第29話 プログラミング集中講座!(※四之宮 卯月の視点)

 あいつは、YAYOI。

 声を聞くだけでわかる。

 昔は、かなり一緒に遊んでたやつだ。

 私のことを私以上に知ってるかもしれない。


 YAYOIは、アメリカに留学していたんだよな。

 昔からプログラミングが得意で、私はあいつに全然勝てなかったんだよね。


 今はどうか分からないけれど、アメリカで最先端のプログラミング技術を学んでいたはず。

 それが、帰ってきたのか……。



 ついつい挑発に乗ってしまったけれども、睦月がやられそうになってるのは見過ごせなかったから。

 あのままじゃ、ぐいぐいきて、キスでもされてたと思う。

 それは、やっぱり嫌だから……。



 それにしても、YAYOIのあの話しぶりは、私の存在を認識している。

 美鈴じゃなくて、四之宮卯月として認識したと思う。


 せっかく、睦月が私のことをAIと勘違いしてくれているのに。

 だから、上手く会話だってできるのに……。


 まだ、バラされるわけにはいかない。

 絶対に勝って、YAYOIを口止めしないと。


 学校の授業が終わると、みんな部室に来た。


 睦月が先に口を開いた。


「美鈴、昼休みに来たYAYOIって人。どうするんだ?」

「あいつは、私が倒します。勝って言うこと聞かせます」


 睦月と五十嵐皐月。

 この二人と一緒のチームでYAYOIと戦うなんて、私がサポートをするにしても、無謀すぎる。


 どうすべきか、最善策はAIチャット話しあったんだ。

 それで、出した結論。


「YAYOIに勝つ為に、プログラミング集中講座をしようと思います」


 みんな、ぽかんとしていた。

 まぁ、説明しないと分からないか。


「学校の環境では、ネットワークが非常に弱い。また、サイト閲覧について制限を掛けられていることで情報が得にくい。そして、何より暑い。よって、学校でプログラミング特訓をすることは、かなり非効率です。そこで、合理的判断により活動場所を変えることは必然」


「言いたいことの趣旨は、なんとなくわかったけれども」


 回りくどく言っても、分からないか。

 結論を先に伝えよう。


「よって、活動場所は、睦月の家です」


 睦月は、ぽかんと口を開けて聞いていたが、私の結論に意見してきた。


「美鈴先生、論理が飛躍しすぎている気がしますけれども……。なんで俺の家でしょうか……?」


 一から十まで説明しないと、分からないやつだなぁ。

 鈍いというか、なんというか。


「さっきの条件、ネットワーク、Web閲覧制限、室温。この三つの必須条件をクリアできて、なおかつ、十分条件を満たせる場所を考える。パソコン部にアクセスが出来ること、私と五十嵐皐月が行ける場所。何時まででも活動できる場所。そして、居心地の良さ。この条件で考えられるのは、睦月の家以外考えられない」


「何か、変な条件入ってる気がするんだが……」

「睦月は、私を信じてくれないの?」


 私も色々と、AIに聞いたのだ。

 男は、上目遣いをしてお願いしてくる子には逆らえない。

 睦月は、諦めたように頷いた。


「……分かったよ。うちで特訓してくれ」


 私は、睦月に満面の笑みを見せてあげた。


「ありがとう、睦月!」


 うんうん。睦月は嬉しそうな顔をしてる。

 AIに対応を聞いておいてよかった。

 私の作ったAIは、何でもできるね。



 ◇


「男の家に、女の子を連れ込むってどうなんだろう……」


 睦月の部屋につくと、ボソッと疑問を投げかけてきた。


「女の子の合意があれば、問題無いです。それに、女ののは一人だけではなくて、二人いるから大丈夫です」


 睦月は、解せない顔をしているけど、仕方ない。

 時間が無いから、詳しい説明は省こう。

 そういう時は、論理的な納得ではなく、感情的に納得してもらえば良い。


「美少女二人を家に連れ込める口実が出来て、嬉しいでしょ?」


 睦月は、なんか言い訳してるけど、聞き流しておこう。

 それよりも、プログラミングを身につけて、どうにか勝ってもらわないと。



 五十嵐皐月が、手をうちわ代わりにして仰いでいる。


「この部屋暑いですね」

「それは、私も思う。日当たり良すぎだよね、この部屋。リモコンは、そこにあるから勝手に使って」


 私が答えてあげる。

 睦月は、緊張してるだろうし。


「……えっと、なんで俺の代わりに答えてるんだい、美鈴さん」


 五十嵐皐月も、不思議そうにして聞いてきた。


「なんで、美鈴さんがリモコンの位置を知ってるんですか? ‌どうしてですか? ‌初めて家に入る人がリモコンの位置なんて知るわけないですよね? ‌睦月君、答えて欲しいです」


 五十嵐皐月は、どこかヤンデレ的な素質があるのかもしれない。


 もしかして、これは一石二鳥なのでは?

 この二人のプログラミング力を底上げをしつつ、五十嵐皐月よりも優位に立てる。

 我ながら、私の作ったAIちゃんは良い仕事するね。


「美鈴さんを、この部屋に連れ混んでたってことですか? ‌何をしてたんですか? ‌教えてください」


 ここで、五十嵐さんの機嫌が悪くなって、離脱でもされたら、大変だからね。

 睦月への好感度も維持しつつ、やる気を出してもらわないと。

 私が睦月に変わって答える。


「大丈夫だよ、皐月さん。睦月は、初めての私にも優しかったから」


 睦月と違って、私はAIに聞かずとも最善の答えを出せるのです。

 これで、睦月の優しさもアピールできるから。

 満点の回答だね。


 思った通り、この会話も即終了できたし。


「それでは、早速、プログラミングの特訓を始めましょう」

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