カップル限定……
「本日、カップル限定イベント、開催しておりまーす!」
ヒカリちゃんと街を歩いていると、女の人にビラを渡された。
「へぇ、この食事のお店にカップルで行くと、色々特典が貰えるみたいだよ?」
「そろそろお昼ですし、行ってみますか?」
「うん、そうだね」
ビラに書いてあった店に入店し、着席する。
「本日、カップル限定でドリンクとストラップをプレゼントしております」
「じゃあ、このランチセットを2つと、カップル特典をお願いします」
注文すると、大きいグラスの中に、飲み口が2つあるストローが刺さったドリンクが運ばれてきた。
「こ、これは……!」
「カップルで2人で飲む奴ですね……!」
漫画やドラマとかでしか、見たことのないやつだ! これを人前で2人で飲むのは、ちょっぴり恥ずかしいな……。
「あのぉ……、せっかくなので頂きましょうか?」
「そ、そうだね……!」
ボクとヒカリちゃんでストローを吸う。自然と顔が近づいて、ヒカリちゃんと目が合う。
するとヒカリちゃんは、にっこりと微笑んだ。その笑顔に、思わずボクはドキリとする。
「ズズッ(ううっ、ヒカリちゃん可愛い……)」
「ズズッ(ふふっ、照れてるナギサくん、可愛い♡)」
なんだろう。いつもキスしているはずなのに、これはこれでドキドキする。
食事を終えると、カップル限定特典の“ラブラブ・カマキリストラップ”を貰った。
「オスとメスと2匹のカマキリさん、可愛いですね〜!」
「ヒカリちゃんにあげるよ!」
「ありがとうございます! 大事にしますね!」
ラブラブ・カマキリかぁ。確かカマキリって交尾した後に、メスがオスを食べちゃうじゃなかったっけ?
なんて生き物を、恋人のストラップにチョイスしてるんだよ……。
「ふふっ、このストラップのラブラブなカマキリ。まるで私達みたいですね」
「ボ、ボクは食べても美味しくないからね!?」
「?」
♢
「カップル限定イベントやってまーす!」
街を歩いていると、再びビラを渡された。んー? なになに。
『ベストカップルコンテスト! 一位のベストカップルには豪華景品!』
「面白そうだね! やろうよ!」
「は、はい……!」
♢
『第34回ベスト・カップルコンテスト開催です! 審査員はこの方!
『カップルなんて、みんな滅びればいいのに……』
審査員の人選、明らかにミスってるよね!?
『最初の1組はこちら! ミッチーとゴブリンさんペアです!』
「おで……ミッチー……守る」
「やん/// ダーリンったら!」
すげぇのが来たな……。
『さぁ、ベストカップルアピールをお願いします!』
「おで……ミッチー……のせる」
「ふふっ、お願いね……」
『おっーと! ゴブリンさん、その巨体を活かして、ミッチーさんを肩にのせたー!? これはなかなかのアピールです!』
『ほぉ……これはなかなか……。80点ですな』
『いきなり高得点です! これは激しい戦いになりそうだー!』
♢
筋肉カップル、熟年夫婦カップル、ムエタイ式カップル、様々なカップルがアピールをし、現在の最高得点は96点だ。
これを超えるのは至難の技だろう。そしていよいよ最後はボク達の番だ。
「だ、大丈夫ですかねねねねねね」
ヒカリちゃんが他のカップルのアピールに圧倒され、緊張してきたようだ。
「まぁ、負けてもいいし、気楽に行こうよ」
ボクはそっと彼女の肩に手を置く。
「あばばばばばば」
「大丈夫かな……」
『さぁ、最後を締めくくる“ナギサ&ヒカリ”ペア! ベストカップルアピールをお願いします!』
「………」
「……あの、ヒカリちゃんのトリプルアクセルからのボクがトリプルトウループの流れだよ?」
『お願いします!』
「………………」
心ここに在らずといった感じでポカーンとしている。会場もざわつき始めていた。
『おっーとこれは、緊張からか、アピールが出来ないアクシデント発生かー!?』
「ご、ごめんなさい……。ナギサ君。頭が真っ白になっちゃって……。ベストカップルの名を手にするチャンスなのに……」
小声でプルプルと彼女は震えていた。
「…………」
このコンテストに誘ったのはボクだ。ならボクがフォローをしてあげないと……!
ボクはぎゅっと拳を握りしめ、気合を入れる。
そしておもむろに彼女に近寄るとぎゅっと抱きしめた。彼女の震えを止めるかのように。
「あっ……」
『おっと! いきなりのハグだー!』
『ほう、ベタですが王道ですな』
うん、いろいろとベストカップルアピールを考えてはみたものの、やっぱりボクらには“これ”が一番ふさわしい。
ボクは彼女の唇に優しくキスをした。
「〜〜〜〜〜〜///!?」
ボンっとヒカリちゃんの顔が真っ赤になる。
『おっーと! 大勢の観客の目の前でキスだぁぁぁ! これはアツアツだぁ! いかがでしょうか!?』
『彼女が照れてるのがまた初々しいですね。やっぱり恥じらいなんですよ。青春なんですよ。甘酸っぱいんですよ。100点!』
『ナギサ&ヒカリペア、堂々の優勝だぁー!』
わぁぁぁと会場が歓声に包まれた。
♢
景品はハート型のペアネックレスだった。
「なるほど、2人のネックレスを合わせるとハートが完成する訳ですね」
「うん、なかなかおしゃれだね〜」
ボク達は首にネックレスをぶら下げて、お互いのハートを合わせる。
「ふふっ、完成しましたね」
「うん……」
「ありがとうございます。ナギサ君のおかげで優勝できました」
彼女は嬉しそうに微笑む。
「いや、なんかいきなり人前でキスしちゃって、ごめんね。嫌じゃなかった?」
彼女は
「私が不安で何も出来なかった時、ぎゅっーと抱きしめてくれて、とっても頼もしかったです。それとキス……も嬉しかったです///」
彼女は頬を赤らめて照れている。
「それなら、よかった……」
ボクはふっと笑みを浮かべる。
「あの……えと……それで……」
「ん? なにかな?」
彼女は上目遣いでモジモジとしている。
「あの〜人前でキスするのって興奮……しませんか?」
「──しないよ!?」
「そんな〜……」
どうやら彼女の変な性癖を開拓してしまったらしい。
「人前はもう無理だけど、代わりにキス……たっぷりする……から」
ボクは照れながら、ポリポリと頬を掻く。
「──じゃあ早速、ちゅー♡」
「うわー! いきなり!?」
うん、やっぱりボク達はベストカップル……だよね?
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