第20話 初パソコン部!

 一日の授業が終わったので、部室へ行こうかな。


 今日は美鈴のおかげで、とんだ恥をかいてしまったわけだが。

 あの後、トイレに行っても、プログラミング大会の説明を延々と続けられて。

 美鈴は、どれだけプログラムが好きなんだか。


 教室に帰ってからも話続けられて。

 周りの目を気にする俺に対しても、美鈴は機嫌が良さそうな声でからかってくるんだよな。

 なんだか、美鈴は俺に対して、いじわるな気がするんだよ。

 きっと、それは高度に計算されたうえでの、正しい選択肢なんだとは思うのだけれども。



 そんな高度な考えは俺にはわからなくて。

 普通に考えるのであれば、俺をからかって楽しんでるだけだと思うんだよな。

 俺は、如月みたいに、美鈴に対して悪いことしてないと思うんだけれども。

 誠実な対応を心掛けていたのだが。


 AIチャットの性格固定というのは、こうも影響してしまうものなのかな。


 如月だったら、恥ずかしい状況にされたら、嬉しそうにするだろうが。

 俺には、そういう趣味は無いと思うんだけれども。

 美鈴は、俺の新しい扉を開けにかかっているのかもしれない。



 そうか。もしかすると、五十嵐さんはそっちの気があるということなのかも。

 それに慣れろっていうことなのかな。


 そう言うことかもしれない。

 頭の足りない俺でも、考えれば辿り着けた気がするぞ。


 五十嵐さんは、きっと、ドSなんだ。

 可愛い顔して、そんな一面があるとはな。

 美鈴の誘導が無ければ、気付かなかったな。

 さすが、美鈴だ。


 そんなことを考えていたら、部室に着いた。


 俺が部室に着くと同時に、如月と五十嵐さんも部室へと着いたところだった。



 五十嵐さんもいる。


 噂話で聞こえてきたのだが、昨日の暴力事件の一件で、サッカー部はしばらく部活動禁止とされていた。

 事件が学校外で行われていたといううこともあって、かなり厳しくされていた。

 部活動の他、集まってミーティングを開くといったことも禁止されているらしかった。

 確かに、集まるだけで、何をするかわからないからな。

 だからか、五十嵐さんは、放課後もパソコン部に来ているようだ。


 最終的には、正式に部活動で話し合いの場が設けられると思うのだけれども、五十嵐さんはどこ吹く風という感じであった。

 サッカー部の事は吹っ切っているように見えた。

 むしろ、新しいおもちゃを見つけた子供のように、わくわくに満ちた顔をしていた。


「私、初パソコン部の活動です。今日はよろしくお願いします。色々と教えて下さい。手取り足取り!」


 部室に入る前に、五十嵐さんはお辞儀をしてくる。

 手取り足取りなんて、パソコン部にはそんな状況は無いと思うのだけれども。


 キーボードの打ち方でも教えてあげたらいいのかな?

 その言い方だと、きっとパソコン自体をいじったことないことは無いだろうから、マウスの操作も教えなきゃなのかな。


 あんまり知らない人なら、ブラインドタッチなんてできるわけないもんな。

 それを教える。

 まさに手取り足取りということか。


 まさか、美鈴は俺にこれをさせようということか。

 早速、美鈴の掌の上で転がされてるわけか。

 ありがとう、美鈴。


 これは、なかなか良いシチュエーションを準備してくれたみたいだ。



 そう思って、部室を開けると、やはり俺の席に美鈴が座っているのであった。

 美鈴は俺たちと目が合うと、席を立って言ってきた。


「今月末に控えたプログラミング大会に出ましょう!」


 あらためて、美鈴はそう言った。

 その言葉に、如月が反応した。


「あぁ。オイラも出る予定だよ。毎月やってるやつだよね。もちろん出るよ」

「そっちじゃないです。チーム戦でやる方です」

「へ?」


 如月が驚いていた。


「みんなでってどういうこと?」

「如月が毎月でてる個人戦の他に、チーム部門があるの。三人一組で戦うっていう」


 三人チームか。

 ここいるのは四人だけれども、どうするんだろう?


「私と、睦月と、皐月さんの三人チームにしましょう」


 チームに、如月は入れないのか。

 かなりの戦力だと思うのだけれども。


 それに、美鈴はAIだから大会のルール違反になるんじゃないのか?

 そんなルールは、そもそも存在しないのか?そもそも、どうやって要員登録するんだ?


 色々と疑問がわいてくる。


「この部活に、幽霊部員がいたと思います。その人の代わりということで、私も出場しようと思います」

「あぁ、そう言えばいた気がする。名前は何だったかな? ‌オイラは見たことも会ったことは無いけれど、その人っていうことなら、すごい結果を残したとしても違和感は無いよ。その人はAIを作っちゃった天才だからね」



 それが、大会ルール的に良いのかわからないけれど。

 俺は、美鈴を信じて進むしかないからな。


 美鈴は、すごく楽しそうな笑顔を俺に向けていた。

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