第49話 激歌ステージ:ぶいちゅーんないと!!

「みんなー!まだまだ盛り上がってる?」



 元気良くミナが観客に問いかける。それに呼応して、観客も弾幕も熱を増していく。


「今日はスペシャルなサプライズもあるから、楽しみにしててねー!!」



「美空さん。準備できてますか?」


 スタッフさんと最終確認をしていく。ステージの巨大スクリーンには、カウントダウンが映し出されて、ミナが一時見えなくなる。


 それにしても、今日は本当に濃い一日だなと思う。圭さんと出会ってからだろうか。俺が女になってからだろうか。男だった時とは比較にならないくらい出会いのスパンが短い。


 そしておそらく今月一びっくりしたこと。相澤さんが……相澤さんが、星河ミナだったことだ。今も同じ部屋にて器具をつけている相澤さんが、「ばっちり登場キメちゃってよ」とサムズアップしてくる。



「じゃあ、映ります。ポージングからいい感じに決めちゃってください!」





――3、2、1、――




 ぶいちゅーんの歌姫ナターシャ・グリースフィアの持ち歌と共に、華やかにぶいちゅーんのメンバーが紹介されていく。


 俺やミナ、ナターシャの出番は一番最初。とにかく盛り上げて、一時間半にわたるステージの序盤20分をお届けする。ぶいちゅーんはまだまだ創設から5年もたっていない若々しい事務所なため、所属する人数もまだまだ少なく、現在までに4期生までの12人。



 そんな中で、こんな大きなイベントのステージをこれだけ集めることができるのだから、相当人気があるのだろう。


 イベント司会の人が、マイクを握って高らかな声を上げる



「さあ、登場いただきましょう!星河ミナ、ナターシャ・グリースフィア、そして!サプライズゲストライバーだ!!」



「改めまして、やっほー!!皆!」


「やっ、皆さんこんばんは」



観客は大盛況。二人が姿を現してあいさつをしただけで拍手が鳴りやまない。


「盛り上がるのは早いよ。来て」



 俺の登場だ。ドジ踏まないように、圭さんにも言われてるように子供みたいなことをしないように……



「みなさーん初めまして!一応今回だけの契約で呼ばれました青空遥です!みなさんよろひkッ! あ”ぁあああ”ぁあ”ああ!!!ひ、ひた……噛んだぁあ……」




「「「「「うおぉぉぉおおおおお!!!!!!」」」」」




「なんて末恐ろしい子なのよ……はい。こんな感じのドジっ子だけど、今日は私たちと一緒にステージを盛り上げてくれるよー!!」


「可愛い、ハル可愛―――こ、こほん。私たちにももっと、声ちょーだい」



「「「「「「「うおおおおおおお!!!!!」」」」」」」



 

 成功……なのか?盛り上がってる感じはする。けど、ナターシャってクールキャラだよね……今、俺のこと……かわいいって





「お、弾幕も盛り上がってるねー!スパチャがとんでもないよー!ありがとー!」




「ちょっとだけ紹介しちゃおっかな」



 ナターシャがスパチャを送ってくれた人と、文章の紹介を始める。もともと組み込まれていたのか、送られてきたスパチャがスクリーンに一覧みたいに映し出されて……え、うそでしょ?



「みんな、青空ちゃんのファンになっちゃったみたいだねぇ」


「わかる……じゃなくて、まだ一言しかしゃべってないのに、すごいね」



「えと……ファンになられましても、私デビューとかじゃなくてこのイベント限定参加なんですけど……」



@yukimimochi  ¥3000

―――――――――――――――

初手で噛んでいくところにもう才能しか感じない




@みかん  ¥1500

―――――――――――――

遥ちゃん!活動費用の足しにしていただきたい!




@K  ¥50000

―――――――――――

遥、一体どういうこと?




@隣の山田君  ¥20000

―――――――――――――――

ナタちゃん今日も美しい!!







「わ、私のことが書かれてない……」


「どんまい、ミナ先輩」


「私デビューしないからね!?て、てか、今なんか見覚えがあったような……」





 これが終わった後、なにかすごく恐ろしいことが起きるんじゃないかと、内心すごく怖くなっていく遥であった。





――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




ほんとにVtuber 難しい……

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