第26話 お泊り……だとッ!?
「……うにゅ」
知らない天井だ。と思ったが、起きてわずか0.0005秒ほどで悟る。
「俺、堕とされた」
物理的に締め落とされた。人生初の締め堕としを、まさか女子に喰らうなんて、というか一生そんなことないと思っていたのに。
「おはよう……ごめんなさい」
謝る割には全く反省していないような声色である。しかも、なぜか今俺は圭さんに抱かれてベッドで一緒に寝転んでいる状態だ。
「謝るなら、せめて今やってることをやめません?」
「……やだ」
「甘えん坊ですね。よしよししてあげましょうか?」
「そんな上の立場にいると思ってるの?」
回されている腕がもっと締まる。本当に非力な自分を恨みます。これから筋トレでもしようかな。そんなことを考えていると、ふと部屋で音楽が流れていることに気づく。外もいつの間にか雨がぱらぱらと降っている。
「スピーカー、早速使ってみたの」
床にはプチプチだったり段ボールだったりが転がっている。窓際の机には青いメタリックな外装のコンパクトなスピーカーが置いてあった。
「部屋用のでいいサイズのが無かったから、ありがとう。選んでくれて」
「ほぼ圭さんの直感ですけどね……」
俺がやったことと言えば、もうちょっと安く収めませんか?とひたすら提案していただけだ。
「傘は持ってきたの?」
「そういえば持ってきてないですね……あーでも大丈夫ですよ!家結構近かったので走って帰れば―――
「提案」
「……提案?」
「明日からGWだから、泊まっていく。ていう選択肢の提案」
お泊り……だとッ!?
ここで、俺こと美空遥のお泊り歴をご紹介しよう。幼少のころからの幼馴染でなんと高校まで一緒という腐れ縁っぷりを発揮する
俺は中高生のお泊りの仕方を知らない。
「あの、着替えもないですし、第一圭さんのお父さんお母さんに迷惑だし」
「両親は今海外出張中」
「さいですか……でもほら、お着替えが……」
「私の着ればいい」
身体的に見れば元男で今は女でも、精神的にはまだ男って自覚あるんだよなぁ……いくら前みたいに女子との接触であんまり興奮しなくなったと言っても、自分の中ではそれは禁忌だ。問題でしかない。
「遥だって女の子。私の服は入るはず……なんならちょっと大きいかも……」
遠まわしにチビってディスられた。まあ、縮んでるけれども。
「じゃあ、着替えを届けてくれるかどうか親に聞いてみますね」
スマホを取ろうと、ベッドから起き上がろうとすると、背中を強く引かれてまた戻されてしまう。なんならさっきよりもぎゅっと抱きかかえられてしまう。
「遥のお母さんには連絡して、許可とった」
本当に行動力が凄まじいな!!
「その時に、服は貸してあげてって言ってたから」
じゃあそれ、俺に選択肢を提案しなくてもよくない?と、思いつつ、パスワードをいちいち打ち込んで開くのを面倒くさがった自分に叱責して観念して泊まることにした。
あれから30分近くベッドで拘束されながら、ひたすら音楽の流れてる空間でダラダラしてから、今は俺が持ってきたPCでMIDIを開いててきとーに作曲中。圭さんはそれを後ろから見ている。
「それであの曲をつくったの?」
「はい。MIDIでやるよりもめちゃ気持ちよかったですよ。だから圭さん私とやりましょうよ」
「……私、歌下手だから」
「え……そうなんですか?学校のうわさで聞く限りすごい上手いって聞きましたけど」
ちなみに圭さんは学校では有名人である。軽音部所属ですごく美声、おまけに美人で飾らない性格でだれともあまり関わらない。そんな私生活が謎に包まれた圭さんとお近づきになりたいと思っている生徒はとても多い。だからこそビビったのだ。この圭さんの家に招待されるなんて思ってもみなかったから。
「人前で歌うのは……恥ずかしいから……」
「あぁ、まあ人前でやりたいにはやりたいですけど、私は圭さんとただ音楽がしたいだけなんで、嫌ならどこか二人でやるのも全然OKです!」
個人的にも、いきなりみんなでぶわーっとやるより、まずは圭さんと二人で楽しみたいという気持ちもあったりする。
「二人で……」
「ん?どうしたんですか圭さん。なんかいきなり後ろに飛びのきましたけど」
「なんでもない。なんでも、ないから」
二人はやっぱり嫌なのだろうか……んー距離感がわからない……
そんな二人は、夕方までこうしてぐうたらしていたのだった。
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月曜日から学校ということで、そろそろ投稿間隔が空いてしまうかもしれないです
TS転生してとある女子高生を笑顔にしようとダル絡みしてたらいつの間にか私が彼女のモノにされていた件 べいくどもちょちょ @zanbatou1000
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