バレンタイン

 今日はバレンタインだ。


「おはよう、ヒカリちゃん!」


 ボクはなんとなくチョコを期待しながら、ヒカリちゃんに挨拶する。


「はい、おはようございます」


 いつも通りのヒカリちゃんに、いつも通りの朝だった。


 もしかしたら、学校で渡してくれるのかな? 確かにその方が雰囲気でるしね。





「ハッピーバレンタインでありますー! はい、友チョコ!」


 レンが手作りチョコを、ボクとヒカリちゃんに渡す。


「ありがとう! ホワイトデーにお返しするね!」

「ありがとうございます! 私からも、レンに友チョコを贈ります!」


 ヒカリちゃんはレンに、手作りチョコレートを渡す。


 ん? あれ? ボクのは……ない? い、いや、帰ってから渡してくれるんだね。うん、最後まで取っておくんだね。いや、焦らし上手だなー!


「ん? そう言えばバレンタインだったな」


 先生が自分の肩を叩きながら、ぼやく。


「先生は誰かに渡さないんですか?」


 ボクは何となく聞いてみた。すると、美月先生はにやりと笑みを浮かべる。


「何だ? 私からのプレゼントを期待してるのか? 仕方ないな〜、ほれやるよ」


 先生はポケットから、アメを取り出してボクに渡してくれた。


「あれ? でもバレンタインデーのアメには本命って意味があった気がするでありますが……」

「え!?」

「な、なに!? それは知らなかった……。ではこれを言っておかないとな……」


 先生はこほんと咳払いをする。


「べ、別にアンタの事が好きな訳じゃないんだからね!」

「逆に本命っぽいですよ……。それ」



 


 家に帰ってもヒカリちゃんは、チョコレートをくれる気配はなかった。


 な、なんか怒らせちゃったのかな……。ボクは急に不安になる。


「あの……ナギサ君」

「なになに!? チョコレート!?」

「い、いえ……」

「そっかぁ……」


 ボクがちょっぴりシュンとなると、ヒカリちゃんはおもむろに袋を取り出して、ボクに渡す。


 見れば、黒いクッキーが中に入っているではないか!


「用意してくれてたんだね……!」

「はい……でも……その。実はこのチョコレートクッキー、焦がしちゃってですね……。材料もちょっも気合入れたモノを選んだので、もうなくてですね……。また、今度作りなおそうかと……ごめんなさい」


 ヒカリちゃんはバツが悪そうに、ぺこりと頭を下げた。


「なんだ、そういう事か」


 ボクは袋から焦げたクッキーを取り出して、ひょいと口の中に入れる。


「あっ、ダメですよ!」

「うん、苦い……!」

「だから言ったじゃないですかぁ……」

「でも、ヒカリちゃんが一生懸命作ってくれたチョコレートクッキー。とっても嬉しいよ!」


 ボクは心からの本心を彼女に告げる。


「ナギサ君……」

「それにね──」

「あっ……」


 ボクはヒカリちゃんにキスをする。


「ふふっ、こうすれば後味は甘いよ?」

「ナ、ナギサ君///」


 ヒカリちゃんの顔がボンっと赤く染まる。


「ハッピーバレンタイン。ヒカリちゃん」

「ううっ、ナギサ君、大好きですぅ///」


 ヒカリちゃんはボクに抱きついてきた。


「ふふっ、あま〜い紅茶をお出ししますね?」


 あま〜いバレンタインになりました。






 


 



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