結婚式《完結》
それからしばらく経ち、ボク達は18歳になった。
「誕生日おめでとうございます! ナギサ君!」
「ありがとうヒカリちゃん!」
2人で満面の笑みを浮かべて、ケーキを食べる。口いっぱいに甘い味わいが広がり、幸福感に包まれる。
だが、その幸福感はそれだけが理由ではなかった。
「それじゃあ、ここに書くよ」
「──はい」
2人で婚姻届を書き上げ、区役所に提出する。これで正式にボク達は夫婦になった。思ったよりあっけなくて、少し拍子抜けだ。
「ふふっ、“涼風”ヒカリです。ふつつか者ですが、末長くよろしくお願いします」
「こちらこそ」
「えへへ、やっと約束が叶ったね。ナギサ君」
ヒカリちゃんの目からは涙がポロリと流れ落ちた。ボクはそれを優しくぬぐい、見つめ合う。
「──ヒカリちゃん、大好き」
「──うん、私も大好きだよ!」
お互いにぎゅっと抱きしめあった。夫婦になった実感を噛み締めるかのように。ぎゅっと、ぎゅっと。
♢
数年後、ボク達は挙式する事になった。
「綺麗……」
「ふふっ、ありがとうございます……」
ヒカリちゃんのウェディングドレスは眩しいくらいに、純白で美しかった。
ボクの親族、ヒカリちゃんの親族、レン、フトシ、美月先生、様々な人に祝福される。
さすが天王寺家とあって、各界の重鎮のような方もちらほらと。
「新郎ナギサ。あなたはここにいるヒカリを
病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、妻として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
神父の神妙な声が式場に響き渡る。
「誓います!」
ボクは人生に一番の大きな声で断言した。
「新婦ヒカリ。あなたはここにいるナギサを
病める時も、健やかなる時も、富める時も、貧しき時も、夫として愛し、敬い、慈しむ事を誓いますか?」
「……誓います」
そしてボク達、お互いに左手の薬指に指輪をはめ合う。
「それでは誓いのキスを──!」
ボクはヒカリちゃんのベールをあげる。本当に綺麗な顔だった。言葉では言い表せないほどに。
そしてヒカリちゃんは目をつむる。そしてボクはゆっくりとキスをした。その瞬間、会場は声援に包まれる。
────それは一生の思い出に残るキスだった。
その後、ヒカリちゃんがブーケトスをすると、美月先生が死に物狂いでそれを取りに行っていた。先生……。
「へへっ、おめでとう」
フトシが笑みを浮かべながらそう言った。よかった……、また漁船から戻ってこれたんだね……。
「おめでとうであります!」
レンが快活な声が耳朶を叩く。レンはあれから、声優になった。バイトを頑張っていたのは、専門学校に行くためだったとか。
ちょこちょこアニメにも出演していて、ヒカリちゃんと2人でそれを観ている。
「ブーケゲットできなかった……。くすん、おめでとう」
美月先生はブーケは取れなかったようだ。でも、先生ならきっといい人に巡り逢えると思い……たい。
「夫婦でウチで働いてもいいんだぞ?」
チチブクロ店長はあれから店舗を拡大し、大急ぎのようだ。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、おめでとー!」
見違えるように大きくなったトバリちゃんが祝福を。うん、ヒカリちゃんにそっくりだ。
「あらあら、おめでとう、2人とも」
アカリさんも相変わらずの若々しさだ。
「お兄ちゃん、おめでとう!」
「おめでとう、ナギサ」
妹の海も母さんも、とっても喜んでくれいて、こちらまで笑顔になる。
「姉として誇らしいよ。おめでとう」
ヒバリ義姉さんも腕を組み、片目をつぶりながら微笑む。
「「「「「──おめでとう!」」」」」
たくさん人からの祝福の雨。思わず涙が浮かんでしまう。
「みんな本当にありがとう──!」
♢
それからさらに数年後、ボク達には女の子が生まれた。ヒカリちゃんに似て金髪の、とっても可愛い女の子。
「ねぇ、パパー?」
「うん? どうしたの?」
「あたしねー! 大きくなったらパパと“けっこん”するー!」
「ははっ、残念だけど、それはダメだよ?」
「どおしてー?」
「先にママと“約束”したからね」
「えー?」
「うん、とっても大切な約束。ね? ママ?」
「──ふふっ、はい、そうです」
「えー! ママ、ずるーい!」
「こーら、暴れちゃだめです、“ヒマリ”」
それは遠い遠い、過去の約束。でも、ボク達のその約束は────叶ったんだ。
「さぁ、帰ろう」
ボクはヒカリちゃんに手を差し出す。
「──はい!」
ヒカリちゃんはその手を微笑みながら、しっかりと掴んだ。《完》
『大人になったら結婚しようね』って約束した幼なじみに10年後に再会したら、“超絶美少女”になっていて本当に結婚する事になっちゃいました…… 腹ペこ。 @koba5000
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