ダイエット

「きゃああああああ!」


 ヒカリちゃんの悲鳴が、リビングでくつろいでいたボクの耳まで届く。


「ヒカリちゃん!?」


 今、ヒカリちゃんはお風呂に入っているハズだ……! ボクは急いでお風呂に向かう。そして脱衣所に踏み入れると──


「──え?」


 ヒカリちゃんが体重計に黒の下着姿で、のっかっていた。しかも片足立ちで。


「ナギサ君……」


 ヒカリちゃんはうるうるとした目でこちらを見ている。


「ど、どうしたの!? 何かあった!?」


 ボクは下着姿から目を逸らしながら、聞いてみた。


「体重が増えちゃいましたぁ……」


 それを聞いたボクは、ほっと胸を撫で下ろす。


「なんだぁ……。体重かぁ……。びっくりしちゃったよ……」

「なんだじゃないですよ……! 乙女の一大事ですよ! ちょっと、二の腕とかお腹周りとか見て下さい!」

「え!?」

「お願いします……!」

「う、うん……」


 鬼気迫る顔に押され、ボクは下着姿のヒカリちゃんの二の腕やお腹周りぐるりと見てみる。ドキドキ。すべすべで柔らかい乙女の柔肌やわはだだった。


「ど、どうですか!?」

「い、いや、別に太っては無さそうだよ? それより、ヒカリちゃんそろそろ、服着た方が……」

「あっ///体重に気を取られていました……!」





 体重を気にしたのか、夕食はヒカリちゃんは少ししかご飯を食べなかった。少し心配だな……。


 ぐぅぅー。ベッドで横に寝ているヒカリちゃんのお腹の虫が鳴いた。


「あっ///」

「少ししか食べないから……」

「だって太ったら、ナギサ君に嫌われちゃうじゃないですかぁ……」


 それを聞いたボクはヒカリちゃんを優しく抱きしめて、なでなでした。


「バカだなぁ、ヒカリちゃんは。ボクがそのくらいで嫌いになる訳ないのに……」

「本当ですか!? 私がボス⚪︎ロールになっても嫌いになりませんか!?」

「う、うん……?」


 ボスト⚪︎ールかぁ……。頑張ったら行ける──か?


「やっぱり太ったら嫌われそうですー!」


 取り乱しそうなヒカリちゃんに提案をしてみる事にした。


「うん、ならちょっぴりダイエットしてみようか。ボクも出来るだけ手伝うよ。ただし、今日みたいな極端な食事制限は禁止。身体に悪いからね」

「はい、ありがとうございます……! では早速、30kgの道着を注文してみますね!」

「ドラゴ⚪︎ボールじゃないんだから……」




 

「と言う訳で、いいダイエット法があったら教えて下さい。美月先生!」


 ボクは放課後に部室で先生に聞いてみる。


「なんで真っ先に私に聞いたんだ……? 言え! 私がそんなに太って見えるか!?」


 先生はガクガクとボクの肩を揺らす。


「な、なんて言うか“年の功”……みたいな?」

「誰が年増だぁ!」

「そこまでは言ってません!」


 数分後、先生はふぅとため息をついて、こう言った。


「やっぱり野菜だろ。食事前にサラダ、たくさん食うんだよ。自然と食事量も減るし、食物繊維は血糖値を急激に上がるのを抑えて、体脂肪がつきにくくなるしな」

「おぉ! まるで先生みたいな事言いますね!」

「先生なんだが!?」





「と言う訳で、野菜ドカ食いダイエットやってみよう!」

「はい……!」


 ヒカリちゃんは気合いを入れて、サラダを作っている。


「出来ました……! 前菜のドカ盛りポテトサラダです……!」

「おおっ! ──ってじゃがいもは、逆に太るよ!?」

「そんな!? 知り合いのアメリカ人は、フライドポテトは野菜だからヘルシーだってバクバク食べてましたよ!?」

「じゃあ、これはボクが全部、食べるね〜」

「ああっ! 傑作のドカ盛りポテサラが……!」


 ちなみにポテサラ自体はとってもおいしかったです。けぷっ。





「と言う訳で、何かいい案ないかな? レン」


 野菜ダイエットを取り入れつつ、他にもいい方法がないかをボクは探る。


「レンも甘いもの食べすぎて太った事があるでありますよ」

「どうやって、そこから痩せたの?」

「やはり運動でありますよ! 筋肉がつけば新陳代謝も上がるでありますから!」

「なるほど………」



 


「やっぱり運動も必要だよ! ヒカリちゃん!」

「うっ……、やっぱりそうなりますか……」


 運動音痴のヒカリちゃんの表情が暗くなる。


「ボクが足を押さえるから腹筋やってみよう!」

「……ダイエットの為なら仕方ないですね! まぁ、見てて下さいよ。ふん!」


 ヒカリちゃんのお腹が少し上がったかと思えば、すぐにコテンと下がった。


「はぁ……はぁ……限界です……。ふぅ、いい汗、かきましたね!」

「まだ0.5回くらいだよ!?」





 ボクは夜中に目が覚める。何かコソコソとヒカリちゃんが出て行った気がする。


「んん?」


 ボクは気になってキッチンの方に、様子を見に行く。すると──


「あっー! ヒカリちゃんが夜中にカップラーメン食べてるー!?」

「!?」


 ヒカリちゃんが、美味しそうにカップラーメンをすすっていた。


「今日のカロリー的にはまだ大丈夫です! ナギサ君もどうですか? はい、あーん♡」

「あーん♡ じゃなくて! 夜中に食べるとめちゃくちゃ太るんだよ!?」

「そうなんですか!?」


 結局、原因は深夜のカップラーメンで、やめた後はすぐに元の体重に戻ったそうです……。


 

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