夏休み編

実家へGO!その1

 1学期の期末テストも無事に終わり、夏休みを迎えたボクはヒカリちゃんの実家へ来ていた。


 目的はヒカリちゃんのご両親に挨拶をする為。それで今日は、きっかりとしたスーツを着ている。


 うっ、心臓が緊張でドキドキしてきた。


「ここがウチの実家です」

「う、うわぁー、大きい家だねぇー……」


 目の前の巨大な豪邸に唖然あぜんとする。


「さ、遠慮せずにどうぞ」

「う、うん……」


 正面セキュリティを突破し、ヒカリちゃんに連れられ、広大な庭を抜ける。


 整備された木々に、色とりどりの鮮やかな花々。庭師が整備が行き届いているようだ。


「ただいま戻りました〜!」

「お邪魔します」


 ボクが玄関ホールに入ると、執事とメイドと思われる人達がずらっと整列する。


「「「いらっしゃいませ、ナギサ様。お帰りなさいませ、ヒカリお嬢様」」」

「皆、ご苦労様です」

「こ、こんにちはー……」


 ボクは目の前の光景に圧倒される。


 うっ……こんなのテレビとか漫画だけの世界だと思ってたよ……。


「あら、いらっしゃい〜」


 オシャレな螺旋階段らせんかいだんから、コツコツと降りてきたのは、優雅で金髪の女性だった。


「ただいま戻りました、お母様!」

「お母様!?」


 ボクは目の前の女性を二度見する。若くて綺麗で、まるで二十代にしか見えなかった。


 天王寺朱莉てんのうじあかり。あの天王寺グループ社長の奥さんで、ヒカリちゃんのお母さん。


「て、てっきりお姉さんかと……」

「あらあら、嬉しいこと言ってくれるわね〜♡」


 アカリさんが頬に手を当てて、おっとりと微笑んだ。


 あっ、確かにヒカリちゃんのお母さんだ。笑った顔がすごい似てる。あと、やっぱり胸も大きい……。すごく大きい……。


「──っと、こんにちは、アカリさん。ボクは涼風凪すすかぜなぎさと申します。本日はお時間を頂戴し、ありがとうございます」

「はい、こんにちは〜。うーん?」


 アカリさんはボクの顔をまじまじと見つめる。


「あ、あの?」

「んー、可愛いー♡」


 いきなりアカリさんが抱きついて、ボクに頬擦りをしてきた。大人の女性の香りと、ヒカリちゃん以上の胸の感触がボクを襲う。


「ちょっ!?」

「ごめんなさい……ナギサ君。お母様、可愛いものを見るとこうなっちゃうんです……」

「ええ!?」

「うふふ、いい子を見つけたわね、ヒカリ。やっぱり親子ねー。好きな男の人のタイプも似ちゃうのね〜」

「はい、自慢の大好きな彼です!」

「あらあら、けちゃうわねぇ〜♡」

「あのー、そろそろ離してもらってもいいですか……?」





 広いリビングに案内される。家電や調度品、どれも全てに品があって、高級さがうかがえた。

 

「さぁ、お座りになって?」

「はい」


 やたらと座り心地のいいソファに、ヒカリちゃんと共に座り、対面にはアカリさんが座った。


 すると執事の人が、目の前に香りのいい紅茶を置いてくれた。


「ふふっ、そんなに緊張しなくてもいいのよ〜? さぁ、お飲みになって」

「は、はい……!」


 香り高い紅茶をすすり、気持ちを整え、持参した手土産てみやげを渡す。


「ウチの近くで評判のお菓子です。おいしかったので、よかったら」

「あらあら、わざわざありがとう〜。そう言えば、ごめんなさいね〜。パパったら、急なお仕事が海外で入って、戻って来られなくなっちゃったのよ〜」

「あ、そうだったんですか? それは残念ですね……。トバリちゃんも今日はいないんですか?」

「塾でいないの〜。あの子、ナギサ君に懐いているみたいだから、残念だったわね〜」


 なるほど……。ヒカリちゃんのお父さんはこの場にいないけど、ちゃんとこの場で気持ちを伝えなくては……!


「あの──」

「ヒカリと“結婚”するんでしょ〜?」

「え? あっ、はい」

「いいわよ〜。パパも賛成してるし、私もナギサ君みたいな可愛い子なら大賛成よ♡」


 アカリさんはチャーミングにウィンクをした。


「あ、ありがとうございます……!」


 やけにあっさりだったけど、2人の事を認めてくれたのは素直に嬉しく思う。


「ありがとうございます、お母様!」

「ふふっ、2人で幸せになるのよ、ヒカリ」

「はい!」

「それでいつ、私に孫を見せてくれるかしら〜?」


 ボクはドキリとして、言い淀む。


「そ、それは……もうちょっと先……ですかね?」

「お母様ったら、気が早いですよ〜///」





 その後、信じられないくらいの豪勢な食事を頂き、お風呂を勧められたので、入浴する。


「うわぁ、すごい大きなお風呂だなぁ……。ウチの何倍あるんだろう……。」


 黄金のライオンの口から、コポコポとお湯が湧き出ている。


 肩まで浸かって堪能たんのうしていると、ガラリと戸が開く音がした。


 使用人の人かな?と思い、そのまま、まったりしていると、お風呂に人が近づいてきた。


「……ん?」

「ふふ、お邪魔するわね〜?」

「──え!?」


 入ってきたのはなんと、タオルで身体を巻いたアカリさんだった! な、なんで!?


 





 

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