夏祭りへGO!

 今日は夏祭り。活気のある屋台が立ち並び、大勢の人々が祭りを楽しんでいる。


 そんな中、ボクはヒカリちゃんを待っていた。


『一緒に行かないの?』

『ええ、少し実家に寄りたいので、待ち合わせをしましょう』


 そして今、ボクは待ち合わせの場所でヒカリちゃんを待っていた。


「お待たせしました〜」


 声がした方に振り向くと、そこには浴衣を着たヒカリちゃんがいた。


「…………」

「あれ? どうかしました?」


 髪を後ろにまとめ、お団子頭にしたヒカリちゃんがこちらの様子をうかがう。


「や、やっぱり似合ってないですかね?」


 あせあせと自分の服装を見るヒカリちゃん。


「いや、あんまりにも綺麗だったから、言葉が出なかったよ……」


 ボクは思った通りにそうこぼすと、ヒカリちゃんの顔がカァーと赤くなった。


「そ、そうですか///? う、嬉しいです。えへへ。あの……今日は人が多いので、手を繋いで歩きませんか?」

「う、うん……」


 ヒカリちゃんの小さくて、柔らかくて、温かい手をぎゅっと握る。


 うっ……服装と髪型が変わっただけなのに、こんなにもドキドキするなんて……。

 

「早速ですが、お腹が空きましたね……」

「うん、それじゃあ、屋台で何か食べに行こう」


 そう言って向かった、屋台には見知った顔がいた。


「出張版メイド喫茶“ぽんぽこぽん”でありまぁす!」

「萌え萌えキュンキュンクレープいかがー!」


 レンとチチブクロ店長が、クレープを焼いていた。


「あれ? 屋台もやってんですか? メイド喫茶なのに」


 ボクはチチブクロ店長に話しかける。


「おう、ここの町長がウチの店の常連でな。そのツテで屋台出させてもらってんのよ」


 ウチの町の町長、なにやってんの……。


 しかしよく見ると、ボク達以外にお客さんはいなかった。


「おう、ナギサ、気がついたか。どうも服装が悪いのか、客足が遠くてなぁ。参ったねぇ、このままじゃあ赤字になっちまう……」

「あれ? メイド服は着ないんですか?」

「この暑さで鉄板の前でメイド服でクレープ焼いてみな? 死んじまうぜ……」


 た、確かにそうだ。でも、それだとインパクトがやっぱり薄いのかな……。


「心配だね……」

「うーん、何か私達に出来ることはないでしょうか?」


 ヒカリちゃんがそういうと、店長がガバッとヒカリちゃん肩を掴んだ。


「じゃあ、ヒカリがクレープを手渡ししてくれるだけでいい! アタイ達は焼くのに精一杯だからな!」

「え? それだけでいいんですか?」


 



 ヒカリちゃんが紙筒に包んだクレープを手渡しし始めた途端に、お客さんがわっと押し寄せた。


「お買い上げありがとうございます♪」


 ヒカリちゃんがにっこりとクレープを手渡しすると、男性客達は鼻を伸ばしていた。


《ふぅ、可愛い過ぎて心臓止まるかと思った》

《俺、もっかい買いにいっちゃお!》

《もうクレープ焼けそうな体だね……》

《はい、今の顔、反則。ペナルティキッス…いくよ》



 なんだか危なそうなお客さんには、ボクが対応しました……。


「ありがとうー! ヒカリ殿! おかげで赤字は回避できそうでありますー!」

「助かったぜ。礼としちゃあなんだがよ、クレープ、好きなだけ持って行ってくれよ」

「ありがとうございます!」


 ボク達は人混みから離れ、人気のない所でクレープを頂く。


「うん、甘いねー!」

「はい、美味しいです! あれ? ナギサ君、口の周りにクリームついてますよ?」

「え? ほんと?」

「私が取ってあげますよ」

「ありがとー」


 ヒカリちゃんはボクの口の周りをクリームを人差し指で救って、そのままチュッパッと舐め取った。


「ふふっ、甘いですね」

「っ……!」

 

 なんだか、なまめめかしくてドキリとしてしまった。


「ではお返ししますね?」

「え? ──ん!?」


 そう言って、ヒカリちゃんはボクにキスをした。


「ん♡……レロ♡……レロ♡……チュ♡……ぷはっ♡」


 口の中が甘いクリームの味で満たされる。


「ふふっ、あま〜いキス……です♡」

「甘すぎて、糖分過多になっちゃいそう……」





「あれ? 先生、何やってんですか?」

「美月先生ですね〜」


 屋台を歩いていると、先生が輪投げコーナーで店番をやっていた。


「おお? お前らか。ツレにちょっとだけ、店番頼まれてなー。いい男、紹介してやるって言われて仕方なくなー」

「なるほど……」

「一回200円。せっかくだから、どうだ?」

「じゃあ一回だけお願いします」


 ボクは輪っかを受け取り、景品に向かって投げる。あっ──! 手元が狂って、輪っかは先生の頭にスポーンとハマる。


「大当たりー!」


 先生はカランカランと当たり鐘を鳴らす。


「──え?」

「景品は先生だゾ♡」

「返品で」


 


 







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