修学旅行
ボク達は修学旅行で京都に来ている。新幹線で京都駅に着いて、一旦、駅の外で全員集合。
「うわー! アレが京都タワーですか!」
ヒカリちゃんが駅の外から、京都タワーを見上げていた。
「いやー、壮観であります!」
生徒のみんなはスマホでパシャパシャと記念撮影をしている。
「へへっ、京都と言ったら、やっぱり八ツ橋だよな。帰りにしこたま土産に買って帰るぜ!」
「さっきボク、チラッと見たけど、京都限定の“抹茶味ぶらっく・さんだぁ”とかあったよ」
「なに!? そいつは外せねぇな!」
駅前で班ごとに固まる。ボク達の班はヒカリちゃん、レン、フトシである。
「みんな揃ってるか、班ごとに確認してくれ。揃っているようなら、バスに乗って、“
美月先生も心なしか、声が弾んでいる。よく見ると、目の下にクマができている。
もしかしたら、楽しみで眠れなかったのかな……?
♢
バスから降りると、すぐに
「見て下さい! 可愛いキツネさんの像がありますよ!」
「いやはや、これはキュートでありますなぁ!」
「ん? 2匹のキツネが何か咥えてるぜ?」
「これは
ボクはパンフレットを覗きながら解説する。
「へぇー! そうだったんですねー!」
境内に入ると、至る所にキツネの像が散見された。
そのまま境内を進むと、荘厳で朱い本殿がどっしりと構えていた。
「おおっ! すげー迫力だぜ!」
「何か神聖な雰囲気を感じます……」
「パワースポットってやつかな?」
「これはお
穀物の神を
「(野菜が安くなりますように……)」
「(家内安全でお願いします……)」
「(店長に頼まれたので、商売繁盛でお願いしたいであります……)」
「(今度乗るカニ漁船から無事に帰って来れますように……)」
気づけば、隣で美月先生も熱心にお
「(男男男男男男男男男男男男男男男男男)」
たぶん縁結びだな……。
♢
いよいよ有名な
「うわー! 本当に千本くらいあるんですねー!」
「稲荷山全体では一万基あるらしいでありますよ」
「それはすごいね……」
「もちろん、山頂まで登るよな?」
フトシがうっしと、やる気を見せている。
「あのー、山頂までどのくらい掛かるんでしょうか?」
「1時間くらいっぽいよ?」
「い、1時間ですか!?」
ヒカリちゃんは青ざめている。
「まぁ、キツくなったら途中で降りよう。行けるとこまででいいから」
「そ、そうですね……!」
♢
「づ、づかれました〜……」
「まだ10分だよ……ヒカリちゃん」
「まぁ、休憩する所は、たくさんあるでありますから、まったり行くでありますよ」
「おっ、ここの休憩所、抹茶アイス売ってるぜ! へへっ、オイラ、食べよー!」
「わ、私も食べます!」
「ではレンも頂くであります!」
「じゃあボクも食べようかな」
結局、みんなで抹茶アイスをちびちびと食べながら、休憩した。
登頂再会後、ヒカリちゃんはヒィヒィ言いながらも頑張っている。
「あんまり無理しなくてもいいからね?」
「いえ、せっかくの京都ですし、自分の限界に挑戦してみたいんです……!」
ヒカリちゃんの目には強い決意が宿っていた。
「そっか……! 頑張ろう、ヒカリちゃん!」
「はい……!」
♢
「ぜぇ……ぜぇ……」
「ヒカリちゃん、荷物、ボクが持ってあげるよ」
「……いいんですか?」
「遠慮しないで。辛い時に頼ってね」
ボクはヒカリちゃんの荷物を預かる。
「ありがとうございます……! (ううっ、ナギサ君、優しいです……)」
「こんなこともあろうかと、うちわを持ってきたでありますよ! あおいであげるであります!」
「涼しいです……!助かります、レン」
「あともう少しでありますよ……!」
「へへっ、ここまで来たらみんなで、頂上に行きたいよな! おっ、あそこにベンチがあるぜ! 休憩していこうぜ」
「助かります!」
そうして班で協力し合い、ようやく山頂に辿り着いた。
「やったね、ヒカリちゃん!」
「はい……! やりました……!」
「天晴れであります!」
ヒカリちゃんは、達成感からか晴れ晴れとした顔をしている。
みんなで記念に撮影をした。
「さぁ、ここから、下山だぜ!」
「ヒカリちゃん、行ける?」
「……はい、行けます!」
「おお! その息でありますよ!」
山を登りきった自信からか、少したくましくなった気がするヒカリちゃんを見て、ボクは自然と笑みが浮かんだのでした。
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