実家へGO! その2
アカリさんの身体に巻いたタオルから、はち切れんばかりの胸に目が奪わそうになる。
「あっ……! し、失礼します!」
タオルで前を隠して、ボクは上がろうとすると、ボクはその手をパシっと掴まれた。
「あなたと1対1で大事なお話があるの。よかったら、ちょっとだけ付き合って欲しいな〜」
「な、なるほど……。分かりました……」
大事な話とあっては、逃げるわけには行かない。ボクは覚悟を決めて、お風呂に入りなおした。
お風呂でタオルで前を隠しているのは、非常事態なので許して頂きたい。アカリさんもタオルを巻いたまま、お風呂に入っているで大丈夫……なハズ。
「…………」
お風呂でヒカリちゃんのお母さんと向き合う。まるでヒカリちゃんとお風呂に入っていると錯覚するくらいに似ていてドキドキする。
「まずは、ヒカリとの結婚の約束をしてくれてありがとうね」
「こちらこそ、認めていただきありがとうございます」
「いいえ、子供の頃の話よ」
アカリさんは
「子供の頃の……?」
「そう、あの約束のおかげでね、あの子ね、本当に頑張ったのよ。大の注射嫌いのあの子は、いつもあなたの幼い頃の写真を見つめて、勇気を振り絞っていたんだから」
「そう……だったんですか」
「ええ、成功するか分からない手術の前にも、震えながら……ね」
「ヒカリちゃん……」
そこまで心の支えにしてくれていたことに、胸が熱くなる。
「苦いお薬も辛いリハビリも、ナギサ君と結婚するんだって……それはもう必死でね」
「……」
「見かねた私は、ナギサ君を呼ぶことも考えたのよ? でもあの子は“ナギサ君に心配させたくない”って言って聞かなくてね」
「ヒカリ……ちゃん」
彼女はボクに心配かけまいと、我慢していたんだ……。
「お医者様が言うには、ここまで回復したのは奇跡だって。意思のチカラだって。だから、私達は本当に感謝してるの。ありがとう、ナギサ君」
アカリさんが頭を下げて礼をした。
「そしてね、その幼い頃の約束を守り続けて、ずっと待っててくれたあなたにこそ、ヒカリの結婚相手に相応しいと私は思ってるいるわ」
「アカリさん……」
ボクはぎゅっと手を握りしめて、宣言する。
「ボク、ヒカリちゃんを絶対に幸せにしますから! 今まで、頑張った分が報われるように! 絶対!」
ボクは強い決意と眼差しを持って、その言葉を伝えた。
「ふふっ、その言葉が聞きたかったの。テンプレートな挨拶じゃなくて、あなたの本当の気持ちを……ね? ふふっ、わざわざこんな場所で話したかいがあったわね」
「あっ……」
確かにさっきではガチガチで、
お風呂で温まってリラックスできたからこそ。ま、まぁ、少々大胆過ぎる気はするけど……。
「あっー! 探してもいないと思ったら、やっぱりこんな所にー!」
ヒカリちゃんがボクとアカリさんを見つけて、そう言った。げっ!
「ちょっと待ってて下さいねー!」
ヒカリちゃんはさっと身体を洗うと、タオルを巻いて、ボク達がいるお風呂に入ってきた。
「ヒ、ヒカリちゃん……!? こ、これは……」
「あら? さっきナギサ君とお風呂に入るって言ったじゃない? そしたら、『ふふっ、いいですよ〜』って」
「冗談かと思って冗談で返しただけですよ……。もう、相変わらず天然なんですから〜。ナギサ君にちょっかいかけないで下さいよ……もぉ」
ヒカリちゃんがアカリさんの側から、ボクを引き離して、ボクに抱きついた。
「あらあら〜本当に愛されてるのね、ナギサ君。じゃあ、お邪魔虫はここで退散するわね〜」
そう言ってアカリさんはお風呂から上がって行った。
「申し訳ありません、うちの母が……。お母様に何かされませんでしたか? ナギサ君」
「いや、何も。……でもアカリさんは、ボク達の事を真剣に考えてくれている素敵な人だったよ」
「…………」
ボクはヒカリちゃんを見据えて、真っ直ぐとそう答えた。ヒカリちゃんは少し
「ふふっ、そうですか」
そう言って、ヒカリちゃんはボクは肩に寄りかかった。ドクンと心臓が高鳴る。
「──次はナギサ君のご両親にご挨拶に行きたいですね〜」
「う、うん、お盆に帰ろうと思ってるんだ。その時に一緒に行こうね」
「はい……!」
「じゃあ、そろそろボクは上がるね?」
この格好に気恥ずかしくなったので、ボクは風呂から上がろうとすると
「あの……」
と、ヒカリちゃんに手を引かれた。
「もう少しだけ……一緒に温まりませんか?」
「う、うん……」
ああ、お風呂にのぼせる前に、ヒカリちゃんにのぼせちゃいそう……。
♢
今日はもう遅いので、泊まっていって下さいとヒカリちゃんに言われたので泊まることに。
部屋はアカリさんが気を利かせてくれて、ヒカリちゃんの部屋で一緒に寝ることになった。
トバリちゃんも塾で疲れて、すぐに眠ってしまったようだ。
『あの子ね、本当に頑張ったのよ。大の注射嫌いのあの子は、いつもあなたの写真を見つめて、勇気を振り絞っていたの』
アカリさんの言葉を思い出した途端、ヒカリちゃんへの愛おしい気持ちが止まらなくなった。
「ヒカリちゃん、好きだよ……」
ボクは自分からヒカリちゃんに優しくキスをする。
「め、珍しいですね///……ナギサ君からなんて……。いつもは私からなのに……」
「うん、嫌……かな?」
「い、嫌じゃないです///」
「ふふっ、そっか」
ボクはヒカリちゃんを抱きしめ、深いキスをする。何度も何度も。
「ナ、ナギサくぅん……」
ヒカリちゃんの目がトロンとしてきた。
『苦いお薬も辛いリハビリも、ナギサ君と結婚するんだって……それはもう必死でね』
ボクはヒカリちゃんの頭を、めいいっぱい撫でる。
「ふふっ、ヒカリちゃん可愛い」
「ふぇぇ/// 今日はどうしちゃったんですかぁ?」
『アカリさん……。ボク、ヒカリちゃんを絶対に幸せにしますから! 今まで、頑張った分が報われるように!』
「ヒカリちゃん……?」
ボクは彼女の瞳を真っ直ぐに見据える。
「な、なんですか?」
「一緒に幸せになろうね」
「…………はい」
幸せそうに微笑む彼女を見て、ボクも自然と笑みがこぼれた。
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