球技大会特訓 その1
「来週は球技大会のドッヂボールがあるねー! ヒカリちゃん!」
「はい……そうですねぇ……」
ヒカリちゃんはどよ〜んと落ち込んでいた。
「ど、どうしたの? ヒカリちゃん」
「あはは……いえ、私ではチームのお荷物になるのが確定しているので……あはは」
「…………」
ヒカリちゃんは確かに運動音痴だからなぁ……。いや、でも何かボクに出来ることがあるはずだ……!
「ああ、白鳥になって、優雅にどこかに飛んで行ってしまいたいクエ……」
語尾に鳥っぽく“クエ”をつけるヒカリちゃん。か、かわいい……。
「そう言えばさ、優雅に泳いでいる白鳥も、実は水中ではバタバタと足を動かしているんだよね」
「そうなんですクエか!?」
「うん、だから明日は、ちょっとだけバタバタしてみない?」
「──クエ?」
♢
休日、ボク達は近くの公園に来ていた。
「こーえんで、遊ぶのたのしみー!」
きゃっきゃっとはしゃぐ幼い少女──ヒカリちゃんの妹のトバリちゃんも、ヘルプとして呼んである。
「おねーちゃん! びしびししごくから覚悟してねー!」
「お手柔らかにお願いしますよぉ……。トバリィ」
「じゃあ、まずは準備運動から始めよっか!」
3人で準備運動を始める。ふぅ、身体があったまってきたな。
「ふぅ……ではちょっと休憩しましょうか?」
「まだ準備運動終わったとこだよ!?」
「おねーちゃん! 早すぎー!」
仕方ないのでヒカリちゃんの息が整うを待ってから、ランニングを開始。
「まずは軽くランニングから始めよう。体力はどんな球技にも必要だからね」
「わーい! 走るよー!」
「は、はい……!」
すると少し走ったところで、ヒカリちゃんがピタリと止まった。
「ヒカリちゃん?」
「ぜぇ……ぜぇ……ふぅ……。ああ……24時間走った後に流れる、定番の曲“フナイ”が聞こえくるようです……!」
「まだ50mだよ!?」
「おねーちゃん……うんどー、うんち……」
「
ボクは自販機でスポーツドリンクを2本買って、ヒカリちゃんとトバリちゃんに渡す。
「2人とも、今日は暑いからしっかり水分補給してね」
「ありがとうございます、ナギサ君!」
「ありがとー! おにーちゃん!」
2人は蓋を開け、美味しそうコクコクと飲み始める。
「あの、よかったらナギサ君もどうですか?」
ヒカリちゃんは自分のスポーツドリンクをボクの方に向ける。
「う、うん、ありがとう……」
間接キスになっちゃうなーと思ったけど、さんざんキスしといて今更か……。
ボクは少しだけドキドキしながら、スポーツドリンクをこくりと飲んだ。
「あー、ずるーい! ならあたしもおにーちゃんにスポーツドリンクあげるー!」
トバリちゃんがボクに、ずいっとスポーツドリンクを渡そうとする。
「ダメですよー、トバリ! そういうのは好きな人とじゃないと!」
「そうだよー? トバリちゃん」
「──ふしだらな女とわらいなさい……!」
トバリちゃんは大人びてそう言った。
「ど、どこでそんな言葉を覚えたんですかー!」
「ばぁばが言ってた!」
ばぁばさぁ……。
♢
その後、トバリちゃんの持ってきたボールでドッヂボールの練習を開始した。
ボクとトバリちゃんで、ヒカリちゃんを挟み込む形をとる。
「おねえちゃん! 行くよー!」
「は、はい……!」
「──ひけん・とびいづなー!」
トバリちゃんは当たっても痛くないふわふわのボールを、ヒカリちゃんに向かって投げる。
「あうっ……!」
あっけなく当たるヒカリちゃん。
「おねーちゃん、ひとつもうごいてないよー!」
「投げた瞬間に、目を閉じてるね……」
「だってボール怖いじゃないですかー!」
これはなかなか、練習しがいがありそうだな……。
♢
「づ、疲れました〜」
「わーい! 楽しかったー!」
対照的な2人と共に帰宅する。
「今日はお泊まりしていいって、おとーさまに言われたんだー!」
「もぉ〜お父様ってば、トバリには激甘なんですから〜」
「そっか、じゃあ2人ともお風呂入っておいでよ。汗かいてるでしょ」
「ありがとうございます……! えぇ、もう汗だくなんですよ〜。ほら、トバリ、お風呂行きますよ〜」」
「はーい!」
そう言って、ヒカリちゃんとトバリちゃんは脱衣所に入って行った。
♢
「たいへん、たいへーん!」
トバリちゃんが風呂から上がって、ボクに何やら報告にきた。
「どうしたの?」
「おねーちゃんの腕が“きんにくつー”で身体が洗えないんだって!」
「え!?」
♢
「入っても大丈夫ー? ヒカリちゃん……」
「はい……」
ボクが恐る恐るお風呂に入ると、ヒカリちゃんが硬直していた。
彼女の裸の後ろ姿にドキリとする。
「すみませーん……急な筋肉痛で腕が動かないですぅ……」
「今日、ちょっと無理させちゃったかな……ごめんね」
「いえ、ナギサ君のせいではないですよ。すみません。後は背中側だけなので、お願いできますか?」
「う、うん、任せて……!」
前、ボクがやってもらったみたいに、手のひらにボディソープをつけて、泡立て、ヒカリちゃんの背中を洗う。
「ひゃん///」
ヒカリちゃんが艶のある声をあげて、ドキリとする。
「ご、ごめん! 大丈夫?」
「いえ、平気ですので、お構いなく……!」
「そ、そう?」
ボクは再び背中に泡を塗りたくる。あぁ、女の子の肌って、すべすべでもちもちで、触っていて飽きないな……。ぬるぬる……。
「ふっ、ふふっ……ひゃあん///」
き、気にするな……!
ふぅ、これで終わりかな?
「あっ、脇の下、忘れてました……」
「…………」
ヒカリちゃんの細くて可憐な腕を手に取り、脇の下から脇腹にかけて、手を滑らせる。
「ううっ/// ひゃああん!」
正直に言えば心臓が破裂するくらい、ドキドキする。って、あれ?
「これって、トバリちゃんに手伝ってもらえばいいんじゃ……」
「……あっ」
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