林間学校 その2

「ナギサ君……そんなに欲求不満だったのですか……? 言ってくだされば、いつでも……その……お見せしましたのに……」


 ヒカリちゃんが頬を赤らめた。湯気越しでも分かるヒカリちゃんの身体にドキドキする。


「ヒカリちゃん、違うんだよー!」

「あははっ、ナギサ殿は堂々と女湯を覗くような玉ではないでありますよ。たぶん、何かミスがあったのかと」


 レンのスレンダーなボディを見てしまわないに目を逸らしながら、ボクは感謝する。


「レン……! ありがとう……! 信じてくれて……!」

「ったく……私のクラスの生徒が問題起こすと、面倒だしな。ここには身内しかいないようなもんだから、見逃してやる。今のうちにさっさと出て行くんだな」


 先生のナイスバディから目を逸らしつつ、


「先生……ありがとうございます! きっと、いい人見つかりますよ!」


 とボクは言った。


「余計なお世話だよ……。ほら、急げ」


 先生はしっしと、手を振って退出を促す。


 ボクは感謝して、外に出ようとしたが──


「うわー! 広い温泉ねー!」

「うん、素敵ー!」

「はー、こら立派な湯どす」


 次々と女生徒がすっ裸で入ってきた。うわわわわわわわわ……!


 ボクは咄嗟に女湯に飛び込み、岩の後ろに隠れた。


「ごめん……! ちょっと隠れさせて……!」

「わ、分かりました……!」

「ありゃー、仕方ないであります……」

「全く、お前はしょうがないな……」


 ヒカリちゃんとレンと先生が、ボクを隠すように座ってくれた。


 うぅ、みんなありがとう……。

 

「あー、ヒカリちゃんじゃん!」

「うわー! おっぱい大きいねー!」

「ねぇ、ねぇ、何カップなのー?」


 女生徒がこちらに寄ってきた。ああ……やばいやばい……見つかったら終わる……。


「あはは……」


 まずいと思ったのか、ヒカリちゃんが向こうに移動し、人目を引いてくれた。ありがとう、ヒカリちゃん! 


「ねぇ、ヒカリちゃんは、どこまで行ったのー?」

「(胸の話でしょうか?)Hです……!」

「きゃあああ! ヒカリちゃんもうHまで進んだんだー! ねぇ、ねぇ、どうだったの!?」


 な、な、な、なに言ってるの!? ヒカリちゃん!?


「あー、レンちゃんもいるー!」

「ねぇねぇ、メイドの奴やってよー!」

「あれ、可愛いよねー!」


 今度はレンが人目を引く。ううっ……レンもクラスの人気者だからなぁ……。男子生徒にもよく告白されてるし……。


「あー……アレでありますか。お帰りなさいませー、お嬢様ー! フリフリ⭐︎シャカシャカ⭐︎みっくちゅじゅーちゅ⭐︎」

「かわいいー♡」

「今度、お店行っていいー?」


 レンもさりげなく向こうに移動し、人目を引いてくれている。よし、これなら脱衣所まで……!


「あー! 美月先生がいるー!」

「先生、髪長くて綺麗ですね……」

「おっぱいもおっきいですね〜」

「こ、コラコラ、お前たち、見せ物じゃないぞ! 全く……」


 ああああああ! 先生まで! 部活とかプライベートは残念だけど、クラスではキリっとしてて、人気の先生だった! 


「あれ? 先生の後ろに誰かいますね?」


 ぎくぅ! やばい、やばい、やばい! ボクは咄嗟に後ろに向く。


「あ、ああ……この子はシャイな生徒でな? 素肌を見せるのが恥ずかしいそうだから、お前たちも配慮してやってくれ……」

「えー、後ろ姿、すっごい可愛いのにー……。お名前なんて言うのー?」

「え、えっと、名前はだな……」


 先生がテンパっている。あーもー! こうなったら腹をくくろう!


「ナ、ナギ子……ですぅ……」

「へぇー、ナギ子……ちゃん? 声もかわいいー♡ でも名前聞いたことないなー?」


 ま、まずい……。咄嗟に名乗ったナギ子がアダとなったか……。


「わたしぃ……よく影薄いって言われててぇ……。幻の6人目シックスメンって呼ばれるレベルでぇ……」

「そうなんだねー!」

「ほ、ほらほら、彼女、恥ずかしがってるだろ? さぁ、散れ、散れ!」


 先生、ナイスフォロー!


「はぁ〜い……。じゃあ、またね、ナギ子ちゃん!」


 な、なんとか助かった……。その瞬間──


「きゃあああああああ! 男子があああああ!」


 女生徒の悲鳴が聞こえる。あ、終わった。


「先生ー! 男子がへいを登って、こっちをガン見してまーす!」


 え? ボクじゃ……ない?


「うわあああ! バレたぞ!」

 

 覗きをしていた、男子達が焦っている。


「男子、サイテー!」

「きゃあああああああ!」

「ふざけんなぁ、男子ィ」

「──滅びよ……」


 女子のヘイトが一斉に、覗きをしていた男子たちに向く。


 い、今しかない……!


 ボクは命からがら、女子風呂から抜け出せたのでした……。


 

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