第50話 ナターシャってクールキャラなんだよね?
ナターシャやミナの絵が職人によってバンバン弾幕として飛び交うなか、順調にトークが進んでいく。10分ほど喋ったら、残り10分は歌を歌って退場なのだが、10分喋れるかなという俺の心配をいとも簡単に消し去っていくトーク力。脱帽ものです。
「遥ちゃんは普段誰のことを見てるの?」
ぎくり!とはまさにこのことだろうか……山田君の影響で見だしたとは言っても、まだまだにわかなんですよ。
「そうですね……ナターシャさんの歌はよく聞いてます」
「え~私のも見てよー嫉妬しちゃうなー」
「え……えぇ。私の動画よりも、ミナ先輩の動画も面白いから見てみて。あ、でももちろん私のはもっと聴いてほしいというか、その……」
「おーいナターシャ。キャラぶれてるぞー」
「はっ、……私はなにを」
観客の皆さんも、普段の余裕あるクールなキャラとは違った今の必死なナターシャを見て、目が点になっている。
「なんか残念だよねー。こんなに可愛い容姿でこんなに可愛い声してるのに……一回くらい私たちと配信しない?雑談とかさ!」
「拙者一人を好む故……ゴメン」
「ぐふっ……なんか傷が……心に……」
「ナターシャ?今日なんか様子がおかしいよ?」
「はっ、……私はなにを」
おかしいぞ。とってもおかしい。ナターシャは、もっとかっこよくて、ビューティで、淑女のような気品があるのだ。何回でも言う。今日のナタちゃんはおかしい!
「そういえば……」
俺は気になっていることを聞いてみることにした。
「今日お昼にナターシャさんが遅刻してるって言ってたのを聞いたんですけど、あれどうしてだったんですか?」
俺の疑問に同調するかのように、弾幕が少し多くなる。なぜかミナは、相澤さんは困った顔になる。
「私お昼に、ナターシャさんのマネージャさん?に出会ったんですけど、あの人必死にナターシャさんのこと探してましたよ?」
俺が質問を具体的にすればするほど、なぜかナターシャが動かなくなる。ミナはなぜか肩をぷるぷる震わせている。
「き、きのせい、よ」
「いやいや、ナターシャさんがいないから私のことをオンエアバトルに出る相手として急遽お誘いしてきましたよ?マネージャーさんきっといっぱい人捕まえて、頑張ってたんだと思うんです」
「そんな、誰でもいいわけないじゃない!……あ、いやこれは……こほん、私のマネージャーはそんな見る目のない人じゃないわ」
「そう……だね、くふっ……ちゃんとしっかり探してたもんね……ふふっ」
「ミナ先輩茶化さないでください」
もしかして……ナターシャが遅刻してたというのは実はちがってて、ここに出る人を探すのに品定めをしてたってことなのか?つまり、ナターシャのマネージャーさんはナターシャが遅刻しているというていで、サプライズにちょうどよさそうな人材を探してたってこと……そうか、だからあの時いきなり裏に連れていかれたのか。
「ふっふっふ……分かってしまいましたよミナさん。ナターシャさん」
「え?な、なにが?」
「聞かせてもらおう。君の推理を」
すごく焦っているナターシャと対照的に、ミナの声が妙に面白がってそうに聞こえた。
「ふむふむ……なるほど、つまり遥ちゃんはナターシャの遅刻は仕組まれたものだと」
意気揚々と自分の推理を話すハルを見ていて、とても申し訳ない気持ちが募ってくる。そんな大層な話じゃないのだ。単純に私がイベントをすっぽかして、やっぱりハルの顔を一目でいいからみたいと、会いたいと思っただけなのだ。結果的にこのような形になってしまっただけで、そんな美談なんかじゃない。
今日のトークはダメだなと、私は自分の中で反省していた。クールな歌の上手い女の子がナターシャのキャラなのに、今日は情けない、余裕のないきょどった女の子としか映し出されていない。
けど……けど、ここまで来ちゃったらもう、この状況を楽しむしかないじゃない。私。何焦ってるんだ。
せっかくこうしてハルとお仕事が出来てるんだ。これを機に、自分を支えてくれたハルのこと、もっと知りたいし、もっとお友達になりたい。
デザートとか、ゲーセンとか、オフでゲームをやったりとか。ここできょどったままでは始まらない。
「ねぇ。ハル。」
「どしたんですか?ナターシャさん」
「そういえば、私のために歌を作ってくれたのよね?」
せっかくなら、ハルと言葉を交わしながら作った歌を、私が初めて歌いたいと思ってしまうのは、別に贅沢なことじゃないと私は思うんだ。
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@K ¥50000
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遥。その女は危険、離れて
@隣の山田君 ¥2000
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ナタちゃん。今日の少女っぽいところもカワイイ……
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新しいやつ書き始めたけど、Vtuberよりむずいかもしれん
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