大晦日
「さて大掃除を始めましょう!」
今日は大晦日。ヒカリちゃんが腕まくりを始める。
「うん、頑張ってピカピカにしようね」
ボクも肩を回しながら、気合を入れる。
「じゃあ、私は寝室を」
「ボクはリビングを掃除するね」
2人で分担し、本格的に掃除を始める。
「きゃああああああああ!」
ヒカリちゃんが悲鳴をあげる。またゴキブリを見つけてしまったのかと、急いで寝室に向かう。
「ヒカリちゃん、大丈夫!?」
「あっ……あっ……」
「げっ!」
ヒカリちゃんが手にしていたのは、ちょっとHなグラビア写真集だった。
しまった……! 同棲を始める前に、フトシから貰ったグラビア写真集を捨てるのを忘れていた……!
でも、どうして見つかったんだ……! 日記のフェイクと、二重底にして、ボールペンの芯を下の隙間から使わなければ、見つからないようにしてたのに!
「ナギサ君……?」
「は、はい……!」
ヒカリちゃんの殺気に思わず、敬語になる。
「これは何ですか?」
「こ、これは……」
笑顔だが、目が笑っていない。怖い……!
「少し拝見させて頂きますね?」
「あっ……待ってぇぇ!」
ヒカリちゃんがグラビア写真集をパラパラとめくる。
「これは……!」
「あああ……!」
ヒカリちゃんの目が丸くなる。
「金髪巨乳の女の子ばっかり……ですね……」
「ううっ……、はい……」
ボクの性癖が丸裸にされ、かぁぁと頬が赤くなるのを感じる。
「で、でもヒカリちゃんと同棲してからは、見たことないよ……! 信じて……!」
ボクは誠心誠意、頭を下げる。すると──
「やっぱりナギサ君は金髪巨乳の女の子が大好きなんですね///」
ヒカリちゃんが頬を赤らめて、照れていた。あれ?
「ナギサくぅぅうん!」
「うわっ!」
ヒカリちゃんが、ボクにいきなり抱きついてきた。
「ナギサ君、私と再会するまでは、これで寂しさを紛らわせていたんですね……。ぐすっ、寂しくさせてごめんなさい……」
「お、怒ってない?」
「はい、全然……! これが黒髪美少女特集とかだったら、また話は変わってきましたが!」
「ははっ……」
金髪巨乳特集でよかったあああああ!
「でも、これはもう私がいるから不必要用ですよね?」
「え? ええと……」
「──ね?」
「はい……」
さようなら、金髪巨乳特集……。
♢
「「いただきます」」
大晦日。2人で仲良く年越しそばを食べる。
「んん! 美味しいよ! ヒカリちゃん! このエビ天もぷりっぷり!」
ボクは年越しそばに舌鼓を打つ。
「ふふっ、ゆっくり食べて下さいね」
年越しそばを食べ終わり、皿洗いをして、リビングのこたつで一息つく。
するとヒカリちゃんが、ボクとこたつの間に座ってきた。
「よいしょ」
「ヒカリちゃん?」
「ふふっ、こうすればもっと暖かいですよ?」
「ふふっ、そうだね」
ボクは後ろからヒカリちゃんを抱きしめる。うん、確かにとっても暖かいや。
「あっ、そういえば、そろそろ紅白始まってるね!」
ボクはリモコンでテレビをつける。すると、もう歌が始まっていた。
「米津三郎の“レモン祭り”だね」
「いい曲ですね……。次は“あどみょん”ですよ……」
こうして大晦日の夜は過ぎていったのでした。
♢
「明けまして、おめでとう! ヒカリちゃん!」
「明けましたおめでとうございます! ナギサ君!」
2人で新年を祝う。お互いのスマホの着信音が次々と鳴り響く。
「みんなからのあけおめメッセージがたくさん来てるね!」
「はい、私たちからも送りましょう!」
「あっ、フトシから写真付きでメッセージ送られてきてる! 見て見て! カニ漁船の上で写真撮ってるよ!」
「新年からご苦労様です……」
レンからはメイド服の新衣装を着ている写真付き。
「メイド喫茶ぽんぽこぽん、新衣装になったんだって!」
「わぁ、レン、かわいいですね! ナギサ君にも似合いそうです!」
「う、うん……」
美月先生からは文字だけのメッセージ。
「明けましておめでとう。また歳を取りました(泣)──だって!」
「美月先生確か、1月1日が誕生日でしたね……」
「今年はいい人に巡り逢えるといいね……」
その時、ピンポンとチャイムが鳴る。
「誰でしょう? こんな時間に?」
「ちょっと怪しいから、ボクが出るよ」
ボクはチェーンロックをかけたまま、恐る恐るドアを開ける。
「はーい? どなたですか?」
「やぁ、明けましておめでとう」
そこには見知らぬ金髪で赤い瞳の、凛とした女性がいた。
「どなたですか?」
「──ヒバリお姉様……?」
いつのまにか玄関まで、来ていたヒカリちゃんがびっくりしたように、声を発した。
「あけましておめでとう、ヒカリ」
するとヒカリちゃんははいきなり彼女に抱きついた。
「おっと、相変わらずふわふわだね。ヒカリ」
「お姉様、会いたかったですー!」
ヒカリちゃんも嬉しそうにしている。
「お姉さんもいたの!?」
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