同棲開始!?
「はっはっは、いやはや、ヒカリはジョークがうまいな!」
美月先生がそう言うと、クラスのみんなもハッとする。
「そ、そうか、ジョーク……か」
「やだー、ヒカリちゃんってば面白いねー!」
「心臓止まるかと思った……」
「だ、だよねー!」
「ちっ、それはそれで興奮したんだがな……」
みんながジョークだという雰囲気包まれた後に、ヒカリちゃんは小首を傾げる。
「? みなさん、事実ですよ? 私とナギサ君はキスをして、将来を誓い合った婚約者です」
再び、教室の時が止まる。
や、やっぱりヒカリちゃんはあの約束を──
「嘘……だろ……? なぁ、ナギサ?」
美月先生が
ボクは恥ずかしながらも、こう答えた。
「あの……昔の話ですけど、“事実”……です。先生……」
「ぎゃああああああ! 生徒に先を越されたぁああああ! うわーん!」
美月先生が大声をあげて、泣き出す。
「うわあああああ! マジで!? マジで婚約者!?」
「きゃああああああ! 婚約者だなんて素敵!」
「ナギサてめぇ! 聞いてねぇぞ!?」
「あんな美人な婚約者がいるなんて、許せねぇ!」
教室は
そんな中、ヒカリちゃんはコツコツとこちらに歩いてきて、ボクの隣の空席に座った。事前に席を聞いていたのかもしれない。
「お久しぶりですね。ナギサ君」
「う、うん……」
ヒカリちゃんは、あの頃の面影を残しつつも、可愛らしい素敵なレディへと成長していた。
昔の病弱で弱々しい雰囲気は全くない。
「ふふっ、積もる話もあります。また後で、たくさん話をしましょうね?」
ヒカリちゃんは、にっこりと眩しいくらいの微笑みをボクに向けた。
その微笑みに、ボクの心臓はドキリと高鳴る。か、かわいい……。
♢
結局、今日一日、ヒカリちゃんとはロクに話が出来なかった。
ヒカリちゃんは女子達に囲まれ、ボクは男子達に囲まれ問い詰められたのだ。
親友のフトシは「この裏切り者め……」と血涙を流していた。
「ふぅ、なんやかんやで疲れたな……。今日はもう、真っ直ぐに帰ろう」
学生カバンを持って帰宅しようとすると、ヒカリちゃんがこちらに向かって、歩いてきた。
「ナギサ君、今から帰宅ですか?」
「そ、そうだよ、ヒカリちゃん」
まだ彼女に対して緊張する。何しろ十数年振りの再会なのだ。
「では、一緒に帰りましょう」
「う、うん……!」
ボクは照れつつも、その提案を了承する。
「きゃああああ! やっぱり一緒に帰るのね!」
「おのれナギサあああああ!」
「ああああああああああああ!」
彼女と共に下校をする。途中、何度も男子生徒の羨ましそうな視線を浴びた。
「そう言えば、帰り道はこっちでいいの?」
ボクはふと気になったので、ヒカリちゃんに聞いてみる。
「はい、ナギサ君と同じ方向ですので」
「そっか」
「あの、ナギサ君?」
「は、はい!」
ボクはとっさにに固い返事をしてしまう。
「久しぶりに手を……繋いでもいいですか?」
彼女は恥ずかしそうに、頬を赤らめて提案する。ボクは昔、よく手を繋いでいた事を思い出す。
「う、うん……! ボクの手で良かったら……!」
「ふふっ、よかったです」
ヒカリちゃんと十数年越しに手を繋ぐ。柔らかさと温もりを感じる小さな手に、ドキドキして頭が真っ白になりそうだ。
そうこうしているうちに、あっという間にウチのマンションの前につく。
「じゃあ、ボクはここだから。また明日、会おうね」
そう言って彼女と別れようとしたが、彼女は首を振る。
「私もここですので」
「え? 同じマンションなの?」
「はい、そうなんです」
エレベーターで3階へと上がる。すると彼女もそこで降りた。
「へ、へぇ、同じ階なんだ?」
「はい、同じ階ですね」
スタスタと302号室前で止まり、今度こそ別れを告げる。
「じゃあ、ボクはここだから」
「はい、私もここです」
「え?」
一瞬、何を言っているか分からなかった。
「今日から一緒に同棲させて頂きます、天王寺光莉です。ふつつかものですが、どうぞよろしくお願いしますね!」
彼女はぺこりと頭を下げる。
「じょ、冗談……だよね?」
「いえ? 冗談ではありませんよ? だって私たち“婚約者”……ですから」
彼女は頬を赤らめ、恥ずかしそうにそう言った。
「えええええええええええええええ!?」
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