『大人になったら結婚しようね』って約束した幼なじみに10年後に再会したら、“超絶美少女”になっていて本当に結婚する事になっちゃいました……
腹ペこ。
同棲編
幼なじみは婚約者!?
未だにボクは夢に見る。幼かった頃の思い出を。
「けほっ! けほっ!」
「だ、大丈夫!?」
ボクは彼女の背中を優しくさする。
「わたし、長生きできないんだって……」
彼女は悲しそうな顔をして、
「な、なんで?」
「夜中にね、こっそり起きたら、お母様とお父様がそう言ってるのを、聞いちゃったんだ……」
「そんな……」
幼ないボクは必死に彼女を励まそうと、頭を悩ます。
「うーんと……うーんと……」
そしてあることを
「そうだ! 大人になったらボク達“けっこん”しようよ!」
「“けっこん”? でもわたし、そこまで生きられないよ……?」
彼女は首を傾げて、こちらを
「そんなことない。約束だよ! 約束は絶対に守らなくちゃいけないんだ! だから、だから……それまで生きてなきゃだめなんだよ! ……ぐすっ」
幼いボクの瞳からは、思わず涙があふれていた。彼女を失いたくないと必死だったんだ。
そんなボクを見た彼女は、口元を
「くすっ、じゃあ約束だよ? 大人になったら、わたしを“お嫁さん”にしてね? わたし、それまでがんばるからね!」
それを聞いたボクの顔はパァと明るくなる。
「うん、絶対! “指切りげんまん”してもいいよ!」
ボクは彼女に小指を差し出すと、彼女はふるふると首を振った。
「え?」
「ううん、“ふーふ”はね? もっと“とくべつ”な方法で約束をするんだよ?」
「“とくべつ”?」
今度はボクが首を傾げる番だった。
「うん、目を閉じて?」
「う、うん……」
言われるがままにボクは目を閉じる。
「……ちゅっ♡」
するとボクのくちびるに、柔らかくて優しい感触がした。
「こ、これは!?」
「えへへ、“ふーふ”はね? キスをして約束を誓うんだよ? 結婚式でみたの!」
「そうなんだ! これで“ふーふ”……だね! “ヒカリちゃん”!」
「ふふっ、そうだね!」
それは遠い遠い、夢のような思い出。でも、確かにそこには……あったんだ。
♢
「また昔の夢を見たな……」
ボク名前は“
ボクはけたたましいスマホのアラーム音をオフにして、寝ぼけた目をこすりながら起きる。
夢で見た彼女のことを思い出す。
「“結婚”……かぁ。我ながら
幼稚園を卒園して以来、彼女とは一切コンタクトをとっていない。
卒園後、療養のためにどこか遠くに行ってしまったためだ。
『わたし、長生きできないんだ……』
彼女の言葉を思い出し、嫌な予感が脳裏を
「いや! ヒカリちゃんはどこかで元気にやってるさ! うん、絶対!」
自分の頬をパンパンと叩き、強引に気持ちを切り替える。
「さて、朝の支度をして学園に向かわなきゃ!」
もう彼女も覚えているかも怪しい、幼き日の約束。でもいいんだ。
あの日、あの時、彼女を確かに励ましたあの約束は、決して間違いではなかったと信じているから。
♢
学園に向かう途中で、後ろから肩を叩かれる。
「よぉ、ナギサぁ!」
元気よく挨拶をしたのは友人の
「おはようフトシ。今日も元気だね」
「ったりめぇよぉ! オイラは今日も元気だぜ! そういや、聞いてるか?」
「ん? 何を?」
フトシはコソコソとボクに耳打ちをする。
「なんでも今日、ウチのクラスに転校生がくるってウワサだぜ?」
「へぇ〜、転校生かぁ」
「なんでもよぉ、どっかのいいところのお嬢様だってウワサだぜ?」
「そのウワサはどっから仕入れてくるの?」
「へへっ、そいつぁ企業秘密だぜ! 胸のでかい、いい女だといいよなぁ……」
フトシはまだ見ぬ転校生に、うっとりとしている。
「でも美少女だったとしても、競争率高すぎて、付き合えないんじゃない?」
「そいつを言うなってーの! 夢を見るのは自由だぜ!」
他愛のない会話を交わしながら、ボク達は学園に向かった。
♢
ウワサは広まっているのか、クラスのみんなはざわざわと浮き足だっていた。
「──みんな静かに」
担任の
長い黒髪と、端正な顔立ち、そしてなによりも凛とした
その美貌とさっぱりとした性格から、男子生徒にも女子生徒にも人気のある先生だった。
「えー、みんなが静かになるまでに2分もかかりました。2分もあれば、硬めのカップラーメンが食べられるぞ。美味しいからぜひやってみてくれ」
なんだかよく分からない例えを披露した先生だった。今度、硬めのカップラーメンやってみようかな……。
「では、朝のホームルームを始める。っと、その前に──」
クラスが再びざわつき始める。
「みんな、もう知っているようだな。喜べ男子諸君、転校生は女子だ」
クラスの男子が歓声に沸く。
「では入ってきてくれ」
ガラリと教室の引き戸を開けて、転校生の女の子が入ってくる。
その瞬間、教室のみんなは息を呑んだ。理由は単純。あまりにも彼女が“
輝くようなふわふわの金髪、透き通るような青い瞳、色白で人形のように整った顔立ち。モデル顔負けの美しさだった。
「今日から転入することになった、
にこりと
だってその顔と名前は、幼い頃に結婚を約束した彼女そのものだったから。
「うおおおおおお! かわいいー!」
「天使かよ!?」
「そこいらのモデルなんか目じゃねーぞ!」
「よっしゃあああああ!」
「胸でけぇな、おい!」
教室の男子からあがる歓声を、美月先生が手を叩いて
「はいはい、気持ちは分かるが、落ち着け男子共。ヒカリ、他に何か言うことはあるか? 特技でも趣味でもなんでもいいぞ」
「そうですね……」
彼女は教室をおもむろに見渡した。そして目当てのモノでも見つけたのか、にこりと微笑んだ。
「私はそこにいる彼、ナギサ君の“婚約者”です♡」
彼女は頬を赤らめて、そう高らかに宣言した。
「──え?」
一瞬、教室の時が止まった。
「「「ええええええええええええ!?」」」
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