第11話 メンバー集め
食堂でなぜか圭さんを賭けた勝負が決まった夜。俺はよくわからない紫クマの抱き枕とともに布団で談義をしていた。
「おいムラサキの。おめぇはこの窮地をどう乗り切るよ」
そうでやんすねー。ねっとで募集して即席で組めばいいんじゃないすかねぇ。
「お、お主そのように簡単に言うではないぞ。ねっとなるものにはどこかしこにも魔物が潜んで居るのじゃ。相手がやり取り上ではとても真摯に対応してくれていたのにいざ待ち合わせ場所に赴くとワゴンに乗せられていかがわしいことされた挙句所持金全て巻き上げられてどこかも分からない山奥に捨てられるなんてことはざらにあるのだからな!」
かといって学校に知り合いなんていないでやんすよ?
「ぐう……入学式の日に圭さんを探すことに夢中になっていたためにクラス内のグループ形成に乗り遅れてしまった……不覚!!」
あ、でもでもそのときにいろんなひとに出会ったでやんすよ
「むう?確かに、そうかいるではないか」
なんかよくわかってはいないけど、圭さんがかかってる勝負まで二週間しかないため迷ってはいられない。
「当たって砕けろ。だな」
でやんす!
無論、ここまでの会話は全て自分一人で繰り広げた妄想劇である。
◇◇◇◇
―翌日の放課後にて―
「いろんなことが頭の中を渦巻いて授業何も聞いてなかった……けど、ここからが正念場よ」
確かあの口ぶりからしてあやつは二年生のはず……あ、いた。うわ、友達5,6人と仲良く帰ろうとしやがって。こちとらぼっちだぞこんにゃろ……俺は妬みと気合を入れて周りの騒々しさをかき消すほどの大声を出す。
「先輩!少しいいでしょうか!」
「お……ん”ん”。俺にできることならなんでも……げっ!お、お前」
俺が背後から声をかけたからだろうか……先輩、もとい土下座男は振り返って俺の顔を見た途端顔をしかめて、なんでお前がここにといった疑問が浮かんでいる。
こいつ、俺を見るまでまんざらでもなさそうに声作ってたのに
「おーなんだお前、告白か~?」
「青春してんなー。後輩ちゃん悲しませんなよ?」
「お……おうよ!よし、じゃあちょっと場所を変えようか」
「はい!せんぱ、いいぃい”い”いだいい”だい”」
「ひゅー大胆」
土下座男は俺の手を力強く握りしめるや否や早歩きで空き教室で人のいない空き教室へと連れ込んだ。
「お前どういうつもりだ。この前の冷やかしか?」
「あ、自分でこの前のこと恥ずかしいことだって自覚してるんですね」
「な、てめぇ味噌田楽のくせに生意気言いやがって」
「だからどうして味噌田楽なんだよもっとなんかなかったのかよ!」
おっといけない。ついつい気持ちが荒ぶってしまった。会うの二回目に言うことでもないけど、なんかこの人は嫌なやつとは思えないんだよな……
「で、本当に何の用だ」
「あー……実は―――――――
俺は琴のあらましを事細かくすべてこの人に話した。
「なので、面識ないのにこんなこと頼むのも失礼ですけど、私とバンドやってほしいんです!!」
土下座男は、意外にも真剣に話を聞いてくれた。今も目をぎゅっと瞑ってうーんと熟考している。
「ときに味噌田楽。お前はあの圭さんに対してどれくらい本気で思っている」
土下座男が、ものすっごく真剣に俺に質問してくる。なんか試されている感じがするけれど、俺の答えは当然決まっている。
「あのDQN野郎に誘われてた時、すごく嫌な顔をしてたんだ。あんなやつの手に渡るくらいだったら、私が、私たちがあいつらに勝って圭さんをあいつから解放したいんだ!っても、あいつと圭さんになにがあったのかは知らないんだけどね。あははーって、ちょっと聞いてる?おーい―――
ぐすん、ぐすん、とすすり泣く音が聞こえる。あれ、俺泣かせるようなお涙頂戴話を披露したつもりはないんだけど……
「そうか、そうか……おい味噌田楽!お前の心意気しかと承ったぞ!」
「いい加減味噌田楽やめん?こっちが泣いてまうよ?」
てかお前、人の話を真剣に聞いて挙句感動して泣けるって、ええとこの坊ちゃんかよ。すごい偏見だけど。
「よし、わかった。俺がお前のバンドに入ろう!俺の超絶ドラムを除けばバンドなんてあとギターとベース、ボーカルの最低三人いれば何とかなるんだし、二週間もあれば見つかるって。自信をもってやってこーぜ」
でもまさか、断られること前提で、しがみついて土下寝まで覚悟してたのにまさかこんなにも親身になってくれるなんて……
「土下座……お前いいやつだなっグス、グス」
「お前も土下座って呼ぶのやめろよ。てかお前あれ見てたのかよ!」
「あ、あと土下座がどれだけドラム上手いか知らないけど、私楽器できないし歌えないよ?」
「よくそんなので勝負に載ったなえげつねぇなお前!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
現在メンバー二人
・味噌田楽(訳なし)
・土下座(自称超絶ドラム)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
数学のワークを終わらせた記念です。
誤字があったため修正しました。
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