メイド喫茶 その2
食事を終えて、帰ろうとするとなんだか店内が慌ただしかった。
「忙しそうだね、なんか」
「そうですねぇ。レンに挨拶をして帰りましょうか」
そうして、手元にあるベルを鳴らそうとするとレンが急いでやってきた。
「申し訳ない! 少し来てもらってもいいでありますかー!?」
「ん?」
「なんですか?」
ボク達は2人して首を傾げる。
♢
ボク達は店の奥にある控え室に連れて行かれた。
目の前には店長と思しき、赤髪のメイドの女性がいた。
「アタイはメイド長の“チチブクロ”ってモンだ。すまねーが、アンタ達に折り入って頼みがある」
源氏名とはいえ、すごい名前だな……。チチブクロて……。ごくり。
「な、何ですか? チチブクロさん」
「店のメイド3人が、風邪やら捻挫やらで
チチブクロさんはボク達に深く、頭を下げる。
「何だか面白そうですね! ぜひ、やってみたいです!」
ヒカリちゃんは興味深々のようだ。
「そっか! ヒカリちゃんがいいなら、それでいいよ!」
ボクは胸の中でガッツポーズする。やった! ヒカリちゃんのメイド服が見られるぞ!
「じゃあ、ボクはお客さんとして、ヒカリちゃんを見守っておくね」
するとメイド長がこう言った。
「アンタにもお願いしたつもりなんだが?」
「え?」
♢
ヒカリちゃんがフリフリのメイド服に着替えたようだ。
「へへっ、良い感じだぜ、お嬢ちゃん」
「とっても似合ってるでありますよー! ヒカリ殿!」
レンはぴょんぴょんと飛び跳ねて、喜んでいるみたいだ。
「えへへ、ありがとうございます!」
「ナギサ殿も早く!」
「ナギサくーん?」
2人の声がする。ううっ……こんなメイドさんの格好で人前に出るなんて……。
ス、スカートの中がスースーする……。女の子って普段、こんな感じなの……?
ボクは恐る恐るみんなの前に姿を現す。
「ううっ、恥ずかしい……」
「「「きゃああああ! 可愛いー!」」」
メイド長とレンとヒカリちゃんの黄色い歓声が響き渡る。
「ウン、アタイの目に狂いはなかったな」
メイド長は満足気だ。
「ナギサ殿、超、超、超似合っております! まるで本物のメイドさんみたでありますよぉ〜」
「ハァ、ハァ、ハァ……。すみません、ナギサ君……。いえ、ナギ子ちゃん、写真撮ってもいいですか?」
「ダメだよ!?」
ヒカリちゃんは興奮して、目が血走っている。
「そもそも、初心者のボク達がお店の戦力になるんですか?」
「そこは問題ねぇ」
店長はボクとヒカリちゃんに、社員証のようなものを首にぶら下げる。
「“赤ちゃんメイド”?」
そこには初心者マークと共にそう書いてあった。
「そう。初心者の印だ。初心者の初々しい接客にも需要があってな。むしろ、それ目当てのお客さんもいるくらいってなもんよ」
「へぇ〜そうなんですね〜。でもボク、男なんですけど……?」
「むしろ、男の娘は需要があるから問題ねぇ」
「そ、そうなんですか……?」
「観念しましょう、ナギ子ちゃん!」
「そうでありますよ! ナギ子ちゃん!」
「その呼び方、恥ずかしいからやめてぇ……」
顔から火が出そうだった。
♢
「あら、可愛いメイドさんね。新人さん?」
「はい、新人メイドの“ヒカリン”です! 可愛がって下さいね、お嬢様!」
「うふふ、あらあら、これはこれは……」
ヒカリちゃんは上手く接客をこなしているようだ。
ボクも頑張らないなきゃ──
「ふぎゃあ!」
慣れない服装にボクはこけてしまった。し、しまった……! お客さんの前でなんて
《おお、これは“ドジっ子”ですな……!》
《ふふっ、たまりませんなぁ》
《拙僧のポイント、マシマシでござるw》
「あれ?」
意外と好評だった。
するとレンが急いでボクに手を差し伸べて、起き上がるのを助けてくれた。
「おっとと、怪我してないでありますか?」
「う、うん。ありがとう、レン」
「痛いの痛いの飛んでけーであります!」
レンがボクを身体をさすさすと撫でた。
「レ、レン……は、恥ずかしい……よぉ……」
《んほぉー! たまらんでござるww》
《と、尊い……》
《くぅ〜拙僧も“痛いの痛いの飛んでいけー”してもらいたいですなぁ!》
《そしたら、お主が飛んで行くことになりますぞww》
《だれが痛い人でござるかぁwwコノコノォww》
《や、やめるでごさるよww〜みゃんみゃん太郎氏ww》
なかなか濃いご主人様が多いみたいだ……。
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