ハロウィン

 今日はハロウィン。トバリちゃんが遊びに来るとのことで、朝からヒカリちゃんと準備をしている。


「どうかな?」

「おー、なかなかいい出来ですね!」


 かぼちゃをくり抜いて、顔の形を作り“ジャック・オー・ランタンの完成。そして、ヒカリちゃんは料理を作っている。


 お昼頃にチャイムがなり、トバリちゃんがジャック・オー・ランタンのお面をしてやってきた。

 

「とりっく・おあ・とりーとめんと!」

「トリックオアトリートね……。はい、トバリちゃん、お菓子」

「わーい! ありがと、おにーちゃん! あ、おねーちゃん! とりっく・おあ・とりーとめんと!」

「はい、トリートメントです。シャンプーの後に使うんですよ?」

「わーい! わーい!」

「本当にトリートメントだったんだ!?」


 トバリちゃんはたくさんのプレゼントをもらえて、とっても嬉しそうだ。


「さぁ、トバリ、お昼にしましょう。今日は私が腕によりをかけて、美味しいかぼちゃ料理を作ったんですよ」

「ほんとー!? たのしみー!」


 昼食は豪華だった。かぼちゃスープにかぼちゃのミートパイ、食後にはかぼちゃのチーズケーキまで出てきた。


「おいしー!」

「うん、かぼちゃ料理、珍しくてとっても美味しいよ! ヒカリちゃん!」

「ふふっ、喜んでもらえてよかったです」

「昼からは外に出てみない? ハロウィンだから、イベントたくさんやってると思うよ」

「いいですね!」

「うん、いくー!」





 そんなこんなで街をぶらつく。するとゲームセンターの看板が目に入った。


「クレーンゲームでハロウィン限定景品があるって書いてあるよ。行ってみる? トバリちゃん」

「うん、行くー!」


 中に入ると、たくさんのクレーンゲームの量に圧倒される。どうやらここはクレーンゲーム専門店みたいだ。


「ありました! これですね!」

「おっきー!」


 巨大なジャック・オー・ランタンのぬいぐるみがクレーンゲームの景品として、鎮座していた。


「これはなかなか取るのに骨が折れそうだね……」

「さっそく、やるよー!」


 トバリちゃんは可愛らしいバックから、小さなお財布を出した。


「今日はおこづかいもってきてるの! これでとるよ!」

「頑張って下さい、トバリ!」


 トバリちゃんは真剣な表情でコインを投入し、プレイを始める。


 それを、ボクとヒカリちゃんは固唾を飲んで見守った。しかし──


「……とれないよぉ」


 おこづかいを使いきったトバリちゃんは、がっくしと肩を落とす。


「……おっきいかぼちゃのぬいぐるみ、ほしかったのに……」


 残念そうなトバリちゃんを見て、ボクはコインを投入する。


「じゃあ、ボクもやってみようかな」

「おにーちゃんもするの? うん、がんばれー!」

「ナギサ君、仇を取ってあげて下さい!」


 2人の声援を受けて、ボクは真剣にレバーを操作する。


「あっ……」


 ちょっとずれてしまったようだ。アームがぬいぐるみより、右に落下してしまう。


 ──が、それが功を奏して、ぬいぐるみのタグに引っかかった。


「おおっ!」


 そのままタグをアームで引きずりながら、見事に巨大なぬいぐるみをゲットした。


「おにーちゃん、すごーい!」

「これを狙ってたんですね……! さすがです!」


 うん、たまたまなんだけど、そういうことにしておこう……かな。


「はい、トバリちゃん」


 ボクはジャック・オー・ランタンの巨大なぬいぐるみをトバリちゃんに渡す。


「あたしにくれるの?」

「うん、トバリちゃんも頑張ったからね。プレゼント。大事にしてあげてね」

「わーい! ありがとー! おにーちゃん、大好き!」


 トバリちゃんはぬいぐるみを抱きしめて、ぴょんぴょんと跳ねている。


「ふふっ、よかったですね。トバリ。大事にするんですよ?」

「うんー! 今日からいっしょにねるのー!」


 トバリちゃんがあまりにも喜ぶもんだから、ボクまで嬉しくなって、つい口元が緩んだ。


「名前はどうしますか?」

「うん、“科捜研かそうけん”にするー!」

「よく調べ物ができそうな名前だね……」





 寝る前にヒカリちゃんが声をあげる。


「あー! 私も魔女の仮装を用意してたのに、着るのを忘れてました! と言う訳で、ちょっと着替えてきます!」


 そしてヒカリちゃんは、魔女の仮装をして現れた。


「ふふっ、どうですか?」


 ヒラヒラとマントをひるがえすすヒカリちゃん。


「うん、とっても可愛いよ〜!」

「ありがとうございます。ふふっ、トリックオアトリート。お菓子をくれなきゃイタズラしちゃいますよ?」

「ふふっ、残念だけど、お菓子はもう持ってないよ」

「そうですか……では──」


 ヒカリちゃんはボクに抱きついた。


「ヒ、ヒカリちゃん?」

「お菓子がないならイタズラ……しちゃいますね?」

「え? ヒカリちゃん? んっ!」

「ん……♡ はむ……♡ ちゅる……♡ レロ……♡」

「んんんっ!?」


 その夜、たっぷりヒカリちゃんにイタズラされちゃいました……。








 








 


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