第48話 Vtuberデビュー(一日限りというお話)
「あのー……いいんでしょうか」
「大丈夫大丈夫!結局使われてなかったボツ案だから。それに、本気で作ったけどコンセプトに合わなかったってやつがボツ理由だから。全然使っていい奴らしいよ?」
俺、美空遥は先ほどそちらの大人っぽい女性、
「あの、私なんかがいても余計緊張するだけだと思うけど」
「大丈夫!大丈夫だから、ハルは気にしないで」
さっき俺と一緒に相澤さんの言葉に驚いていた古閑さん。切り替えが早い……しかし、代理で大丈夫だって宣言できるってことは古閑さんはナターシャのお友達とかマネージャーさんとかなのだろうか。
「てことで、ここの古閑ちゃんのせいで出られなかったオンエアバトルで披露するはずだった曲も、そこで歌っていいからね」
「え、ホントですか!古閑さんありがとうございます」
「あーいや、そうじゃなくて、少女……名前なんだっけ」
「美空遥です」
「じゃあ美空少女。私は君の声に可能性を感じている。どうかな。自分で歌ってみるというのは」
「まじすか……」
確かに、俺が歌うとなれば、古閑さんが練習することもないし、どんなふうに曲を歌いたいかも一番わかっている。がしかし、俺は歌うという事を公にやったことが学校での合唱くらいしかない。それ以外ではお風呂で歌ってるくらいだろうか。だけどあれは真面目に歌ってるなんて言えないものだろう。みんなもそうでしょ?
「大丈夫!歌ならきっとナターシャも助けてくれるはずだよ!」
「そうなの?人見知りなのに?」
「人見知りでも彼女は優しい子なの!」
「はい。じゃあ美空少女はこれから説明と案内と準備をやっちゃいましょうか」
それから、古閑さんとはいったん分かれて相澤さんにもろもろ説明を受けた。
「君はあまりにもサプライズだから、私とここで本番はお仕事します。で、3Dモデルを動かすのはこれをつけて動くと、画面内のモデルも動くからね」
はえー。最近の産業ってもんはえげつない進歩を遂げてはりますな。俺が器具を装着して手を振ると、画面内のモデルが可愛く手を振った。髪は黒色のショートヘアで、俺のこといじってんのかってくらい背は低め、がしかしスタイルは良く体のラインはすごい。どえらいもん作りはったわこりゃ。
「あなたの名前は青空遥。本名と偶然一緒だから、周りの子も呼び間違いとかの心配をしなくていいかなってスタッフさんがこの子を渡してくれたんだけど……なんか、君に似てるね」
「失礼ながらどこ見て言ってます?」
「自明ながらここ」
「僭越ながら指さすなやばかやろー」
相澤さんの元気で関わりやすい話口調のおかげでだいぶ緊張もなくなり、雰囲気も良くなり部屋の勝手と器具の使い方も大方マスターした。
「じゃ、古閑ちゃんの方見てくるから適当に時間までくつろいでててねー」
相澤さんが部屋から出ていかれた。壁についているモニターには、ステージの状況がコメント付きで映し出されている。
「弾幕がもう飛び交ってる……」
時刻は17;00。まだに時間もあるのに、待機場にはすでに言葉が飛び交っている。ちなみに、他の会場やブースも盛り上がっている。ストリートピアノのブースだろうか。
「あ、この人!」
この前の圭さんと蒼とやった時に交じってきてくれた人だ。絶賛配信中って書いてるし、連絡送ったらあとで一緒にできるだろうか。
「この前できた人脈って割と強かったりするのかな……あ、カンペのおじさん!」
今日も例の如く、ピアノの音色に合わせてヲタ芸をやっている。すごくキレッキレだな。
「あとでみんなで会いたいなー」
知った顔の存在を確認して、これからの出番への気持ちが若干楽になったのであった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
圭「遥……どこにも写ってない……」
何かと気になって会場の配信を見ている圭さんあった。
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