第37話 じゃんけん to でぃさいど
「じゃあこのトピック。ペアで読みあってください。終わったら右ページの問題も一緒に解いていっていいですからね」
みなさん、前話に引き続きこんにちは。突然だけど、今は英語の時間。今日は二つ目のトピックに入る最初の授業で、恒例のペアで読みあおうが始まった。皆さんはこの時間が充実するだろうか。充実すると答えた者は速やかに手を挙げて。俺がこの手でつぶしに行きます。
「俺から最初に読むわ」
俺の隣は帰宅部で、とっても明るい性格の山田君。共に席替えで後ろの席を勝ち取った同士であり、語り合う事こそないがラノベやネット小説を愛読する者でもある。運動部に入ったらいいところまで行けるんじゃないかて感じの身体能力に、勉強も差し支えないという秀才っぷり。それから話せばまあ結構弾む。しかし、彼にも欠点がある。
コミュニケーション力。これに尽きる。
先ほど話せばまあ弾むと言ったが、まあ弾むのであって、大盛り上がりになることはないのだ。これは結構コミュ障の俺の前の席の陽キャの
そんなコミュ障ズ《俺たち》が繰り広げるペア活動は、至ってシンプルな気まずい空気が流れる。
「次、美空さんだけど、だいじょぶ?」
「あ、ご、ごめんね!今から読みまする!」
「お頼み申しまする」
この子絶対仲良くなったら楽しいんだよなぁ……だけど話しかけるのすっごい緊張するんだよなぁ……
「あ、ここってどんな意味なの?」
「あぁ、ここは貢献するって意味だな。con が皆で、とかのニュアンスの接頭語で、tributeは感謝とか賛辞だから、みんなが感謝することって感じで、貢献するって意味だと思ってる」
「ほへぇ。脱帽ものですな」
「まだまだ至らぬ身でござりまする」
「そなたは立派な『精神的に向上心のある者』ですぞ」
この通り、山田君は英語がめちゃ得意。意味だけじゃなくて、ニュアンスとかも教えてくれるからだいぶ助かっている。あとまあノリがいい。今はまだ俺しか山田君と話していないという優越感……オタクに優しいギャルの心境ってこういう感じなのかな?(かく言う遥も授業中以外話さない模様)
「じゃあ、発表してもらおうかな。山田君、美空さん、じゃんけんして負けた方読んでくれる?」
刹那、両者に稲妻走る。
「Janken to decide」
「私は全力で読むのを譲るが?」
「いや、ここはそなたにこの権能を渡そう」
「「……ふう、武力行使はできるだけ避けたかったが……」」
いざ尋常に!!
結果、俺が負けて読む羽目になった。挙句途中でチャイムが鳴ったため、早く読まなければみんなの休み時間を取ってしまうという焦燥感に駆られて逆に2分くらいかかってしまった。山田君、手ごわし……
「てことがあったんですよー。慰めてくれませんか?」
「知らん。お前がそもそも負けたから悪いんだろ」
「翼先輩って、薄情なところあるんですね」
「割り切っていると言ってほしいな……お、待ち人来ったぞ。じゃあな」
廊下で翼先輩を見かけたのでじゃんけんのことを愚痴ったところ、厳しい意見が飛んできた。翼先輩はそのまま一人で廊下の奥へ行ってしまう……もしやボッチ?
「おまたせ、遥」
「お待たせすぎですよー聞いてください圭さん」
GW明け前夜に、交換しておいた圭さんの連絡先からメッセージが来ていて、内容がこの待ち合わせ。これから食堂で一緒にご飯を食べようとのことだった。俺としてはせっかくより仲良くなれた気がする圭さんと会って話す機会でもあるので、願ったり叶ったりだ。
「で、あの先生が『じゃんけんtoでぃさいどーとか言うから、ちょっと気持ちが勝負にいっちゃって、残り時間わずかで焦っちゃって……慰めてくださいよ圭さん」
「んー。焦ってるとこ、可愛いね?」
「ベクトルが違う……」
「ん……今日の日替わり、美味しい」
「さいですか……」
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明日は待ちに待った私がKPのTRPGだぁぁぁぁああ!!!
ボスを作るのが一番難しいんですよね……(戦闘大歓迎系探索者の意見)
面白いので興味ある人はやってみてください!
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