六条飾のストーカー行為はなぜ露見しないのか
第10話 僕こと笹木森恒平について
どちらかといえばインドア派だが、勉強ができるかといえばそうではない。プロパガンダ全開の歴史創作物には興味がなく、数字の運動会に参加する気力はない。特に、27個の記号で組まれた暗号解読がどうして主要科目に含まれているのか謎でしょうがないと思っている。お国は、日本の高校生を総じてバーロ―系名探偵にでもしたいのだろうか。
インドア派ということで、想像に
部活には一応所属している。写真部で、さほど活発でないゆる系部活動だ。週に一度、適当に撮った写真の論評をする。また、言い訳するみたいに、年に一回、コンテストに応募する。
この部活は気に入っている。なぜなら、カメラが支給されるし、私用に使ってもバレやしない。さらに、カメラの部品が部費でまかなえるおまけ付きだ。
とはいっても、別に写真が趣味というわけではない。何でもない日常を切り取って、SNSにあげまくるような
ただ、記録しておく装置としてカメラは有用。それだけだ。スマホにカメラが常設されている時代とはいえ、カメラを扱うには、それなりに技術がいるため、それを学ぼうという
友達は、少ないながらもいるにはいる。いつの間にかできていたわけではなく、能動的に作ったものだ。理由の一つはぼっち回避のため。一般的に、それ以外に友達を作る理由なんてないだろう。ぼっちが許容される世の中であれば、誰が好き好んで、自由をはく奪するだけの友人関係なんかを作るものか。
恋人はいない。これまでにいたこともないし、そのことを悲しんだこともない。恋愛関係も友人関係と似たようなもので、自由と時間とを引き換えにして、ほんの少しの精神的もしくは肉体的快楽が得られるというもの。
女子というものに、それだけの価値があるとは思えなかった。そもそも話は基本的に
高校生というものは、恋愛に命を
ただ、友人関係と恋愛関係には決定的な違いがある。
恋愛とは病だということだ。
不合理なことと頭で理解して、絶対にそんな愚行には手を染めないと警戒して、近寄らないようにと気を張っていても意味がない。
その瞬間は、不意に
そう、落ちるのだ。
決して登ることのできない、恋という奈落の底に引きずり込まれていく。
心なんてものが、身体のどこに詰め込まれているのかわからないが、仮にそんなものがあるのだとしたら、きっとそいつは神が人を苦しめるために与えた呪いの臓器。原罪と言って過言でない。
恋人はいない。
だが、好きな人はいる。
そんな、平均的なルックスと平均以下の運動能力と学力を持つ、ごくごく平凡な男子高校生。
それが笹木森浩平こと、僕のプロフィールである。ただ、そんな平々凡々の僕のプロフィールはどうでもいい。ここまで長々と語ってきて今更そんなことを言って申し訳ないけれど。
僕を言い表すならば、一言でいい。
僕は、六条飾を愛している。
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