第25話 二人きりの登校デート!(美鈴ver.)

「おい! ‌起きろー! ‌朝だぞー!!」


 いつも通り、朝は美鈴が起こしてくれるのだが……。

 なんだか、いつもよりも攻撃的だ。


 何かあったかと言えば、昨日の家の出来事くらいしか思い当たらない。

 俺は、正しい行動をしたと思うんだけどなぁ。



「早く飯食って、出て来い。学校行くぞ!」


 俺は寝ぼけ眼でスマホを見るが、表示されている時間は、朝の5時。

 いつもよりも、早すぎないか?


「プログラミング大会に向けて、私がお前を鍛えてやる」

「いや、プログラミング大会って、俺が五十嵐さんに手取り足取りパソコンを教えたり、パソコンを通じて仲良くなるための口実じゃ?」


「それを、私とお前でやるんだよ!」


 うーん、と?

 これは、良くわからない論理破綻が起きていないか?

 俺の考えの先の先を考えて返事してるのか?

 もしくは、俺の聞き間違いか?

 朝一で、高速回転する美鈴の頭にはついていけないぞ。


「とりあえず、準備して出て来い! ‌今、お前の家の前にいるから」

「へ……?」


 嘘だろ……。

 って、本当か嘘かって悩む必要は無いか。

 美鈴は、本当の事しか言わないから。


 昨日の一件で、パフォーマンスを上げ過ぎてしまったのか。

 AIに対して、より良いと思われる『正しい答え』を返すだけじゃ、ダメなのかもしれない。

 俺の理解の範疇を越えて、先に進みすぎてる気がする。

 もう少し、性能をコントロールしないとなのか。


「こんな時間でも、外は暑いんだよ。早く出て来い。早く来ないと突入するぞ?」


 美鈴、過激派だな。

 どうするもこうするも無い。美鈴に従おう。


 俺は、早々に学校の準備を整えて、玄関へと向かった。

 ドアを開けると、宣言通り美鈴が立っていた。

 いつもは汗もかかないような顔をしてるのに、今日はなんだか怒ってるように見える。


 そして、怒ってるのとは別に、昨日見た時となんだか少しだけ雰囲気が違うように感じた。


「あれ? ‌美鈴、何か変わった……?」

「うるさい。気付くなら、ちゃんと気付け! ‌ばか!」


 やっぱり、何かあたりが強くなってる……。

 変わったと思う所を、ちゃんと言葉にして伝えないといけないのか。

 女の子って、難しいんだな。


「少し匂いが変わったよな? ‌俺には分かるぞ」

「……最初に気づくのは、そこなのか。匂いフェチ野郎!」


 あれ? ‌それが、一番大きく変わった部分だと思うんだけれども。

 よくよく見ると、少しお化粧してるのかも?

 そっちは、気のせいな気がするから言わないでおこう……。

 あれだ、魔法の言葉を俺は知ってるぞ。


「美鈴、今日も可愛いね!」

「……うるさい! ‌そうだと思ってるなら、私に手を出せよ!」


 やっぱり、昨日のことを怒ってるのか?

 なんだろう。どこまでがシミュレーションか、分からない。



「じゃあ、睦月。早く行こう。いちゃいちゃする時間が短くなる」


 美鈴は、昨日の一件で、よくわからない方向に学習を進めてしまったようだ。

 美鈴は、俺の手を取って歩き出した。




 昨日、一緒に俺の家まで来たけれども。

 女の子と通学路を一緒に行くっていうのは、やっぱり新鮮なものだな。


 ちらっと、美鈴の横顔を見ると、頬を赤く染めているようだった。

 そんなになるなら、手を繋がなければいいのにと思うけれども。

 離すと、それはそれで怒るんだよな。

 よく分からないシステム……。



 駅まで歩くと、美鈴はICカードで改札へと入っていく。

 昨日も思ったけれども、AIってどうなってるんだろうな。

 普通に、大人料金で電車に乗るんだよな。

 そのお金は、どこから出てるのだろうか。

 あのAIサイトの運営によって出てきた利益だろうか?


 あのサイトって、課金制だったっけか?

 如月がその辺りは管理してくれてるから、俺にはよくわからないんだよな。


「難しい顔して、何考えてるの? ‌私と登校するの、楽しくないの?」

「いや……、AIの仕組みを、少々考えてて」



 あからさまにムスッとした顔をする美鈴。

 どこからどう見ても、美少女なんだけどな。

 AIの仕組みとは、とても難しいものだな。


「女の子と一緒に通学する時には、楽しい話でもしなさいよ」

「あ、はい」


 如月に相談して、性格を修正できないか聞いてみよう。

 ちょっとツンデレ化が進んでしまっているようです……。



「えっと、何を会話すれば良いのかな?」

「は? ‌それを女の子に聞くの?」


「いや、女の子というか、AIである美鈴に聞いているのであって……。俺、何か間違ったのか……?」


「あぁ……。そっか。なるほど。AIだね、私。そしたら、睦月の事を話して下さい」

「えっと? ‌俺の事と言いますと?」


「例えば、どんな女の子が好きとか。やっぱりAよりEカップが良いとか。そんなこと言ったら、手を握りは潰すけど」


 AIとは、人目を気にしないのだろう。

 朝早いので、そこまで混んでないとはいえ、電車の中でするような話ではないだろう。


「じゃあ、私のどこが好きなの?」

「えぇ? ‌何それ。俺が美鈴を好きっていう前提がついてる」


 俺の反応が間違えたのか、電車内でも繋いでいた手を思い切り強く握ってきた。

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