃんと彼氏が住んでいる家に遊びに行った。みんなこっそりやってたことだから、「バレないかぎり大丈夫」と思った。そうしがら真奈津とミカちゃんは約束した。「2人だけで居酒屋行こう」と。これをミカちゃんの彼氏にも言っておいたし、約束を守ってくれるよう釘をさしておいた。それで誕生日パーティ兼年末パーティの後、2人は居酒屋に行くことになる。そう約束して隠れて飲むお酒は美味しかったし、楽しかった。それで結果的に、隠れ酒の楽しさのあまり、真奈津とミカは調子に乗ってしまうことになる。そしてまた結果的に、真奈津には人生一番の痛ましい事件が起ろうとした。もちろんこれはのちほど、時間が経って当時のことを振り替えてみたら、何かの「運命のイタズラ」的なものだったが、今の真奈津にはそれを知るようもなった。


「あのマナツさん。。ですか。。」

「あ、はい。真奈津ですぅー」普段はこんな言い方しないのを酔いすぎてゆい言ってしまった。


「は、はじめまして。。」

「あ、はじえましでぇー。あれー、どちら様でしゅかー」

「お、俺のこと覚えてないですかあ。。」

「うん。。じぇんぜん知りましぇん」眉間に皺をよせながら知らない男に自分の顔を近寄らせてじっとみてしまった。結構ながい数十秒間。そうしてはいけなかったのに、そうしてしまった。


「お、俺のこと覚えてないですか」

「すんません。ホント覚えてませぇン」

「お、覚えてないですか」

「はーい。わたしもともとそういう女なんで」酔いが増してどんどん勢いで言ってはいけないことを言いはじめている自分に自覚はしたものの、止められなかった。


「ひ、ひどい。ですね。あんなに楽しく話したのに」

「えぇぇ、いつでしゅかあー。あ、さっきの居酒屋で。ごめんなシャい。よっぱらいすぎてよくおぼえてませぇン」

「それはいけないでしょうがー」と知らない男の声がしょうしょう怒鳴り声になり、どんどん表情が強張っていくようにみえた。



そこで真奈津はようやく酔いが覚めはじめたが、もう遅いのだ。逃げるタイミング、いやそのまま無視して家へ帰る機会を逃してしまたのだと後悔しはじめた。心配になりはじめた。


「それはいけないでしょうーマジで。なんで。俺のこと忘れたんですか」

「すみません。。わたし。。そのつもりじゃ。。」酔いがさめはじめた一方どんどん怖くなりはじめ、うまく声が出ず、小声で呟くのがやっとだった。


「いけないでしょー、なんですか。なんでそうなるんですか」

「ごめんさない。。どうしたらいいですか」怖すぎて頭が回らないゆえ、怖がっている自分を自覚しながらも、うまくなのを言えば良いか戸惑っている。


「いけないでしょーいけないでしょー」怪しいストーカーらしき男の低い声にどんどん力のはいった声になる。


「ごめんなさい、わたし急いでるんで、後でまた話ましょ」と謝り半分でできるだけ男を刺激しないように、怒らせないようにと男に気づかれないように静かな声を絞りて言っておいた。そのときだった。


「おい、てめぇ、なんだよ」

「は、、はい」怖い、怖い、どうしよう。

「てめぇ、前は俺と楽しく話してたたくせに、なんで俺のこと忘れたんだよ」

「ご、ごめんなさい。わたし物忘れがひどくて。。」怖い。まだ初冬なのにもっと寒く感じられる寒さだ。酔いで体温が下がったからなのか、怯えてぞっとしてしまって、そう感じてしまったのかすらわからない。ただ怖いだけだった。


「わたしどうしよう」怖すぎて頭んなかが真っ白になり、これ以外にほかに頭に浮かぶ言葉がなかった。思いだせなかったのだ。


「なんでそれしかいわないんだよー他にいいたいことないのかよ。俺のことどう思っているんだよ」


「わたしなんにも。。」

「なにこの人。なんでそんなこと」普段ならこう思うはずのことをなんにも思い浮かばない。ただこの場から逃げたい。だから適当に言うことしかなかった。


「わ、わたし帰ります。明日はやいし、早く帰らなきゃ」きびすを返そうとしたて、体をさっき歩いてきた駅の方向に向けて歩きだそうとした瞬間男の怒鳴り声が聞こえてきた。


「おまえって女は!!」と男のどなり声が聞こえたときハンドバックを持っていた真奈津の左手首を男が握り締めてきた。男の手が自分の左手首をでぎゅっと握る圧迫感を感じると同時に何かに包まれた手で口を塞がれるのがわかった。感覚ではわかっていてもなんの状況なのか瞬時には理解できず。ただ怖いと思っているほかなんにもできなくなってしまった。


それで男が強引に暗闇のなかに自分を連れていくのは従うしかなかった。あまりにもできごとで身体中力が抜けてしまったのだ。


ただ怖い、と思うことしかできなくなってしまったのだ。

それで男に連れていかれながら一つの言葉が思い浮かんだのだ

「死ぬ、わたし死ぬ」と。

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