海へGO! その2

「レン、サンオイルを背中に塗ってくれてないか? 私も塗ってやるから頼むよ」


 美月先生がそう言うと「了解であります!」と言って、レンはサンオイルを先生の背中に塗り出した。


「んしょ……んしょ……」


 隣にはビーチパラソルの下でサンオイルを身体の前面に塗っているヒカリちゃん。


「あのぉ……先生もレンも手が空いてないので、よろしければ、背中にサンオイルを塗って頂けませんか? ナギサ君」


 ちょっぴり照れながら、ヒカリちゃんはお願いをしてきた。うん、断る理由がない。


「うん、分かったよ……!」

「で、ではお願いしますね……!」


 おもむろにうつ伏せになったヒカリちゃん。


 うつ伏せになった事で、その豊満な胸が水着の横から少しはみ出ていて、大変心臓に悪い。ごくり……。


「じゃ、じゃあ塗るね……」

「は、はい……お願いします」


 ボクはサンオイルを適量、手に馴染ませて、ヒカリちゃんの背中に塗りつけた。


「ふ、ふふっ、くすぐったいです……ひゃん///」


 ヒカリちゃんの艶めかしい声に、ドクンと心臓が高鳴る。ううっ、これは……。


「せ、背中から下の方は……?」

「も、もちろん、お願いします……!」


 お願いされてしまったのでは仕方ない。ボクはヒカリちゃんのお尻、むっちりとした太もも、細いももにオイルを塗りたくる。


 ──え? これ本当に大丈夫なの? おまわりさんに、おさわりまんとして逮捕されない?


※されません


「ナギサ君、手がぎこちないですけど、ひょっとして緊張しています?」

「うん……だってヒカリちゃん、綺麗なんだもん」


 ボクは正直にそう言った。


「うっ/// も、もぅ〜ナギサくぅん……」

「だって本当なんだもん……!」

「もぅ〜///」


 ヒカリちゃんの顔が真っ赤になる。


 そんな彼女が起き上がってボクの方に振り向くと、


「ふふっ、そんな素直なナギサ君が大好きです……!」


 と言って、いきなりキスをしてきた。


「〜〜〜///!?」


 今度はボクの顔が真っ赤になる番だった。不意打ちのキスは本当に心臓に悪い。


「お〜、熱々でありますなぁ! ご両人」

「教師の前でさかるな。私が泣くぞ」


 振り向くと、サンオイルを塗り終えた2人がこちらを凝視していた。


「あっ、なんかすみません……」

「あっ、次からは気をつけますね……」


 夏の開放的な雰囲気は恐ろしい。気をつけよよう、うんうん。





 先生は浜辺で休憩をしている。ボクとヒカリちゃんとレンは海辺で水の掛け合いっこをしていた。


「ナギサ殿、ヒカリ殿、くらうであります!」

「やったなこのー!」

「きゃあ! 水飛沫が冷たいですぅ!」


 仲睦なかむつまじく遊んでいたが、ボクはふと、ある事に気がついた。


 あれ? 今更だけどレンの胸、大きく……なってる? 


 確かレンはもっとスレンダーな体型だった気がする。プールの時も林間学校の事故の温泉の時も、ここまで大きくはなかったような?


 成長期なのかな? まぁ、ヒカリちゃんも大きくなったとか言ってたしな……。


 そう思った瞬間、レンは足元を取られたのかズルっとすっ転んで、盛大に水飛沫みずしぶきをあげた。


「あいたー!」

「レン、大丈夫?」

「だ、大丈夫ですか!?」


 ボクが手を差し伸べて、レンが手を取る。


「ん?」


 すると、レンの周りにプカプカと何かパッドの様なものが浮かんでいた。ボクはそれを掴むと──


「あー!」


 レンが悲鳴をあげたので、そちらに目をやると、なんとレンの胸がさっきよりも圧倒的に縮んでいるではないか。


「か、返してくださいでありますぅ!(少しでもよく見せようとしたのがあだになっちゃったであります……!)」

「(レン、やっぱりパッドをはめてたんですね……)」


 泣きながら、パッドをボクからひったくると、後ろを向いて装着し直している。ヒカリちゃんも一緒手伝い始まる。


「びええ〜……」

「ナ、ナギサ君はあちらを向いててくださいね!」

「う、うん……!」


 む、胸パッドしてたのか……。もしかして、レン、自分の胸にコンプレックスでもあるかな……。


「レン、別に大きくてもそんなにいいことないですよ! 肩も凝るし、男性からの視線は気になるし、汗もかきますし!」


 ヒカリちゃんが必死にフォローしている。


「そ、そうだよ! 胸じゃないよ! 大事なのは中身だよ!」

「でもナギサ殿は大きい方が好みでありますよね?」

「…………………………。さぁ、泳ごうか!」

「目が泳いでいるでありますよ……」

「あばばばばばば……」

「ふふっ、あはは」


 レンはボクの慌てっぷりを見て、笑みを浮かべた。


「元気が戻ったようで何よりだよ……」

「よかったです〜!」

「ふふっ、レンは元気がとりえでありますから!」


 そう言って真夏の日差しの下ではにかむ彼女は、とっても眩しかった。





「よぉ〜! ナギサ!」

「あれ? フトシ?」


 浜辺で遊んでいると、急にバッタリと友人に出会った。


「1人? こんな所で会うなんて奇遇だね?」

「お、おう……き……奇遇だな!」


 明らかに目が泳いで、挙動がおかしい。そういえばこの前ライーンで、部活の予定を聞いてきたのを思い出した。


「フトシ、もしかして水着の女の子が目当て……?」

「ん、ん、んな訳あるかぁ!」

「怪しいであります……」

「そんなことよりよぉ! バーベキューの食材、“たまたま”買ってきたんだよ! へへっ、みんなでバーベキューしようぜ!」


 フトシのカバンにはどっさり、野菜や肉などが詰め込まれていた。


「キンキンに冷えた飲み物も用意してありますぜ、美月センセ!」

「ほぉ、なかなか気がきくじゃないか。いいじゃないか。やるかバーベキュー」

「夏っぽくていいですねー!」

「(くぅぅぅ、みんなの水着色っぽいなぁ……。用意したかいがあったぜ!)」


 そんなこんなで、海の家でバーベキューセットをレンタルし、みんなでバーベキューをすることに。


「お肉美味しいね〜」

「ふふっ、お野菜もしっかり食べてくださいね」

「浜辺でのバーベキューは格別でありますなぁ!」

「くぅ〜、たまらんな! やるじゃないか、フトシ!」

「へへっ、みんなじゃんじゃん食ってくれよな!」


 こうして夏の海を存分に満喫したボク達なのでした。


「な、ナギサよぉ……」

「ん?」


 隣のフトシがボクにこっそり耳打ちをする。


「なぁ、ナギ子ちゃんの水着のコスプレ……してみないか?」

「……………………」

 

 



 


 





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