第27話 サンドイッチ!

 五十嵐さんは、俺の横に座ってパソコンを起動した。


「こうやって電源付けるんですよね。私、昨日覚えたんですよ。成長してるでしょ」


 五十嵐さんは、曇りもない笑顔を向けてくる。

 まるで太陽のような。


 ……これは、可愛い。



「睦月君が帰っちゃったあと、大変だったんですから。如月君の教えることは、全然意味が分からなくて」


 あぁ……。そうだった。

 昨日は、五十嵐さんと如月は、二人きりだったんだよな。

 それは、とても悪いことをしてしまったな。

 今日は、俺が教えてあげないとな。


 ちょうど、美鈴から教わった方法があるから、それを使って五十嵐さんとの仲を急接近させよう。

 何から何まで、準備をありがとうな、美鈴。


「じゃあ、今日は俺が五十嵐さんを教えようかな。パソコンの電源は付いたみたいだから、キーボード操作のおさらいからにしようか」

「はい。お願いします」


 目の前の美少女。

 臆することなく、美鈴の教え通りにしよう。

 それで本当に良いんだよな、美鈴。


 まずは、美鈴が示した体制になろう。

 俺は席を立つと、五十嵐さんの後ろに回り込んで、後ろから抱き着くようにして、手を添える。

 五十嵐さんは抵抗するわけでもなく、前を向きながらしゃべりかけてくる。


「手は、ホームポジションでしたよね。昨日これも覚えたんですよ。すごくないですか?」


 五十嵐さんの嬉しそうに笑う顔が、俺のすぐ近くにある。

 ほんのりと頬が赤くなっているようだ。

 きっと、俺の顔もそうなっているだろう。


「うん、うん。それでいいよ。呑み込みが早くていいね。教え甲斐があるよ」


 ちらっと美鈴の方を見ると、美鈴は何故か後ろを向いて、こそこそとスマホをいじっているようだった。

 AIがスマホをいじるって、何か変な気分だけれども。

 何をしているんだろう?


 自分に構わないでいいよって言う仕草を表しているのかもしれない。

 多分そうだ。さすがだな。


 逆に考えれば、俺の行動はこれで合っているということだな。

 よし、このまま進もう。


「それじゃあ、早速プログラムの初歩的なところから、やってみよう。ココにカーソルを合わせて、エンターを押すんだ」


「はい。マウスはこうやってですよね。ふふふ。なんでも、上達するって嬉しいですね」

「そ、そうだね。じゃあ、もっと色々とできるようになると楽しいよ」


「それじゃあ、もっともっと教えてください!」


 顔をくっ付けるんじゃないかというくらいの近さで、五十嵐さんと会話してる。

 手も握って。

 美鈴のやっていた通り、身体も密着させて。


 俺の心臓が、破裂しそうなくらい弾んでいるぞ。


 ……やっぱり、この体制って恥ずかしすぎる。

 これ以上続けたら、心臓が持たない気がする。


 少しだけ身体を離して退避しておかないと。

 美鈴の教えに反してしまうが、背に腹は代えられない。


 俺は、五十嵐さんから少し体を離したところで、俺の後ろから声が聞こえてきた。


「いいよ、睦月。そうやって教えるんだよ」


 美鈴は、俺の後ろに来て、俺に抱き着くようにして身体をくっ付けてきた。

 そして、俺の耳元で伝えてくる。


「いいよ、続きを進めよう。自信を持って」


 何で美鈴が、また俺を教えているんだ?

 俺の教え方が、まだまだ甘かったということなのか?


 俺はなぜか、美少女二人に挟まれる構図になってしまっていた。


 せっかく五十嵐さんから離れた身体は、また五十嵐さんにくっついて。

 後ろにも、ぴったりと美鈴の身体がくっついて。

 さっきよりも、密着度が高いぞ……。

 満員電車でも、こんなにくっつくことは稀だ。


 前からも、良い匂い。

 後ろからも、良い匂い。


 手も三段重ねになっている。

 キーボードの上に、五十嵐さんの手。

 五十嵐さんの手の上に、俺の手。

 その上に、美鈴の手。


 二人に挟まれてしまって、俺は自由に動けない。

 心臓だけが、これでもかと、自由なリズムを刻んでいる。


 ――ドクンドクン。


 美鈴の心臓の音も聞こえてくる。


 ――ドクンドクン。



 なんで、美鈴の心臓も早くなっているんだよ……。

 美鈴は俺の耳元で囁く。


「優しく教えてくれる人に対して、人は好感を持つらしいよ」


 うん? なるほど?

 けど、こんな状況で頭が働くわけも無く。

 右から左へと受け流してしまうのだが。


 えーっと、つまり。

 教えている方は、俺で。

 教えられている方は、五十嵐さん。


 これで、五十嵐さんの好感が上がっているってことだな。

 それを教えるために、わざわざ俺にくっついてきて。

 口で言えばいいのに。


 あぁ、そうか。

 近づいて言わないと、五十嵐さんに聞こえてしまうもんな。


 あと、身体を離してしまっているのも、美鈴バレたんだろう。

 身体をくっ付けるのも、きっと重要な要素ということだな。

 確実に実行させてもらいます、美鈴先生。


 まだまだだな俺は。

 ココが勝負所だ。多分。

 俺にもっと教えて下さい、美鈴先生。


 なんだか、美鈴は俺の耳たぶをハムハムと食べてる気がするぞ。


 ……なんで。

 ……あぁ。

 ……もうだめだ。頭が回らない。


「ココをこうだよ? ほらほら、睦月ちゃんと動いて?」



 ホームルーム開始のチャイムが鳴るまで、俺たち三人はくっ付く体制のままパソコンをいじっていた。



 *.˚‧º‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧º·˚.*

 いつも、御愛読の程ありがとうございます。(*_ _)

 ここで、三章『プログラミング大会編(前編)』が終了となります。


 三章は、色々と、ラブコメでございました。(*_ _)

 この後、美鈴ちゃんの恋路は、どうなるのか。

 引き続き見守りくださいませ。

(主人公は睦月君(男の子)ですけれども。AI美鈴ちゃんが作者のお気に入り。笑)


 続く四章では、新たな刺客がやってくる『プログラミング大会編(後編)』がスタートします。

 AI美鈴ちゃんは、『人間』であることがばれてしまうのか。

 ぜひぜひ、引き続きお楽しみいただけると幸いです。(*_ _)



 あとは、いつものお願いさんです。(*_ _)

 ☆もフォローもPVも、伸び悩みですね!笑

(おしゃべりスペースが長いですね。本当はもっとこの物語を語りたい。笑)



 ↓いつもの↓


 こちらは『第9回カクヨムWeb小説コンテスト ラブコメ部門』参加作品になっております。

 一次選考は読者選考となっておりまして、もし楽しかったと思って頂けましたら、フォローや、☆評価を頂けましたら幸いです。


 こちらの近況ノートにイメージ画像を用意しております。

 合わせてお楽しみくださいませ。(*_ _)


 https://kakuyomu.jp/users/tahoshi/news/16817330667743912450

 ※画像は、四之宮 卯月こと、美鈴ちゃんになります。



 コメント、とても感謝しております。(*_ _)

 ストックが無く、毎日書いてまして、返信が滞って……╭( ๐_๐)╮ガックシ

 引き続き楽しんで頂けると幸いです。


 それでは、また次の章でお会いしましょうー!

 頑張れ、美鈴ちゃん!(*´︶`*)ノ

 *.˚‧º‧┈┈┈┈┈┈┈┈┈‧º·˚.*

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