第21話 パソコンの使い方!

 パソコン部の活動をするといっても、いつも自分勝手にパソコンをいじってるだけっていう部活なんだよな。

 特に何をしてるわけでもない部活。

 よく部活として存続で来てるなって思うよ。

 如月がプログラミング大会で、実績を残しているおかげかも知れないけど。



 そんなプログラミング大会に、みんなで出るっていうと、なにか練習でもしなきゃいけないのかもしれないな。

 それこそ、部活動みたいに。


 俺もプログラミングが得意っていうわけでもないし。

 五十嵐さんだって、得意なんてことはないだろう。


 五十嵐さんは、パソコンの前に座ると、にこにこと笑ってこちらを向いてきた。


「これって、どう使えばいいんですか?」


 やっぱり知らないから、そうなるよな。


「まずは、このボタンを押すと電源がつくんだよ」


 パソコンの電源を付けるところから教えてあげる。


「わっ! ‌睦月君、ライトが着きましたよ! ‌すごい!」


 五十嵐さんは、何かあるたびにこちらを振り向いてくる。

 振り向くたびに、良い香りが香ってくる。


 パソコン部が、いつになく華やかな状況だ。

 五十嵐さんの逆隣りにいる如月も、いつもより気合が入っているのか五十嵐さんに話始めた。


「キーボードはね、こうやって使えばいいんだよ」


 如月は、華麗にブラインドタッチをカタカタとさせている。

 そして、最後に勢いよくエンターキーを叩いた。


 ――ターン。



 エンターが決まっただろという感じで、ドヤっとした顔をしてこちらを見てくる。

 ただ、五十嵐さんは、如月の方を見向きもしてないようだった。


 俺の方を向いて聞いてくる。


「私、パソコンって使ったこと無くてですね、睦月君に色々と教えて欲しいです」


 さっき美鈴が公表した通り、身長が小さめの五十嵐さん。

 俺に向かうときは、どうしても上目遣いになる。

 これは、すごく良い。

 こんな良い匂いもさせて、俺はどうにかなってしまいそうだ。


 五十嵐さんの小さい手。

 この手で、一生懸命にキーボードを叩いていくのだろう。

 ホームポジションから、上のキーはなんとか押せるだろうが、下のキーはどうだろう。


 手取り足取り教える。


 ――ごくっ。



 ……とりあえず、何か教えないないとだな。


「ま、まずは、ホームポジションって言うところに手を置くと入力しやすいよ。それが最初に覚える基本だよ」


 平常心を装わないと。

 せっかくのチャンスも棒に振ることになってしまうよな。

 変にがっついてもおかしいし。

 いつも通りを心掛けて。


 そうだろ、美鈴?


 そう思って美鈴の方を見ると、すごく怖い表情で睨んできていた。

 いわゆるがんを飛ばすという行為だろう。


 眉に、これでもかと力を入れてるから眉が浮き上がって見える。

 眉間にしわを深さを競う大会のように、精一杯力を入れて。

 それで、口は半開き。


 段々と、下顎が前に出て来てます、美鈴さん……。


 般若の面とは、こうやっている顔を模したものだろう。

 とても怖いです……。


 その表情をして見ているのは、五十嵐さんの後頭部。

 これも、何かの計算があってのことなのだろうか。

 AIでも、間違うことがあるのだろうか。


 今すぐにでも、美鈴の怖い声が聞こえてきそうな気がする。

 五十嵐さんは、頭ごと食べられてしまうのではないだろうか。


 俺は注意できずにいたが、五十嵐さんは何か気配を感じ取ったようで、美鈴の方を振り向いた。


 五十嵐さんが振り向く動作の間に、美鈴は元の笑顔に戻っていた。


「五十嵐さん、手はここに置くんだよ。キーボードに少し突起があるでしょ? ‌そこに手を置いてみてね」

「なるほど、確かに何か突起がありますね。ここに人差し指を置いて」


 五十嵐さんがキーボードの方を向くと、また段々と形相が変わっていった。

 本当に何なのだろう……。


「これって、動かし方はどうすれば良いんですか?」


 そう言って美鈴の方を向くときには、また笑顔に戻っている。


 この芸当は、どこかで見たことあるな。

 中国の伝統芸能の、『変面』というものと同じだな。


 五十嵐さんが美鈴の方を振り向くたびに『変面』をしていた。

 美鈴、何かおかしくなっちゃったのかな。

 これは、俺が動けと言うことなのかも知れないな。


「五十嵐さん、俺が教えようか?」

「え、良いんですか?」


 五十嵐さんは、嬉しそな顔をして、こちらを向いてきた。

 その方が、美鈴の負担も減らせて、元に戻ってくれるだろう。


「ダメですっ! ‌五十嵐さんは、私と訓練しましょう!」


 いつもよりも、大きな声でそう言ってくる。

 柄にもなく、美鈴が感情的だな。


 これも、計算の内なのか?

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