バレンタイン
今日はバレンタインだ。
「おはよう、ヒカリちゃん!」
ボクはなんとなくチョコを期待しながら、ヒカリちゃんに挨拶する。
「はい、おはようございます」
いつも通りのヒカリちゃんに、いつも通りの朝だった。
もしかしたら、学校で渡してくれるのかな? 確かにその方が雰囲気でるしね。
♢
「ハッピーバレンタインでありますー! はい、友チョコ!」
レンが手作りチョコを、ボクとヒカリちゃんに渡す。
「ありがとう! ホワイトデーにお返しするね!」
「ありがとうございます! 私からも、レンに友チョコを贈ります!」
ヒカリちゃんはレンに、手作りチョコレートを渡す。
ん? あれ? ボクのは……ない? い、いや、帰ってから渡してくれるんだね。うん、最後まで取っておくんだね。いや、焦らし上手だなー!
「ん? そう言えばバレンタインだったな」
先生が自分の肩を叩きながら、ぼやく。
「先生は誰かに渡さないんですか?」
ボクは何となく聞いてみた。すると、美月先生はにやりと笑みを浮かべる。
「何だ? 私からのプレゼントを期待してるのか? 仕方ないな〜、ほれやるよ」
先生はポケットから、アメを取り出してボクに渡してくれた。
「あれ? でもバレンタインデーのアメには本命って意味があった気がするでありますが……」
「え!?」
「な、なに!? それは知らなかった……。ではこれを言っておかないとな……」
先生はこほんと咳払いをする。
「べ、別にアンタの事が好きな訳じゃないんだからね!」
「逆に本命っぽいですよ……。それ」
♢
家に帰ってもヒカリちゃんは、チョコレートをくれる気配はなかった。
な、なんか怒らせちゃったのかな……。ボクは急に不安になる。
「あの……ナギサ君」
「なになに!? チョコレート!?」
「い、いえ……」
「そっかぁ……」
ボクがちょっぴりシュンとなると、ヒカリちゃんはおもむろに袋を取り出して、ボクに渡す。
見れば、黒いクッキーが中に入っているではないか!
「用意してくれてたんだね……!」
「はい……でも……その。実はこのチョコレートクッキー、焦がしちゃってですね……。材料もちょっも気合入れたモノを選んだので、もうなくてですね……。また、今度作りなおそうかと……ごめんなさい」
ヒカリちゃんはバツが悪そうに、ぺこりと頭を下げた。
「なんだ、そういう事か」
ボクは袋から焦げたクッキーを取り出して、ひょいと口の中に入れる。
「あっ、ダメですよ!」
「うん、苦い……!」
「だから言ったじゃないですかぁ……」
「でも、ヒカリちゃんが一生懸命作ってくれたチョコレートクッキー。とっても嬉しいよ!」
ボクは心からの本心を彼女に告げる。
「ナギサ君……」
「それにね──」
「あっ……」
ボクはヒカリちゃんにキスをする。
「ふふっ、こうすれば後味は甘いよ?」
「ナ、ナギサ君///」
ヒカリちゃんの顔がボンっと赤く染まる。
「ハッピーバレンタイン。ヒカリちゃん」
「ううっ、ナギサ君、大好きですぅ///」
ヒカリちゃんはボクに抱きついてきた。
「ふふっ、あま〜い紅茶をお出ししますね?」
あま〜いバレンタインになりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます