残光ーざんこうー
◯
大江戸に広がる下町の端の端。
囲む山々の一端の更に、更に奥。
林をかき分け、木々を駆け抜け、獣道をひた走る。ひそりと佇む小さいこじんまりとした、人が住むにはあまりにも質素で簡素な家とも呼べない小屋。窓もなければ扉もない。中を覗いてみても篝火の燃え
地味といえば地味な小屋。地味ではあるがただの小屋ではもちろん無い。あるわけがない。そして書いて時のごとく在るわけでもない。それは、人々から見て存在しないという意味での"在るわけでもない"のである。否、詳しく言ってしまうと認知の隙間を
そもそも小屋が佇む此処。
それを人間側も、人類側も知っているのでだろう、愚かだが決して馬鹿ではないからだ。だから小屋の周りで人を見ることはまず無いと言って良い。それを知っていたからこそ、知っているからこそ元浮絹一族の成れの果てであり唯一の生き残りである
此処で1つ触れておきたい、触れておかねばならぬ疑問に余地を与えるとするならそれは、大地の母たるこの大自然を作り出す山の中にポツリと佇む、廃墟同然だとしても人の手によって作り出された人工物であるこの小屋を。荒れる獣と荒ぶる化身達がその気まぐれと気心でなぜ破壊しないのかという部分である。
人一人すらも入れぬ程低い天井と篝火を囲むと、他に何も入れることの出来ない程度に狭い空間しか無い耐久度も、耐久値もまるで無い。神の一声ならぬ風の一吹きで吹き飛び、崩れ落ちそうな小屋を崩せない理由は1つ。そう、たった1つ。
否、たった1領の小屋を覆い包む"大羽織"の影響だった。
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双子の羽織は、江戸を舞う 褥木 縁 @yosugatari
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