二学期編
体育祭
二学期最初の学校行事、体育祭が始まった。
晴天にも恵まれ、保護者の方も大勢集まり、声援の中、生徒達が汗を流している。
そんな中、借り物競走が始まった。ボクを含めて、フトシやレンやヒカリちゃんも参加する種目だ。
「フトシー、がんばれー!」
ボクは同じ赤組であるフトシに声援を送る。
「こいつは……」
フトシは借り物競走のお題の紙を手に取ると、すぐさま美月先生に駆け寄った。
「美月センセ、頼むぜ!」
「わ、私か?」
先生を連れ、ゴールを目指すフトシ。
「(参ったな。これ多分、お題“好きな人”で選んだな、フトシ。すまんな、お前のことは恋愛対象としてはバッタ以下だ。はぁ……、私ったら罪深いわー。辛いわー……。はぁ、可愛い過ぎてごめん)」
『フトシ選手のお題は“年齢=恋人いない歴の人”です!』
「──は?」
「センセ、助かったぜ!」
『今から確認作業に入ります』
先生は顔を真っ赤にして、確認にOKを出していた。
「………おい、フトシ。なぜ私に一目散に寄ってきたんだ?」
「え? だってそりゃそう……ぎゃあああああああ!」
あーあ、フトシ。迷いもなく、一目散に先生を選ぶから……。安らかに眠れ。南無。
♢
ボクの出番がやってきた。スタートし、お題の紙を確認する。これは……!
ボクは急いで保護者席のヒカリちゃんのお母さんのアカリさんへと向かう。
「お願いします! アカリさん!」
「あ、あら? 私なの? (この子、まさか“好きな人”で私を選んだの!? そんな、ヒカリもいるのに私を選んじゃうの!? まさか、お風呂で私のボディに惚れちゃったのね? ああ、ヒカリ、ごめんなさい……。ふしだらな母と笑いなさい……)」
『ナギサ選手のお題は“人妻”だぁぁぁ! 合格でーす!』
「助かりました! アカリさん!」
「え? あら? そう……」
「?」
なぜか少し残念そうな顔をしたアカリさんだった。
「(す、好きな人っていうお題で、私のお母様を選んだかと思ってドキドキしちゃいました……)」
♢
次はレンの番だった。
「フトシ、お願いするであります!」
「え? オイラ?」
フトシを連れ、レンは走る。
「(参ったな。これ多分、お題“好きな人”で選んだな、レン。はぁ……、オイラったら罪深いわー。辛いわー……。はぁ、モテ過ぎてごめん)」
『レン選手のお題は“多重債務者”だぁぁ!』
「メイド喫茶のツケ、早く返すでありますよ?」
「うっ、ら、来月までには返すから……」
《フトシ、てめぇ、俺が貸した金も早く返せよ!》
《俺もだ! このヤロー!》
《フトシィィィィ!》
「ちょ、みんな落ち着いて……。今度、カニ漁船乗るから、それまで待って……ぎゃあああああああああああああ!」
あーあ、お金ないのにメイド喫茶なんて行くから。そう言えば、夏のバイトの時、ボクがシフト入ってる時、必ず来てたな……。
♢
最後はヒカリちゃんの番だった。
「ナギサ君、お願いします!」
紙を確認し、選ばれたのはボクだった。
あっ……これ絶対“好きな人”ってお題だ……! 女友達って逃げもあるのに、もぅ〜ヒカリちゃんったら、みんなの前で恥ずかしいよぉ〜。
ボクは若干ニヤニヤしながら、ゴールした。
『お題は“寝相がちょっぴり悪い人”です!』
「──え?」
ヒカリちゃんはボクを見て、ぽっと頬を赤らめている。
『おっーと! なぜ彼が寝相がちょっぴり悪いことを知っているのでしょうか!? い、いえとにかく確認してみましょう!』
「はい……ヒカリちゃんが言うなら多分合って……ます……」
『ご、合格でーす! これはうらやまけしからーん!』
ヒューヒューと口笛を吹いたり、きゃああと女性の黄色い歓声があがる。
は、恥ずかしいぃぃぃ! これなら“好きな人”の方がよかったぁぁぁ!
♢
「ねぇ、ボクって寝相悪いの?」
ボクは寝る前に、ベッドでヒカリちゃんに聞いてみた。
「は、はい……! あんなやことやこんなことを……寝ながら……///」
ボク、寝てる間に何してるんだろう!?
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