応援上映へGO!
「“劇場版魔法少女〜
遊びにきたトバリちゃんがそう言った。
ボクはスマホを取り出して、上映館と上映日時をチェックする。
「うん、席も空いてるみたいだし、いいんじゃないかな? ヒカリちゃんはどう?」
「ええ、トバリが観たいなら、OKですよ。ふふっ、“仁義なき闘い”シリーズ、まだ続いてたんですね」
ヒカリちゃんは懐かしむような顔をしている。
「ヒカリちゃんも子供の頃、観てたの?」
「はい、子供の頃は毎週、楽しみにしていたのものです。確か“広島抗争編”までは観ていた記憶がありますね……」
「ほんとに魔法少女モノなんだよね……?」
「はい、3話のラストでイエローのアネさんがチャカで撃たれて亡くなった時には、みな衝撃をを受けたモノです……」
「それ本当に女児向けアニメなの!?」
♢
映画館には親子連れのお客さんがたくさんいた。
「映画たのしみ〜♪」
トバリちゃんの右手をボクが、左手をヒカリちゃんが繋いでいる。
《ねぇ、ねぇ、アレ親子かな?》
《うーん、若すぎる気もするけど、確かに女の子の顔はそっくりだね》
周りのお客さんの声が聞こえた。
「ふふっ、私達、親子連れに見えるんですかね?」
「はは、もしかしたらそうかもね」
「パパとママってよんであげよーか?」
「は、恥ずかしいからやめて〜」
「はーい、パパ♡」
ぶっとボクは吹き出した。
「こーら! トバリ、パパをからかっちゃダメですよ?」
「ヒ、ヒカリちゃんまで〜!」
「くすくす」
「きゃっきゃっ!」
2人にからかわれて、ボクの顔はちょっぴり赤くなる。
からかわれっぱなしは
「ママは今日も綺麗だね〜」
「うん! ママキレー!」
「マ、ママ///!?」
ヒカリちゃんの顔がボンっと赤くなる。
ボクとトバリちゃんは顔を見合わせて、クスクスと笑い合う。
「い、言われてみると、案外恥ずかしいですね///」
「ママ、顔真っ赤だよ?」
「ママ、顔まっかー!」
「もう、勘弁して下さいよぉ……///」
♢
「あっ、アレほしいー!」
トバリちゃんが指差したのは、魔法少女ステッキだった。
アレを使って、上映中に応援パワーを送る事もできるとか、ネットに書いてあったな。
「じゃあ、ボクが買ってきてあげるよ!」
「わーい!」
「ナギサ君、私が買いますよ?」
「ううん、ヒカリちゃんはここでトバリちゃんと待ってて」
そしてボクはグッズを購入して、トバリちゃんに渡す。ちなみにファンの間ではグッズに金を払う事を“上納金”と言うらしい。
「はい、“チャカステッキ”だよ〜」
「わーい! おにーちゃん、ありがとー!」
トバリちゃんは嬉しそうに、はしゃいでいる。
「ナギサ君、すみませんね……」
「それと、はい……!」
ボクはヒカリちゃんにもグッズを渡す。
「これは……」
「うん、“ポン
「わ、私も応援してもいいんですかね?」
「もちろん、ヒカリちゃんだって、ファンだったんだからね。たまには童心に帰ってもいいんじゃないかな?」
「ふふっ、それでは頂きます。ありがとう、ナギサ君」
ポン刀を持ったヒカリちゃんは、少し照れ臭そうに、でもやっぱり嬉しそうに微笑んだ。
「映画館のショバ代も払って、チケット貰ったし、そろそろ入場しよっか!」
「わっくわっく!」
「楽しみですねー!」
♢
上映がいよいよ始まった。
『……ふぅ、やっぱりシャバの空気は美味いわね』
『ブラックのアネさん、お勤めご苦労様です』
シャバの空気がうまいから始まる魔法少女モノなんてある!?
そして、最初は本編ストーリーのおさらいが始まった。
『どうじゃあ、ウチの組に入って、ひと暴れしてみんか?』
広島弁の眼帯を付けたマスコットキャラクター“スジモン”がブラックに魔法少女の契約を持ちかける。
「スジモンかわいー!」
いや、なんか超怖いんですけど!?
────『こうして、廃工場で怪しげな取引現場を見かけた私は、気がつけばスカウトされ、魔法少女になっていたの』
少女の回想は終わり、ブラックはどこかへ向かう。
『……久しぶりね』
『ああん!? ブラックか!? 今更、ウチのシマに何しにきやがったんじゃあ!?」
『……アナタがあくどい商売に手を染めたって聞いてね。カタギに迷惑をかけるなんて、魔法少女としての
『黙って聞いてりゃぁ、偉そうな事言うのぉ!』
『……消えなさい』
いきなりブラックは魔法で生み出したロケットランチャーを構えた。
ええええ!? 武器、ロケットランチャーなの!?
《みんな、シノギパワーを送って!》
シノギパワーって、何か嫌なエネルギーだな……。
「ブラック、がんばえー!」
「ブラック、ぶっぱして下さーい!」
ヒカリちゃんとトバリちゃんがノリノリで応援している。
力を溜めたブラックは、見事にロケットランチャーを発射し、派手な爆発を引き起こす。
『ぎゃあああああああああ!』
『……反省するのね』
♢
「魔法少女の内ゲバ、たのしかったー!」
「やはり魔法少女は内部抗争に限りますね!」
「これ本当に幼児向けなの……?」
仲間であるはずの魔法少女同士で、血で血を洗う、まさに仁義なき闘いでした……。
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