第32話 大会後の朝練!
気がつけば、あっという間に大会は終わってしまった。
全チームの課題が終わったところで、各チームの課題クリアタイムと、正答率が発表された。
誤っていた部分があったチームは、ペナルティを受け、それによって順位は変動したが、俺たちの順位は惜しくも二位だった。
YAYOIの高校に負けてしまったのだ。
それでも二位っていうのは、快挙なわけで。
俺としては、すごく充実した大会だったと思う。
大会を通じて、五十嵐さんとも仲良くなれたわけだし。
元々の目的は達成されたのだ。
こんなにも短期間で、急接近出来るなんて、美鈴の作戦は本当に魔法のようだったよ。
満足いく結果に、俺と五十嵐さんは、すごく自然にハイタッチをしていた。
美鈴だけが、浮かない顔をしていた。
労いの意味も込めて、大会が終わったお祝いでもしようと思って声をかけたのだが、流石に美鈴は疲れてしまったらしくて、俺からの誘いは断って帰ってしまった。
AIとは、つくづくよくわからない。
美鈴が一人で帰る姿は、なんだか寂しそうに見えた。
これが最後の別れみたいな顔をして。
そんなに負けたことが悔しかったんだろうか?
◇
大会が終わると、気持ちも楽になるもので、一生懸命にやっていた朝練なんて、無理していかなくてよいのだ。
放課後に俺の家で行われていた特訓も、土日に美鈴が俺の家にやってくる活動も、終わりを告げたのだ。
なんだか、寂しい気持ちは残るんだけどな……。
これが、一つの区切りってやつかもしれない。
ただ、習慣というのは怖いもので、大会が終わっても、ついつい癖で早起きしてしまった。
いつもだったら朝は美鈴が起こしてくれるのに、今日は連絡が無かったな?
朝のモーニングコールは欠かしたこと無かったのに。
実は、大会が終わった後から、美鈴と連絡が取れていないんだよな。
一旦クールタイムでも必要なのかもしれない。
毎日、顔を熱くしてまで一生懸命活動していたからな。
さて、早起きしてしまったが、どうしようかな。
大会が終わったら、朝練もしなくていいかもしれないけれども。
俺はいつもの癖で、朝早くから学校へ行く準備をする。
登校準備しながら、美鈴と会話しようと思っても、スマホに入れてるAIアプリが全然反応しなくなってしまっていた。
美鈴はどうしたんだろう……。
……俺の足りない頭で考えても仕方ないか。
とりあえず行くか。
最近は美鈴と一緒に登校してたけど、今日は久しぶりに一人だ。
◇
学校の最寄り駅まで着くと、五十嵐さんがいるのが見えた。
以前までの俺だと、知り合いがいても知り合いがいても見なかったことにして通り過ぎてしまっていたが、今は違う。
俺は、五十嵐さんに近づいて行って、声をかけた。
「おはよう、五十嵐さん。今日も朝早いんだね」
「あ、睦月君おはよう。なんだかんだ、早く起きちゃうよね」
爽やかに五十嵐さんと挨拶を交わす。
そうだよな。
こうやって、俺は美鈴に高校生活を変えてもらえたわけなんだよな。
昔の俺じゃ考えられないな。
俺を変えてくれた美鈴には、感謝の気持ちしかない。
まったく、なんで連絡が出来なくなっちゃったのかな。
そのあとの通学路も、俺はさっちゃんと楽しく談笑しながら通学できた。
一カ月前の俺に聞かせてやりたいな。
AIの力って素晴らしいって。
全部美鈴のおかげだ。
パソコン部の部室に着くと、そこに美鈴がいた。
椅子に座って、神妙な顔をしている。
いつもは、パソコンの前にいると、ニコニコと楽しそうに笑っているのに、今日はなんだか雰囲気が違っていた。
五十嵐さんは、何も気にせず美鈴に声をかける。
「おはようございます」
「おはよう」
美鈴は五十嵐さんと挨拶を交わすと、俺の方に寄ってきた。
そして俺の手を掴んで来て、言ってきた。
「睦月、二人きりで話したいから、来て」
「え、話って言われても。そんなのアプリ経由で話せたんじゃないか? 今まで連絡がつかなくて心配してたんだぞ」
「……直接話さなきゃいけないことがあるの。YAYOIにばらされる前に。私から直接言いたいの」
よくわからないが、俺は美鈴に連れられて、屋上へと向かった。
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