第30話 大会当日!
月末を迎えた大会当日。
俺たちパソコン部は、大会が行われる会場へとやってきた。
大きな展示ホールのような会場。
そこに、パイプ机とノートPCが並べられている。
無事に大会当日を迎えられて良かったと思うよ。本当に。
美鈴と五十嵐さんは、あれから毎日のように放課後になると俺の家に来るし。
美鈴が俺の家に何度も来たことあるような口ぶりで話した後、五十嵐さんはなんだか美鈴に対して敵意むき出しになってしまうし。
美鈴の不適切な発言で険悪なムードの中、俺が五十嵐さんに手取り足取り教えると、少し機嫌が戻ったんだけど。
そんな俺の後ろには美鈴がいて、美鈴は俺に対して手取り足取り教えるんだよ。
だから、三人でいる時の記憶が、ほぼ無いんだ……。
俺の頭がオーバーヒートだったよ……。
多分、粗相は無かったと思う……。
記憶に無いけど……。
そんな状態だったけど、大会に向けて美鈴につきっきりで教えてもらった。
休みの日には、朝から二人で家に来るし。
五十嵐さんは、門限があると言って帰るのに、
美鈴は残り続けて。
「あ、気付いたら、終電無くなっちゃったー」っていう、お決まりのセリフを決めると、その後はマイペースに俺の家でくつろいでるんだよな。
それで、何度も俺の家に泊まるという。
AIって結局のところ、Webサイトの検索で見つけた内容を喋ってるって聞くし。
どんな検索をしているのか。
男の家、帰らないための口実とでも検索しているのだろうか。
古典的過ぎるだろと思うけど……。
検索結果も、そんなページが多いのだろう。
まだまだ、終電の言い訳が蔓延る世の中なのだ。
それにしても、AIじゃなかったら、俺はかなり危ないことしてるなって思うよ。
二人で一つの部屋で寝る。
美鈴は俺のベットを使って寝るから、俺はしょあがなく床で寝て。
それで、美鈴が毎回ベットに誘うのもお決まりで。
「私の隣空いてますよー」って言う。
俺は、多分、無視してた。
よく、俺の身体がもったと思うよ……。
そんな美鈴は、大会会場をキョロキョロと見回っている。
「すごく広い会場だね」
美鈴らしからぬ、普通のことを言い出すな。
なんだか緊張しているようにも見えるし。
そろそろ大会が始まる訳だもんな。
美鈴に反して、俺は全然緊張しないな。
美少女が二人家に来るっていう方が、よっぽど緊張したしな。
会場を見渡しても、男ばかり。
それも、メガネをかけたようなパソコン好きっぽいやつばかりがいる。
俺としては、なんだか、逆に安心してしまうな。
やっと日常に帰ってこれたんだなって。
そう思っていると、後ろから声をかけられた。
「こんにちは」
「はい。こんにちは」
俺は流れるように返事を返してしまったが、女の子の声だった。
誰だろう。どこかで聞いたことがあるような……。
振り返ると、そこにいたのは、YAYOIだった。
隣に立ってみると、俺と同じくらいの身長はあるんじゃないか?
俺は170cmにギリギリ届かない低身長なのだが。
それでも、女の子にしては、かなり大きい。
アメリカ育ちというのも頷ける。
YAYOIから口を開いた。
「今日は、勝負だな。お互いベストを尽くそう」
なんだか、屋上であった時とは雰囲気が違うな。
ただ単に、強い奴と戦いたかっただけって言うことなのかな。
今はスポーツマンのように、すごく爽やかな雰囲気になっている。
YAYOIはオレに握手を求めて、手を差し出してきた。
「おう。俺も十分賢くなったし、簡単には負けないぜ」
俺も手を出そうとすると、美鈴が俺とYAYOIの間に割って入ってきた。
そして、美鈴はYAYOIを睨んだ。
「あなたには、絶対に勝たないといけない」
いきなりの事でYAYOIはびっくりしていたが、美鈴の顔を見るなりにやりと笑った。
「そんなにしてまでも秘密をばらされたくないようだな、AIちゃん」
……なんで、YAYOIは美鈴をAIって知ってるんだ。
これは、まずいんじゃないか。
美鈴は、いつになく冷静な振る舞いをしていた。
「お前に勝てば、問題無い。勝ったら私の言うことを聞いてもらうからな」
「もちろん良いよ。私に勝てればね」
YAYOIの差し出した手は、美鈴とがっちり握られた。
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