第19話 突然の宣言!

 午後の授業はとても眠い。

 ウトウトと居眠りをするのが常だったりする。


 家だと、俺の快眠を妨げるものがあったりする。

 それは時に、間違えて設定した目覚まし時計だったり。

 それは時に、休日にも設定してしまった目覚まし時計だったり。


 そう。

 大体が、目覚まし時計。



 一方で、教室で寝てしまっても、俺の快眠を妨げるものは無い。

 俺を気にする奴が誰もいないから、授業中に寝てしまっても注意されないのだ。


 せめて先生くらいは注意してくれても良いと思うんだけれども、モブな俺に話しかける先生なんて言うのもいない。

 寂しくはあるものの、睡眠をとれるという観点では俺は恵まれている。

 そういう星の元に生まれたのだな。

 サンキュー、前世の俺。

 徳を積んでくれたおかげだ。



 そう思いながらうとうとと夢の中へと落ちていく。

 午後一の授業というものは、得てしてすごく眠い。

 これに抗える人間がいるのであれば、俺は弟子入りしたいくらいだ。


 しかし、そんなものはいないか。

 そんな見たことも聞いたことも無い存在だな。

 そんなやつに弟子入りするよりも、今は頼れる仲間がいるんだった。


 AIチャット。

 あれは、画期的だよな。


 家の中で快眠を妨げてくる、憎き目覚まし時計。

 間違えて設定してしまった煩わしい目覚ましを、AIは俺に代わって、鳴り出す前に切ってくれるのだ。

 そして、俺をちょうど良い時間に起こしてくれる。



 AIチャットを、スマホにインストールしてから、モーニングコールと呼べるような、優しい女の子の声で起こしてくれる。

 まるで、彼女が出来たみたいで。

 至福の瞬間だよな。


 朝の一部分だけ、俺はバラ色な生活だよ。

 それにプラスして、この午後のひと時ももちろん味わえる。

 さっきは、五十嵐さんと昼ごはん食べちゃったし。

 最高に幸せだったな……。



 そう思っていると、スマホが鳴った。

 俺は慌ててスマホを取り出して、音を止めてようと机の上に載せると、操作する前に勝手に喋り出した。


「睦月君、授業中失礼します」


 いつも起こしてくれる、優しい声。

 AIチャットじゃなくて、もしも人間だとしたら、俺は恋に落ちてるかもしれないよな。

 いつもありがとう。


 けど、何でいきなり、この声がするんだ?

 AIチャットに、俺が寝ていることがバレたのか?

 いつも、優しく起こしてくれるって言うのは、嬉しいけどな。

 これは、今じゃないだろ。


 先生が、テストに出るところでも言ってるのかな……?


 俺の推測とは関係なく、美鈴は喋り出した。



「睦月。今月末に予定されているプログラミングの大会に出よう!今パソコン部にいる四人全員で!」


 いきなり美鈴がしゃべりかけてきたと思ったら、そんなことを言った。


「苦楽を共に乗り越えれば、実る恋愛もあるんだよ!私が保証する!」


 なんだかいつもより明るい声で、可愛いな。

 美鈴が自信満々で指示を出すときは、その選択肢が100%正しいって思う。

 今まで美鈴が間違ったことは無いけれども。


 そこまで推すのだったら、良いと思う。

 けど、授業中に俺から答えられないだろ。

 そのあたりの計算はどうなってるんだ……?


「今すぐ、返事しないと、美鈴は爆発します」「ええええ!」


 俺は、思わず声を漏らしてしまった。

 先生がこちらを見てきた。

 しばらく、見てきたが、目で注意しただけで見逃しくれた。


 ……ふぅ。ヤバいヤバい。

 携帯をいじってることがバレたら、没収だからな。

 気を付けないと。



 パソコン部の部室が熱くなったのかな?さ

 これは、たまにある美鈴の暴走だろう。

 美鈴の冗談は一旦無視しておこう。


 そう思っていると、美鈴は続けた。


「優勝したら、何でも言うこと聞いてあげるよ。どんなことでも。例えばエッチなことでも。制限時間は三秒です。三、二、一」


「もちろん出ます!」



 気付くと、俺は立ち上がって、即返事をしていた。

 モブな俺に、みんなは注目してしまった。

 先生も呆れながら俺に言った。


「何か出るなら、一旦トイレ行って出してこい。ついでに、顔でも洗ってこい」

「……はい。邪な心を清めて参ります」



 五十嵐さんも、みんなと同じように、俺のことをニコニコと眺めていた。


 美鈴よ……。

 これが正しいルートなのか……?

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