トバリちゃん(9歳)その2

「あ〜! トバリ〜! ナギサ君になにチュウしてるんですかー!?」


 ヒカリちゃんがお風呂から上がってきたようだ。


「あっ、お姉ちゃーん!」


 トテトテと駆け寄ったトバリちゃんは、ヒカリちゃんに抱きついた。


「あいたかったよー! お姉ちゃん、急によそのおウチに行っちゃうんだもん!」

「あれほど、ウチに来たい時は事前に連絡しなさいと言ったじゃないですか。トバリ」

「ごめんね? お姉ちゃん」

「今度はちゃんと連絡できますか?」

「うん! 絶対する!」

「ふふっ、トバリはいい子ですね」


 ヒカリちゃんは屈んで、優しそうにトバリちゃんをなでなでした。


 トバリちゃんも嬉しそうに撫でられていて、そこには確かに姉妹の絆を感じ取ることができた。


「でもね、トバリ?」

「ん〜なぁに? お姉ちゃん」

「ナギサ君は私のものだから、取っちゃダメですよ?」

「え〜、ナギサお兄ちゃん、優しいし、キャンディくれたから好き〜!」

「はぁ、全く……」


 ヒカリちゃんは小さなため息をつくと、ボクの方に顔を向けた。


「いきなり、ウチの妹が勝手に来て申し訳ありませんでした。ナギサ君」

「いやいや、別に大丈夫だよ」

「しかし、よく短期間でこんなに仲良くなれましたね。この子がこんなに懐くのは珍しいんですよ?」

「そうなんだ? 結構、すぐに懐いてくれたよ〜」

「(う〜ん、血は争えないという事なのでしょうか……)」


 ヒカリちゃんは口に手を当てて、う〜んと悩んでいる。


「ヒカリちゃん、どうかしたの?」

「い、いえ……。なんでもないですよ? あはは……」





「ナギサ君、トバリの相手を引き続きお願いできますか? 私は夕食を作りますので。実家には連絡を済ませてあります」

「うん、分かった。今日の夕食は?」

「ふふっ、目玉焼きハンバーグですよ」

「うわぁ、美味しそうだねー、トバリちゃん!」

「うん、お姉ちゃんの料理、楽しみー!」


 トバリちゃんは、そわそわとしている。


「そーいえば、お兄ちゃんとお姉ちゃんは“けっこん”するの?」

「うん、そうだよ」

「いいな〜! あたしも早く“けっこん”したい!」

「ふふっ、それには相手が必要だからね。まずは、一生、一緒にいたいって思える人を見つけないとね?」

「お兄ちゃんは、お姉ちゃんと一生一緒にいたいのー?」

「うん、ヒカリちゃんとはずっと一緒にいたい。大好きだから」


「(もぉ〜、ナギサ君、恥ずかしいですよぉ///)」


「お姉ちゃんのどんなところが好きなの?」

「そうだね。全部……かな」

「ぜんぶ?」

「うん、優しくて、料理も美味しくて、たまに甘えん坊で、それでとってもとっても綺麗で可愛いんだ! ボクなんかにはもったいないくらいだよ!」


「(は、恥ずかしいですぅ……。ナギサ君のばかぁ///)」


「じゃあ、あたしもお兄ちゃんの事好きだから、“けっこん”するー!」

「はは、残念だけど、ボクはヒカリちゃんのものだからね。無理なんだよ?」

「むぅ〜」


 トバリちゃんはプクッーと、頬を膨らませてこう言った。


「じゃあ“あいじん”ならいーい?」

「ぶっ!?」

「ど、どこでそんな言葉を!?」

「爺やー!」


 ほんとろくでもない事しか教えないな、おの爺や……。


「あはは……愛人は無理だけどさ、トバリちゃんはきっと素敵な女の子になれるよ。そうしたら、きって素敵な恋人ができると思うよ?」

「あたし、ほんとに素敵な女の子になれるのかなー?」

「うん、ボクが保証するよ」

「なんでわかるのー?」

「うん、だって昔のヒカリちゃんにそっくりだから。だから、絶対、素敵な女の子になれるよ!」


「(ナギサ君に素敵な女の子って言われちゃった/// 嬉しいですぅ……)」


「お姉ちゃんみたいにボインボインになれるかなー?」

「なれるさ、きっと!」





「お姉ちゃんの目玉焼きハンバーグ、美味しいー!」

「うん、とってもジューシィだね! 中にチーズも入っていて、相性抜群だよ!」

「ふふっ、気に入ってもらえてよかったです。おかわりもありますよ」

「お姉ちゃん、おかわりー!」

「はいはい」

「あっ、トバリちゃん、ほっぺにソース付いてるよ?」


 ボクはティッシュで、ソースを拭き拭きしてあげた。


「えへへ、お兄ちゃんありがとー!」


 ふふっ、トバリちゃんがいると、さらに食卓が賑やかになるな。





 食後にメイド服の女性が迎えに来てくれた。


「じゃあ、お姉ちゃん、お兄ちゃん、ばいばい!」


 トバリちゃんが手を振ったので、ボク達も手を振りかえす。


「気をつけてね、トバリちゃん」

「お父様とお母様によろしくお願いしますね」

「また来てもいーい?」


 少し寂しそうな顔をして、トバリちゃんは聞いてきた。


 ボクとヒカリちゃんは目を合わせて、お互い頷く。


「うん、いつでもおいでよ、トバリちゃん」

「はい、いつでもお姉ちゃんはウェルカムですよ」


 それを聞いたトバリちゃんの顔はパァと明るくなった。


「うん、また来るねー!」


 元気にトバリちゃんは帰って行った。


 するといきなりヒカリちゃんが抱きついてキスをしてきた。


「ん!?」

「もぅ〜、トバリに私の好きなところとか、堂々と言うものだから、途中でキスしたい衝動をずっと我慢してたんですよ?」

「だって、ほんとのことだから……」

「もう、バカぁ///」

「んん!?」

「んん……れろ……はむ……はむ……ちゅちゅっ♡」


 我慢してた分、いつもより激しいヒカリちゃんなのでした……。



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