メイド喫茶 その1

 今日の部活内容は生徒相談。生徒の悩みを聞いて、一緒に悩んだり、解決法を模索したりする。


「今日は誰も来ないでありますなぁ……」


 レンが机に突っ伏してしている。ここのところ、レンはなんだか疲れ気味に見える。


「あっ、じゃあボクが相談するよ」

「え? ナギサ殿がー? なんでありますか?」

「最近、レンが疲れ気味だから、大丈夫かなー

って。何かあった? 相談なら乗るよ?」


 ボクは真剣な表情でレンを見据える。


「確かにレンは最近、お疲れのようですね……」


 するとレンは、ばつが悪そうにポリポリと頬をかく。


「あー、心配させちゃったでありす? 申し訳ない。実は最近、バイトやってて疲れが溜まってるでありますよー……」


 ふわぁとレンが大あくびをする。


「へぇー、知らなかったよ。何のバイトしてるの?」

「私も気になりますね」

「そうだ! なら今日の部活終わりにバイト先に来てみて欲しいであります!」

「はい! ぜひ!」

「うん、行ってみよっか!」





「お帰りなさいませ、ご主人様! お嬢様!」


 入店すると、メイド服の女の子達が出迎えてくれた。


「「「ご主人様、お嬢様、お屋敷“ぽんぽこぽん” へのご帰宅でーす!」」」


 メイド服の女の子がベルをカランカランと大仰に鳴らす。


「え? これって、メイド……喫茶?」

「ゆっくりして行って欲しいでありますよー。ご主人様ー、お嬢様ー」


 するとレンが出迎えてくれた。


「あっ、レンですね! うわー、メイド服、似合ってますねー!」

「えへへー、ありがとうであります、お嬢様!」


 レンはフリフリのメイド服を身につけて、ボク達を接客してくれる。


 うん、文句なしに可愛い。


「改めてましてお帰りなさいませー! 本日ご案内を担当させて頂くレンであります。お久しぶりのご帰宅なので、メニュー表の説明をさせて頂くでありますよ〜」

「お久しぶり……ですか?」

「た、たぶんそういう設定なんじゃないかな? お屋敷に久しぶりに帰宅したご主人様とお嬢様……みたいな?」

「なるほどですね……」


 レンはメニュー表を開き、メニューの説明を始める。


 萌え萌えフリフリミックスジュース、ぴよぴよぴよんオムライス、たこわさなど、愉快なメニューが勢揃いしていた。


「じゃあ、とりあえず、この“メイドの土産みやげ”セットを2人分で」

「了解であります! じゃあ、“妖精ようせい”さんが魔法で作るので、ちょっと待ってて欲しいであります!」

「妖精……さん?」

「そういう設定みたいだね」

「風船で浮いている緑のおっさんがつくるんでしょうか?」

「妖精のイメージがかたよっってるね……ヒカリちゃん」


 しばらく待っていると、レンが飲み物を運んできた。


「お待たせしましたー。このキャラメルラテではレンがキャラメルソースで、お絵描きするでありますよ〜。希望があったらおっしゃって欲しいであります!」

「うーん、どうしましょう……」

「おすすめとかあるの?」

「人気あるのはホゲモンであります!」

「じゃあボクは“アズ⚪︎オウ”で!」

「私は“レジ⚪︎ガス”でお願いします!」

「…………が、頑張ってみるでありますよ!」





 レンの働きっぷりは見事だった。他のどんなメイドより、明るくにきらびやかに接客をしていた。


「レン、頑張ってますね!」

「うん、すごく生き生きとしてるね」


 すると他のメイドさんがやってきた。


「レンはウチで人気No. 1メイドなんですよ」

「へぇー! やっぱりレンは人気あるんだ!」

「えぇ、レンの前ではどんなにむっすりとしたご主人様でも、たちどころに笑顔になっちゃうんですよ」

「納得ですね〜」


 メイドさんは去り、レンが“ぴよぴよぴよんオムライス”を持ってきた。


「ケチャップで文字を書けるでありますよ〜?」

「じゃあボクは“ 因果応報”で!」

「私は“魑魅魍魎ちみもうりょう”でお願いします!」

「ほんとにその文字でいいのでありますか……?」





 




 

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