第17話 僕の六条飾日誌 その6
部活が終われば日が暮れる。
そんな祐太郎の後を当然のように
帰路はそこまで心配する必要がない。というのも、当たりが暗くなるものだから六条のストーカー行為がバレにくいのだ。
される側からしたらたまったものではないが、夜とはストーカーのための時間なのである。まぁ、それでも、六条はフラッシュをたいて盗撮をしたりするから、ひやひやすることはあるのだけども。
それよりも。
それよりも、帰り道、僕はまったく別の心配をしなくてはならない。
六条飾りの身の安全だ。
何を言っているのかわからず混乱する者もいるだろう。それはそうだ。これまで僕は六条飾の異常性について語ってきた。そうすると自然に考えれば、身の安全を考えなくてはならないのはストーカーされている祐太郎の方である。
しかし、いったん冷静になって思い出してほしい。
六条飾が女子高生であるということを。
彼女は、誰から見ても疑いようのない恐怖のストーカー上級者であるとはいうものの、実のところはまだ16歳の女の子であり、高校生なのだ。しかも、とびきりの美人。そんな女の子が夜に外を歩いていたら、普通に危ない。
さらにいえば、六条はストーカーをしているために一人行動をとることが多い。不審者が襲うとすれば、いいカモといえる。彼女自身が不審者なのでは、という突っ込みがあるかもしれないが、そんな不敬な申請は受け付けていない。
そこで、学校からの帰り道、僕は六条飾の後を追って見守らなければならないのだ。
もちろん祐太郎達と一緒に帰宅することもある。ただ、部活後だと祐太郎はサッカー部の友達と一緒に帰ることが多い。そこに紛れ込むのは、僕のコミュ力では難しいし、さすがに不自然。
ゆえに、祐太郎の後を追う六条飾の後を僕が追う。この作業はさほど難しくない。ストーカーしている者は、自分の背後には無防備なものだからだ。
六条飾が祐太郎の家までついていく間、その後、彼のマンションの前で盗聴を楽しんでいる間、僕は六条飾の周囲を見守る。
さながら騎士のように。それは少し言い過ぎかもしれない。僕は特殊な訓練など受けていないから暴漢が現れても太刀打ちできないだろうし。けれども、暴漢の前に立ちはだかることくらいはできるだろう。そして、それを成し遂げる覚悟もある。
騎士としての能力はないとしても、そのくらいの気概はあると言わせてもらおう。
それにしても、六条飾は楽しそうに盗聴している。聞こえてくるのはさほどおもしろいものではないはずだ。ただの生活音。それでも彼女にとってはさぞかしエンターテインメントに富んでいるに違いない。
あの彼女の表情だけ見ていれば、誰もストーカーだとは思わない。おそらく本人にも自分がストーカーだという自覚はないのだろう。
得てして、ストーカーにはストーカーとしての自覚がないものだ。
まったく悩ましい。
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