遊園地へGO!

 せっかくの夏休み。ボクとヒカリちゃんは遊園地にデートをしに来ていた。


「ふふっ、遊園地と言ったら、黒ずくめの男の怪しげな取引現場探しですよね!」

「そうかな!?」


 ボクは遊園地のパンフレットを広げ、アトラクションを吟味ぎんみする。


「う〜ん。やっぱり最初は定番の観覧車かな〜。ボク、好きなんだ〜。ここからの景色は綺麗そうだし」

「な、な、なるほど、か、か、観覧車ですね?」

「うん、どうかな?」

「え、ええ……、ぜ、ぜひ!」

「?」


 どこか挙動不審なヒカリちゃんと、観覧車のゴンドラに乗り込んだ。


 ゆっくりとゴンドラは上昇し、どんどん景色が遠くまで見えるようになる。


「うわー! 綺麗だねー! って、ヒカリちゃん……?」


 ヒカリちゃんの顔がさぁーと青ざめていく。


「もしかしてヒカリちゃん、高所恐怖症……?」

「うっ……はい、実はそうなんです……」

「言ってくれれば……」

「ううっ、すみません……。言えば、ナギサ君が遠慮すると思って……。好きなアトラクションには乗って欲しかったんです……」

「ヒカリちゃん……ありがとう」


 ヒカリちゃんの気遣いを嬉しく思うとともに、なんとか彼女の恐怖を和らげてあげたいとも思った。


 う〜む。あっ、“あの方法”ならどうかな……? うっ……ちょっぴり恥ずかしいけど、し、仕方ない……!


 ボクはヒカリちゃんの横に移動する。


「ヒカリちゃん、こっちを見て」


 ボクは彼女の顔を、真剣に見据えてそう言った。


「な、なんですか? ──んっ!?」


 ボクはヒカリちゃんの唇をふさぐ。そして、そのままじっくりと舌を絡ませる。


「んんっ!? ふっ……れろ……んっ……んんっ……」


 ヒカリちゃんの目がとろ〜んとする。よしよし。


「い、いきなりなんですかぁ///」

「ヒカリちゃん、今はボクだけを見て」

「は、はぃぃ……(ナギサ君、積極的でドキドキしますぅ♡)」


 丁度、てっぺん辺りまで到着したな。後は、このままキスに夢中にさせて、恐怖を感じる暇を与えないぞ!


 再び彼女を抱きしめて、優しいキス、ついばむようなキス、深いキス、様々な手練手管てれんてくだを使い、彼女を夢中にさせる。


「んん♡……はむ……♡……んんんんっ♡」

「まだまだ……だよ?」

「は、はぃぃ///」


 しばらくして、外を見るとゴンドラがようやく下に到着しそうだ。


「ど、どうだったかな……?」


 すると彼女は頬を赤らめて、こう言った。


「あのぉ……もう一周、しませんか?」

「えええええ!?」


 結局、もう一周することになりました……。





「ん? あれは……」


 遊園地を歩いていると、見覚えのある顔が……。


「美月……先生?」

「ぎくっ!」


 あっ、露骨な反応した。やっぱり先生だ。


「1人……ですか?」

「そ、そうだ! 悪いか! 独り身で悪いか! うわーん!」

「い、いえ、別に1人でもいいじゃないですか……気楽で」


 ま、まぁ、ボクだったらそんな勇気はないけれど……。


「ううっ、ここのマスコットキャラクター“ステゴロ”が好きだから、しょっちゅう癒されに来るんだよぉ……。悪いかよぉ……」

「ステゴロ可愛いですよねー!」

「おおっ、分かってくれるか! ヒカリ! おっ、ステゴロの着ぐるみがいるぞ! 行くぞ! ヒカリ!」

「はい!」


 2人は仲良くステゴロとたわむれている。というより喧嘩……してる?


「勝ったぞー!」

「勝ちましたー!」


 2人はステゴロから何か貰うと、こちらへ帰ってきた。


「ステゴロと素手で喧嘩して勝つと、特製ステゴロストラップが貰えるキャンペーン中なんだ!」

「そんな物騒なキャンペーンやってるんだ!?」

「次は剣のステゴロを倒しに行くぞ! ついてこい!」

「──はい!」

素手喧嘩ステゴロなのに剣使うんだね……」


 喧嘩に負けたステゴロが起き上がると、ぽろっと首が取れた。


「あわわっ、しまったであります!」

「あれ? レン?」

「あわわわ! な、なんのことでありますかステゴロ!?」

「そのキャラの語尾、ステゴロなんだ……」


 どうやら短期バイトか何かで、着ぐるみを着ているようだ。


「バイト頑張ってね、レン」

「だ、誰のことだかわからないでステゴロ!」

 




 夜の遊園地に花火が上がる。夏限定のイベントだ。


「きれいですねー!」

「うん、すごい迫力!」

「あぁ、今日来たかいがあったな……ナギサ」

「しれっと、最後までいるんですね……」

「レンもバイト終わりで、実はいるでステゴロ!」

「うわっ、いつの間に!? 」


 ドンドンと炸裂する色とりどりの花火達。


 気づけばボクとヒカリちゃんは肩を寄せ合い、手を繋いでいた。


「また来年も観に来たいですね」

「うん……!」


 




 



 

 


 

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