第5話 白い目で見られる二人
俺は驚愕した。近づいたときはスピーカーの方を向いていたから、上にはおっているパーカーも相まって気づかなかったが、こちらを振り返って私を見る圭さんがその下に着ていたのは、制服だった。
「お姉さん……え、高校生?俺はまさか女子高生にあんなことやこんなことを!?」
「俺?……ていうかその言い方やめて。誤解を招きかねない」
一応言っておくと、女になったので女子の裸とか見放題じゃんヒャッハーなんて思っていたが、性別が変わったからか女性の身体をみても興奮しなくなったし、可愛いとか綺麗だとか思っても、それが恋愛感情や性欲につながるかと言えば、そうでもなくなっていた。
かといって男に恋愛感情を抱くかと言われるとそれもあんまりなのだけれども……
「その、私、華の女子高生に……うぅぅ」
じゃあなんでこんなに俺が顔を青ざめているかというと、別に社会人の女性なら良かったとかじゃないのだが、女子高生に手を出すという文言が頭の中をぐるぐる回る度、いくつもの悪い未来が目の前に映し出されるためにとても申し訳ない気持ちになった。
「わかんないけど、、、なんかごめん」
「謝る必要なんてないですよ!!その、私にできることがあればなんでも言っちゃってください!すべてお姉さん……いや圭様!あなたのためになんでもやります!」
「分かった!分かったからその口を閉じて。どうして私まで変な目で見られなくちゃいけないの……」
いけない。僕としたことが……。もう黙っていよう。俺のすることが全部悪いことにつながってしまう。
「そうだ。早速頼みたいのだけれど。いい?」
「は!なんなりと!!」
「だから……はぁ。じゃあ、あなたもこの売り場に来たってことはこういうオーディオ機器には詳しいのよね?」
「ええと、自信をもって言うことはできないですけど。一通りわかると思います」
「じゃあ、いい感じのスピーカーを選んでほしいのだけれど」
「スピーカー……圭様って渋いですね」
今時の人はヘッドホンとか、なんならワイヤレスイヤホンで聞いてると思ったのだが……
「スピーカーって渋いの?……あと様ってやめて」
「んでお姉さんはどういうやつが好みなの?」
俺が尋ねると圭さんはうーんと悩み
「ズンズンズンドドドワァァアン!!ってやつ」
「……ええっと……………え?」
文学少女とは程遠い、恐ろしいほどの擬音での説明だった。
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