修学旅行

 ボク達は修学旅行で京都に来ている。新幹線で京都駅に着いて、一旦、駅の外で全員集合。


「うわー! アレが京都タワーですか!」


 ヒカリちゃんが駅の外から、京都タワーを見上げていた。


「いやー、壮観であります!」


 生徒のみんなはスマホでパシャパシャと記念撮影をしている。


「へへっ、京都と言ったら、やっぱり八ツ橋だよな。帰りにしこたま土産に買って帰るぜ!」

「さっきボク、チラッと見たけど、京都限定の“抹茶味ぶらっく・さんだぁ”とかあったよ」

「なに!? そいつは外せねぇな!」


 駅前で班ごとに固まる。ボク達の班はヒカリちゃん、レン、フトシである。


「みんな揃ってるか、班ごとに確認してくれ。揃っているようなら、バスに乗って、“伏見稲荷大社ふしみいなりたいしゃ”に行くぞー!」


 美月先生も心なしか、声が弾んでいる。よく見ると、目の下にクマができている。


 もしかしたら、楽しみで眠れなかったのかな……?





 バスから降りると、すぐに伏見稲荷大社たいしゃが姿を現した。


「見て下さい! 可愛いキツネさんの像がありますよ!」

「いやはや、これはキュートでありますなぁ!」

「ん? 2匹のキツネが何か咥えてるぜ?」

「これはたまと鍵。花火の時に叫ぶ、たまやーとか、かぎやーと関係があるみたいだよ」


 ボクはパンフレットを覗きながら解説する。


「へぇー! そうだったんですねー!」


 境内に入ると、至る所にキツネの像が散見された。


 そのまま境内を進むと、荘厳で朱い本殿がどっしりと構えていた。


「おおっ! すげー迫力だぜ!」

「何か神聖な雰囲気を感じます……」

「パワースポットってやつかな?」

「これはおまいりせねばならないであります……」


 穀物の神をまつっているとのことなので、それに関連したことを願ってみようかな?


「(野菜が安くなりますように……)」

「(家内安全でお願いします……)」

「(店長に頼まれたので、商売繁盛でお願いしたいであります……)」

「(今度乗るカニ漁船から無事に帰って来れますように……)」


 気づけば、隣で美月先生も熱心におまいりりしていた。


「(男男男男男男男男男男男男男男男男男)」


 たぶん縁結びだな……。





 いよいよ有名な千本鳥居せんぼんとりいだ。朱い鳥居がずらっと、どこまでも道を作っている。


「うわー! 本当に千本くらいあるんですねー!」

「稲荷山全体では一万基あるらしいでありますよ」

「それはすごいね……」

「もちろん、山頂まで登るよな?」


 フトシがうっしと、やる気を見せている。


「あのー、山頂までどのくらい掛かるんでしょうか?」

「1時間くらいっぽいよ?」

「い、1時間ですか!?」


 ヒカリちゃんは青ざめている。


「まぁ、キツくなったら途中で降りよう。行けるとこまででいいから」

「そ、そうですね……!」





「づ、づかれました〜……」

「まだ10分だよ……ヒカリちゃん」

「まぁ、休憩する所は、たくさんあるでありますから、まったり行くでありますよ」

「おっ、ここの休憩所、抹茶アイス売ってるぜ! へへっ、オイラ、食べよー!」

「わ、私も食べます!」

「ではレンも頂くであります!」

「じゃあボクも食べようかな」


 結局、みんなで抹茶アイスをちびちびと食べながら、休憩した。


 登頂再会後、ヒカリちゃんはヒィヒィ言いながらも頑張っている。


「あんまり無理しなくてもいいからね?」

「いえ、せっかくの京都ですし、自分の限界に挑戦してみたいんです……!」


 ヒカリちゃんの目には強い決意が宿っていた。


「そっか……! 頑張ろう、ヒカリちゃん!」

「はい……!」





「ぜぇ……ぜぇ……」

「ヒカリちゃん、荷物、ボクが持ってあげるよ」

「……いいんですか?」

「遠慮しないで。辛い時に頼ってね」


 ボクはヒカリちゃんの荷物を預かる。


「ありがとうございます……! (ううっ、ナギサ君、優しいです……)」

「こんなこともあろうかと、うちわを持ってきたでありますよ! あおいであげるであります!」

「涼しいです……!助かります、レン」

「あともう少しでありますよ……!」

「へへっ、ここまで来たらみんなで、頂上に行きたいよな! おっ、あそこにベンチがあるぜ! 休憩していこうぜ」

「助かります!」


 そうして班で協力し合い、ようやく山頂に辿り着いた。


「やったね、ヒカリちゃん!」

「はい……! やりました……!」

「天晴れであります!」


 ヒカリちゃんは、達成感からか晴れ晴れとした顔をしている。


 みんなで記念に撮影をした。


「さぁ、ここから、下山だぜ!」

「ヒカリちゃん、行ける?」

「……はい、行けます!」

「おお! その息でありますよ!」


 山を登りきった自信からか、少したくましくなった気がするヒカリちゃんを見て、ボクは自然と笑みが浮かんだのでした。


 






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