酔っ払い その2

「それよりナギサぁ……」

「何ですか?」


 酒でほてって、妙に色っぽい先生がボクに呼びかける。


「ちょっと来てみー?」

「?」


 ちょいちょいと呼ばれたので、ボクが先生に近づくと──


「今日はありがとうー、ナギサぁ♡」


 と言って、いきなりボクに抱きついてきた。


「────!? い、いきなりなんですか!?」

「うーん、かわいいなぁ、お前はー!」


 ほっぺをボクになすり付けてくるというおまけ付き。酒臭いのでやめていただきたい。


「あー! ナギサ君に何やってんですか!? 先生ェ!」


 急いでヒカリちゃんが、ボクを先生から引き離す。


「えー? ちょっとくらい貸してくれてもいいじゃんかよぅ……」

「ダメです! ナギサ君は私のものなんですから、1mmも貸しません!」

「ケチィ……」


 その後、先生の様子を見て、だいぶ酔いが覚めてようなので、ボク達は帰ろうとする。


「いや、本当に助かった。すまんな。これはほんの礼だ。持って行ってくれ」


 そう言って先生はウィスキーボンボンと食べかけのスルメをくれた。あ、まだ酔ってるなこれは。


「ありがとうございます。お酒はほどほどにして下さいね。せっかくの綺麗なお顔が台無しですよ?」

「う、うるさいな/// き、気をつけて帰れよ」

「ご自愛ください。では」


 ボクは扉をゆっくりと閉める。


「全く、ナギサの奴め……。綺麗な顔……か。ふふっ、嬉しいことを言ってくれる」


 



 せっかくなので、家に帰ってウィスキーボンボンを2人で食べてみる。


「んー、口の中でジュワッとアルコールの風味が広がるね〜」

「確かにそうですね〜。大人の人はみんな、ビールとか美味しそうに飲んでますよねー」


 いつかビールを美味しく飲める日が来るのだろうか。そんなことを思っていると、ふとヒカリちゃんの顔が赤くなっているのに気がついた。


「ヒック……」

「え?」

「ナギサくーん♡」

「うわー!」


 ヒカリちゃんがいきなり抱きついてきた。


「あー、先生の匂いがしますぅ……。らめれすよぉ、私の匂いに上書きしないとぉ……」


 呂律ろれつの回らないヒカリちゃんが、ボクに密着して、すりすりと身体を密着させてくる。


「ヒ、ヒカリちゃん?」


 そういえばウィスキーボンボンでも、酔ってしまう人がいると聞いたことがある。


「んー♡」

「んんっ!?」


 ガシッとつかまれ、容赦なく口をむさぼられる。その後、なにやらヒカリちゃんはパタパタと手で自分をあおいだ。


「うー、熱いですね……」

「──!?」


 そのままヒカリちゃんはガバッと上下の服を脱ぎ、そのまま下着姿になった。


 ピンクのフリフリの可愛らしい下着が、ほてった頬と相まって、とても扇情的せんじょうてきに感じた。


「ひ、ヒカリちゃーん!?」

「ふふっ、今日は寝かせませんよ? ん……ちゅ……」


 ただでさえ、キスの大好きなヒカリちゃんが、酔って歯止めが効かなくなる。


 口、顔、耳、首筋、いたるところにキスをされる。


「ううっ……ヒカリちゃん……」

「ふふっ……」


 なまめかしい彼女の行為に、ゾクリとする。まるで捕食されているかのようだ。


「は、早く、酔いが覚めてー!」

「ナギサくん、しゅきぃ♡」

「うわーー!」





「おはようございます、ナギサ君」

「おはよう……ヒカリちゃん……」


 僕たちはベッドの上で挨拶をする。昨夜は大変でした……。


「あれ? ナギサ君、顔にキスマークがすごい付いてますよ?」

「え? うそ!?」


 ボクは鏡で確認すると、そこには顔中にキスマークができていた。


「なんでそんなにキスマークが?」


 ヒカリちゃんは小首を傾げる。


「昨日の夜のヒカリちゃん、激しかったよ……」


 ボクはポツリと漏らす。


「え///」

「あはは……、学園で絶対、冷やかされるやつだコレ……」

「お、覚えてないけど、ごめんなさーい!」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る