第4話 カフェのバイトさんと「あの人」#4

うん、その人がね。追加で注文した二杯目のコーヒー渡すときに話してたらいきなり聞いてきたよ。断ったけど」と自慢げに聞こえる桜ちゃんの言い方。

「すごい。あの人まで携帯きかせたの。やっぱ桜ちゃんだね」とうらやましいと誤解されないトーンで言った。

「まあね。でもさ。きっぱり断りしてしまって。ちょっと後悔している」と桜ちゃん。

「なんで。それこそ桜ちゃんでしょ」

「どうかな。なんとなくあの人は悪気なくただ友達になりたくて聞いてみたと気がしてしまってさ」と桜ちゃん。

「えー。そんなことある。いやそれより。桜ちゃんが一度言い出したことを後悔てゆーか引っくり返そうとするのはじめてみた」

「それはさ。いくらわたしでも時と場合によってはするよ。あ、次来るとき教えてあげよかな」と後悔の桜ちゃん。

「どうかな。もう桜ちゃんの毒舌聞いたから二度とうちに来ないかもよ」といいながらまた「あの人が来ますように」と願ってた明美だった。


などバイト前の短い、楽しいガールズトークをよくするふたりだ。あのときは「あの人」のことを二人で悪口半分ゴシップ半分で話したのだ。

とあの日のことや「あのひと」のことを思いながら明美はレジへ向かった。それでまた忙しい一日がはじまろうとする。今日の明美には仕事の大変さより彼氏との関係や仕事終がわって今彼氏とすんでいる部屋へ戻ることのほうがもっと心配でならなかった。時間が遅くすぎるのはいやだけどバイトが暇すぎてよけいなことを考えてしまう時間がくるのもいやだ。

「今日は暇だね。あ、退屈すぎ。店長も早く出たし。昼なのにこんな暇ある」と桜ちゃん。

「そうね。なんか眠くなってきた」

「わたしも。でも明美ちゃん今日はめずらしく眠いっていってるね」

「そうなの。わたし。よく眠たくなるよ」

「いや。わたしがこのカフェでバイトして結構時間がすぎたけど、今みたいに眠気にまけそうな顔みたことない。ちゃんと寝れなかった」と桜ちゃん。

やっぱ親友からこそするどい目でみてしまうのか。それでも些か敏感な桜ちゃんの性格のせいなのかはわからないけど。彼氏との間で起きたことをできるだけ親友の桜ちゃんにはバレてはいけないと思い、頑張って声を絞りだして返事をする明美だった。


「う、うん。よく寝れたよ。彼氏にじゃまされたけど」としまったと思ってしまう明美。

「なんだラブラブじゃん。いいね。わたしは彼氏と喧嘩半分ラブラブ半分だけど。明美はいつもラブラブのままでいいね。羨ましい」

「あ、わたしあのとき、いっそのこと教えてあげてたらよかったのかな。」と桜ちゃんが言ってきた。

「なに前のあの人のこと」と自分彼氏のことを触れられないようにすばやく桜ちゃんに話をきいてみた明美だった。

「うん。実はね。今日わたしバイトほぼジャストできたじゃん。」

「うん。」

「それがね、彼氏がね今朝、バイト行く前、あ、カレは冬学期行ってる。」と桜ちゃんに起きたことで桜ちゃんの気を紛らわせたことに成功した明美だった。


「それがね。わたしの彼氏がね何言ってたか知ってる」

「いや、知らない。桜ちゃん言ってないし、知るわけないじゃん」

「あ、そっか。ホント男ってわからないよね」

「なにいきなり。てか桜ちゃん今日なんか普段より興奮してる、というよりテンパってる」

「あ、わたしテンパってるんだ。そっか。そうみえんだ」

「なもぞもぞしてるの。桜ちゃんらしくないよ」

「それがさ、男ってホントわからないよね。なんであんなこというのかね」

「それが、今朝彼氏授業行くときさ、こう言ってたよ」


「あのさ、もし俺ら結婚とかしたらどうか思ったことある」って興奮気味で普段よりしょうしょう高いトーンの荒い声で話しだした桜ちゃんをみながら不思議に思ったが、すぐその理由がわかった。


「男ってマジわからない。なんでいきなりそういうこと言ってくるのか。わかる私の気持」

「わかる、わかる」桜ちゃんが何を話そうとするのかわからないけれど適当に話に合わせてあげようと返事した明美だ。


「そ、そ。男ってさ、じぶんの彼女がさ、自分のものになったと思ったとき、なんか釘をさしたいのかさ」

「釘をさすってなに」

「よく表現できないけどさ。自分の女って確認しといて、安心してなんか別に遊びたくなるのかって」

「うん。。どうかな。よくわからない。けど桜ちゃんの彼氏ってそんな人にはみえないし」

「そうよね。私のカレってすてきだもんね」

「またはじまった。自慢話」

「自慢話じゃなくて事実よ。マジすてきもん」

「あ、またお客きてる。しごと、しごと」

「あ、マジ。もうやだ。今日はなんかついてない」

「早くしごとしよう」と違う意味で今日は色々ありそうで今日一日が心配になりそうと思ってしまう明美だった。

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