クリスマス

 今日はクリスマスイヴ。今夜は部活のみんなも呼んでパーティーをする予定だ。


「レンは来るとして、先生も一応、声かけたんですよね?」

「うん、恋人が出来たら来ないって言ってたから、絶対来るよ」

「妙な信頼ですね……」


 ボク達は2人で部屋の飾り付けをしている。


「フトシ君は呼ばなかったのですか?」

「フトシは今、カニ漁船に乗ってるって!」

「生きて帰ってくるといいですね……」


 ヒカリちゃんは何かを思いだしたのか、急にポンと手を叩いた。


「ちょっと待ってて下さいね!」

「?」


 数分後、目の前にサンタのコスプレをしたヒカリちゃんが現れた。


「じゃーん! ミニスカサンタコスです! えへへ、どうでしょうか?」

「ぶっー!?」

「ナギサ君……!?」


 あまりにも可愛くて、鼻血が出てしまった。聖夜バンザイ……。


「実はナギサ君用のサンタコスもあるんですよ!」

「へー! じゃあ、着てみようかな!」

「ではこれを! 後、登場する際にはこのセリフを言ってみて下さいね!」


 ヒカリちゃんに袋と紙を渡されて、ボクは着替えに行く。ん? ってこの衣装にこのセリフって……。


 ボクはサンタコスに紐を巻きつけ、ヒカリちゃんの前に出る。


「プ、プレゼントはボク……だよ……?」

「ぶっー!?」

「ヒカリちゃん!?」


 ヒカリちゃんも鼻から鼻血を勢いよく出していた。


「ああ……天にまします我らの父よ……」


 ヒカリちゃんは目を閉じて、昇天しそうだった。


「も、戻ってきてー!」





「メリークリスマスであります! ナギサ殿、ヒカリ殿!」


 レンが時間通りにやってきた。その後に少し遅れて先生も。


「絶対に来ると思ってましたよ! 先生!」

「私に対するその妙な信頼はなんなんだ!?」


 ボクは先生の姿に気がつく。


「って、先生もミニスカサンタコスじゃないですか。気合い入ってますね」

「それが聞いてくれよ。学園の男性教諭に今日、食事に行きませんか?って誘われたんだ」

「え? クリスマスイヴにそれって告白みたいなもんじゃないですか!」

「だろ? 確定演出だと思って、気合い入れてミニスカサンタコスして待ち合わせ場所に行ったら、飛んで逃げて行きやがった……」


 いや……まぁ……いきなり待ち合わせでミニスカサンタが来たらボクでも逃げるわ……。


「先生、可愛いですねー!」


 ヒカリちゃんが先生を見てそう言った。


「そうだろ? なのに何で逃げるかなぁ……」

「もしかしたら、先生のあまりの可愛さに照れて、逃げちゃったんじゃないですか?」

「そ、そうか……! そういうことだったのか……! まったく、アイツめー!」


 ヒカリちゃん……先生に変な希望を持たせてあげないであげて……。


「しかしレンだけ、私服というのも少し浮いてしまったのでありますなー。レンもサンタコス着てくれば良かったであります……」

「あっ、まだ一着ミニスカサンタコスがあるんですよ〜! 後でナギサ君に着てもらうから、取っておいたんですけど」

「初耳なんだけど!?」


 そうして3人のミニスカサンタに囲まれて、クリスマスパーティーが始まった。


 ヒカリちゃんが焼いてくれた七面鳥やケーキはとっても美味しくて、みんなに大好評だった。


 その後にプレゼント交換タイム。


「ん? これは誰のプレゼントだ?」


 先生が質問する。


「あ、ボクです」

「どれどれ、おおっ、高級ハンドクリームじゃないか! 丁度、乾燥して困ってたんだよ!」

「ボク以外、女の子だったから、それがいいかなーって思って」

「うっ……何年かぶりに女の子扱いされて涙出そうだ……ぐすっ。ナギサ、貰って?」

「嫌です……」


 次はレンがプレゼントを開ける。


「これは本でありますな。“絶対に恋人ができる恋愛テクニック本”……?」

「あっ、それ私だ。私の愛読書だぞ?」


 先生が手を上げる。


「もう効果がないって立証されたであります……」

「なんでだよ!?」


 次はヒカリちゃん。


「わぁ、ふかふかマフラーです!」

「レンからのプレゼントであります! 今年は寒いのでぜひ!」

「ありがとうございます! さっそく着てみますね〜」


 最後はボク。残りから考えて、ヒカリちゃんのプレゼントだ。


「わぁ、暖かそうな手袋だ!」

「はい、私と同じ手袋です」

「ふふっ、お揃いだね」

「ふふっ、ですね!」


 こうして聖夜がふけていった。



 


 2人でベッド一緒に入る。


「ボクのプレゼントはヒカリちゃんには渡らなかったね。何か、プレゼントしようか?」


 するとヒカリちゃんはかぶりを振って、ボクを抱きしめた。


「あっ……」

「いいんです……。私にはこうしてナギサ君と一緒にいられるだけで、それが最高のプレゼントなんです……」

「ヒカリちゃん……」

「だから──」

「うん、分かった……」


 ボクはヒカリちゃんにキスをしようとして──


「だからミニスカサンタを着てくれれば、私はそれだけでいいんです……!」

「ええええ!?」


 その後、ヒカリちゃんはまたまた盛大に鼻血を出しましたとさ……。






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