第28話 いざ尋常に
haru:先輩宅にてお泊り会yeh
小松菜:待ってほしい待ってほしい。勝負勝ったの?
haru:おかげさまで先輩を私のものにできましたわ
小松菜:ふーん(察し)
haru:待て待て待て。こちらの言い方に不備があった
小松菜:私というものがいながら、そうやって浮気するんだ
haru:まだ顔も合わせてないんだが?
小松菜:人がペアチケ行けなくなったらすぐそうやって別の人に手出すんだ
俺別に何も悪くないのに、なんかありもしない罪悪感が……お主にはわからないだろう。ペアチケの相手がいなくなって、一人でいたたまれなく会場へ行くのを必死に回避しようとする者の努力を!
ご飯を食べ終わって圭さんの部屋に通されて適当にくつろいでいると、お風呂からあがってパジャマ姿になった圭さんが部屋に入ってくる。普段でも艶々している髪がさらに艶やかになっていて。グレーのだるっとしたパジャマも、尊い。
「なんか、恥ずかしいんだけど」
「恥ずかしがることないですよ!めちゃ綺麗ですから!」
「それが恥ずかしいんだけど……空いたから、遥も入ってきて」
「はーい。圭さんの残り湯堪能してきます!」
このままここにいると尊すぎて目がやられてしまいそうだったために、このタイミングのお風呂は本当にグッドだ。俺は勢いよく扉を出てお風呂まで走る。
遥っていう女の子は、中身にオジサンを宿しているのだろうか。とても現実離れした想像だけれども、彼女の私に対する接し方を見るにそうとしか思えない。さっきだって、私がパジャマになっただけで「尊い」などという心の声を漏らすほどだ。聞いてるこっちが恥ずかしくなる。
「私は、遥の残り香を……堪能しようかな」
うん。恥ずかしい。彼女の真似をして言ってみたけれど、誰にも聞かれてないのにこんな言葉を言ってしまったことに対してとてつもなく寒気がする。と言いつつも、彼女の匂いを興味本位で嗅いでみる。彼女がくつろいでいた私の布団に、ごろんと寝転がってみる。いつもと違う匂い。自分がずっと使っていたものに別の香りがすることに少し面白くなって、すんすんと顔を近づけて堪能する。
「いい匂い」
なにやってんだ?俺はほんの少し空いているドアの隙間から見えた状況にはてなを浮かべて困惑した。圭さんが、ベッドに顔をめり込ませている。時々呼吸をするために顔を横に向けるときには、にまにまとした笑顔が見える。なにがそんなに面白いんだろう。自分の匂いフェチとか?あんま自分の匂いってわかりにくいもんだけど、てまさか!なにか思いつめたことがあって窒息死しようとしてるとか!?早まってはいけないよ圭さん!
「話聞くので早まらないで圭さん!」
「……どういうコンセプト?」
「戻るの早!」
さっき覗き見てた体勢から気づかぬうちにベッドの上に座っている状態になっている。
「さっきまでベッドに顔めりこんでませんでした?その……悩みとかに押しつぶされてましたよね。自分で抱えないで、私に遠慮なく話してください」
「あぁ……気のせい。妄想」
「どんな妄想ですか。あぁって言いましたよね」
「ない。遥が馬鹿なだけ」
「私が馬鹿なのは関係ないですし馬鹿じゃありませーん。らち開かないですし圭さん勝負しましょう。じゃんけんです!じゃんけんto dicide です!勝った人の言う事が絶対です!」
「私に得ないんだけど……」
問答無用。俺は手をクロスして相手をの心理を覗く。もしなにか辛いことを抱えているなら力になりたいし……匂いフェチなら、こう…協力?うん!まあなんかするし!圭さんが出しそうな手を今までの傾向から絞り込んでいく……あ、前例がなかった。あれ?詰んだ?いやいやいや、じゃんけんというのはもともとそういうものだ。三分の一という平等な確率ですべてが決まる。それがじゃんけんなのだ。
「行きますよ。圭さんのこと、詳しく聞かせていただきますから」
「……お、お手柔らかに」
じゃんけんぽん!!
「ぇあ………」
「……勝った。いぇーい」
棒読みの勝利宣言と、どこかしたり顔の圭さんが硬直している俺をのぞき込んでくる。俺は……パーを出したぞ。
「勝っても負けても私が満足すればそれでいいじゃないかー!!ぐぎゃっ」
圭さんに突撃したが、片手で抑えられてしまった。非力になりすぎじゃない?もうちょっと力があってもいいと思うんだ。これは常人よりも断然弱いと思うんだ。
「じゃあ、なにか言う事を聞いてもらおうかな」
「へ?めりこんでたかそうでないかの勝負じゃ……」
「私も遥も、それを決めるとはいってない。勝った人の言うことが絶対、でしょ」
「あ……」
どんどん青ざめていく俺の顔を見て珍しくにやりと笑う圭さんに、私は今生殺与奪の権を握られた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
割と忙しいのでまたちょっと投稿空きそう
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます