黒渦ーくろうずー


 渦切邸にある地下屋敷。歴代、頭首に座したものへ与えられてきた頭部屋の下にあり頭首である者のみに伝えられ出入りが許されるといういわば開かずの間どころか有らずの間というべき部屋がある。


 その部屋に火を灯し中心に置かれた模様もなければ色もない、真黒の羽織が真ん中にあり、その前の座卓にこれまた黒い巻物がキツく締められ綺麗に置かれている情景を目に映し相対する女の子が一人。

 そう、惨劇の忌双子の片割れ、渦切攝累きょうらである。



 ◯

 これは怪しいいやしい事この上ないねぇ。見た所これが黒渦って羽織らしいことは間違いないらしいぜ。いかにも闇を凝縮しましたって感じの羽織だ。真正面で見ていて笑けてくるぜ全くもって楽しみだなぁ。


 渦切の羽織は基本的にどれでも作り手が扱い方や影響、ほか諸々の情報を書き記した巻物を作る。要は取り扱い書って奴だぜ。それを普通は蔵で保管するのが主なんだけどな。攝が作ってあたしが着ているソハヤだってそうだ。見たことは無いがな。


 一緒に置いてあるところも異常だな。なんにせよ、臆していても致し方もないわけだぜ。一度羽織ってみよう。



 ◯

 好奇心は猫をも殺す。



 其れ程攝累の好奇心は大きくなっていた。そして渦切の闇を塗り固めたような黒い渦羽織。”黒渦”を羽織った忌双子の片割れの記憶に全てが、真実が流れ込み嗚咽と嘔吐が襲ってくる。


 胃から吹き出したそれはドスが付くほど赤黒い吐瀉としゃだった。




 「ゔっ…。ゔぉえ…。ハァハァ、ハァハァ。くそ、下劣で下卑た悪鬼どもめが…。これが発展してきた代償か。」

 

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