第23話 六条飾の恋敵 その4

 やはり一番手っ取り早い方法は、あの発情娘、立花律子に別の男をあてがうことだ。


 まず何より成功例がある。以前、目黒先輩に祐太郎が惚れたとき、この方法でうまくいった。


 立花は、ただ肉欲に飢えているだけだ。相手の男がイケメンでスクールカースト上位であれば十分。あとは下半身についているナニが木の棒であったとしても一人で勝手ににゃんにゃんするだろう。


 だが、実際のところ、祐太郎よりも条件のいい男子となるとなかなか難しい。


 祐太郎はサッカー部のエースでイケメン。性格は強気でリーダータイプもある。笑いのセンスはいささか微妙なものの、持ち前のカリスマ性で、周囲に笑いを起こす。


 かっこよくて、イケメンで、おもしろい。


 モテ要素としては、コンプリートしている彼を超える物件となると、そうそうみつからない。


 

「まぁ、何事にも例外はあるけれど」



 前言を一部撤回するが、人はモテ要素だけで恋をするわけではない。人それぞれに好みがあって、それは他の者にとっては理解できなかったりする。


 つまり、立花にとっても、そういったモテ要素以外の好みがあるはずだ。その好みをみつけだすことが肝要かんよう


 では、どうすれば、立花の好みがわかるか。


 これは意外と簡単だ。立花の恋愛遍歴を調べればいい。彼女が誰と付き合い、誰に告白し、誰を好きになったのかがわかれば、自然と好みもわかるというもの。



「というわけで、調べてみたわけだけど」



 僕は、微妙な心持ちとなった。


 調べてみてわかったことは、いいニュースとわるいニュース。


 いいニュースは、立花の元カレについて。立花は一月前まで湯川ゆかわという一つ上の先輩と付き合っていた。別れた理由まではわからないが、つい最近まで、好き合っていたらしい。


 なぜこれがいいニュースなのかといえば、この湯川先輩が、立花の新たな彼氏候補となり得るからだ。


 いわゆる元サヤ。


 新しいボーイミーツガールなんかよりも、よっぽど可能性があり、実現性がある。


 聞けば、この湯川という男、なかなかのイケメンであり、陸上部のキャプテンだったのこと。キャプテン自体は既に二年にゆずったらしいが、それでもステータス的にかなり優秀な部類といえる。


 いや、もう、素朴に、なぜ別れた?


 はっきり言わせていただくが、立花と比べても、スクールカースト的に格上の男子だ。


 そもそも立花という女は決して美人ではないが、その努力のおかげでのぼりつめた女。そんな女が、スクールカーストトップの湯川先輩を仕留しとめたというだけで、校内新聞の一面に載せてあげてもいいシンデレラストーリーである。


 もったいない。


 まぁ、僕ごときにそんなことを思われるのは、立花としては心底心外だろうが、都合がいい以上、十分に利用させてもらう。


 ただ、問題が一つある。


 この湯川先輩、既に別の女子と付き合っている。さすがは、スクールカーストトップの男子。女をとっかえひっかえというやつだ。


 一言だけ言わせていただこう。


 爆発しろ。


 こほん。


 僕の心の声はいいとして、立花と湯川先輩をくっつけるためには、一度、湯川先輩と彼女を別れさせ、その後に立花とくっつけるという面倒なことをしなければならない。


 やれやれ。


 僕は、手順の多さに辟易へきえきとしながらも、おそらくもっとも確度の高い、この方法でいこうと考えていた。


 さて、では、わるいニュースだ。


 いや、このニュースが誰にとってわるいのかわからないが、少なくともいいニュースではないだろう。


 湯川先輩の新しい彼女、それは、以前、祐太郎が好意を寄せていた女子、目黒先輩だったのだ。

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